15話
俺の部屋にフラウの悶える声が響く。
「んんっ……んっ。はぁ、はぁ……」
うなじは紅潮し吐息混じりの息を吐く。俺が指で肌をなぞるとビクンっと反応し必死に堪えていた。
「全部白状するまでは拷問は続くと思え!」
俺は5本の指を折り曲げると再び足の裏をコチョコチョとくすぐり始めた。
フラウは身動きが取れない様に掛け布団ですまき状に拘束し、その上に俺が乗りかかり逃げれない。
くすぐりの刑の効果は絶大でフラウは身を悶えて耐えていた。
女王のプライドなのだろうか? フラウは下品な笑い方などせずに声を殺して必死で耐えている。
「んんっ……、ん、………んっ………んん!! もぅ駄目!!言いますから、お話しますから、もぅ許して下さい」
陥落したフラウは解放された後に姿勢を直し俺と向かい合うとブレスレットの事を話し出す。
話を聞くとブレスレットは王族の者が装着を義務付けられているレアアイテムだそうだ。
かなり高性能で通話機能とあらかたの位置が把握できるという。
王宮側からの連絡は基本禁止されている。なのでブレスレッドの持ち主が用がある時に連絡をいれるのが普通の使い方との事だ。理由は他人にブレスレットの秘密がバレのを防ぐ為だという。
だが今回は皇太子が辛抱しきれずに連絡を入れて来たと言っていた。
実はユズハが護符を使ってこちらの世界に飛ばされた時に一度連絡を入れていたらしい。
フラウはもう少しのタイミングで唇を奪えたのに何故連絡を入れて来るんだと兄に対して愚痴を言う。
「それで護符はもう無いのにどうやって向こうの世界に帰るんだ?」
「帰る方法は大和様が召喚された時と同じ方法を使用します。
大和様の時は向こうでこちらの要望に合った適応者を魔法で探し出し強制的に召喚しました。
ですが今回は私が指定した時間にこのブレスレットの場所へ魔法陣が現れる様に調整して頂きます」
「帰れる方法があったのなら、もっと早く教えてくれたら俺も心配しなかったのに」
「申し訳ありません。言ってしまえばこの楽しい生活が終わってしまう気がして……
私達王族は贅沢な暮しをしていると思われていますが、ずっと監視された籠の鳥でございます。この日本で過ごした時間だけは自由でした」
フラウの瞳から涙がこぼれ頬を頬を濡らす。
そんなフラウを見ていると心が締めつけられ同情してしまう。俺が知らない苦しみにフラウはずっと耐えていたのだ。
「10日後に大事な儀式があるんだろ? それなら帰らないと不味いと思う。その後の事は儀式が終わった後で考えようぜ。フラウの事やユズハの事…… 俺はお前達が知らないこっちの世界で暮らすよりも生まれ育った世界で暮らす方が幸せになれる…… と思う」
相手の気持ちを考えていない。自分勝手な意見だとは俺自身も解っている。
「異世界で生活してきた俺だから言える。どれだけ信頼出来る仲間が出来ても、どれだけ周りの人達に世話になったとしても、10年という長い年月が過ぎ去った後でも俺は日本へ帰りたいと願い続けたから……
2人にはそんな辛い想いはして欲しくないんだよ」
フラウは俺の言葉をゆっくりと頷きながら聞いている。
「大和様のお気持ちは解りましたわ。ですが今回は私一人で戻ります。そしてもう一度帰ってくる時はユズハも一緒に帰れる道具なり方法を用意しておきます。
なので大和様もその間にユズハと一度お話になって下さい。無理やり連れて帰ろうとしてもきっとユズハは納得しません」
確かにユズハの性格を考えれば、どんな行動をとるのか予想できない。フラウの提案は筋が通っており俺はその提案を了承する。
その後フラウはオリアルシル大陸へ帰る事を風呂から上がってきたユズハに伝える。ユズハも寂しそうにしていたが自分も帰るとは言わなかった。
翌日、フラウの帰還する日が3日後に決まる。その間にフラウは学校や親に一時帰国する事を伝えていく。
父さんや母さん、愛も寂しいと言っていたが、また帰ってくると伝えると喜んでいた。どうやら愛はフラウに憧れていたみたいで、泣きだしたのには俺も目を疑う。
俺達は普段と変わらない日常を過ごす。今回は一時帰国でフラウはもう一度は帰ってくる。なので次に帰って来た時にちゃんと話をすればいいと俺は考えていた。
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俺達は家族総出で駅まで見送ると、フラウは旅行バックをもって電車に乗り込んだ。
電車が出発して家族は家に戻ったが俺とユズハは買い物があると言ってその場で別れる。そして待つ事30分後にフラウが電車に乗って戻ってきた。
これは事前に話していた事で今から三人で人目の少ない秘密基地まで移動し、そこで転移を行う事を決めていた。時間はまだ昼の3時を過ぎた位で、途中お土産を買ってから山へと向かう。
目的地に到着するとフラウがブレスレッドを通じて何か喋っていた。すると地面から魔法陣が浮かび上がりフラウを包み込む。
「それでは一度帰りますね。大和様お世話になりました」
「あぁ、でもすぐに帰ってくるんだろ?」
「えぇ、2週間後には戻りたいと思っています。
ユズハも私が居ない間に大和様に迷惑を掛けては行けませんよ。もし私の耳に入れば、首に縄を付けてでも連れて帰りますからね」
フラウがユズハにそう言うと、ユズハは俺の腕に抱きつき。「解ってるわよ」と言い返していた。
「それじゃ、儀式がんばれよ」
「えぇ、大和様もお体にお気を付けて」
「フラウ、大和は私が守るから安心して」
「いや、ここ日本だから何もおきねーよ!」
そしてフラウは円柱状の光に包まれ姿を消す。俺達は光が完全に消えるまで見続けていた。
「行ったな…… お前は帰らなくていいのか?」
俺はユズハにそう言ってみる。俺の腕に抱きついていたユズハは腕に力を更に強めた。それは離れないと言っているみたいだ。
フラウは俺の気持ちを解ってくれたと思う。次はユズハに話してみるつもりだが、解ってくれるといいのだが……




