13話
夕食は山の幸がメインで山菜やイノシシの肉など普段余り食する事がない料理が多くでてきた。
そのどれもが美味しくて、舌鼓を打ちつつ全てを平らげる。
「ふぅ~ もう食べれない。お腹がパンパンだ」
食べすぎた事を少々後悔もしながら畳の上に転がった。すると長い時間電車に揺られていたから疲れていたのか? 俺は深い眠りに落ちていく。
次に目を覚ました時は深夜1時を過ぎていた。3時間以上眠っていたようで、今は目が冷めてしまった。周りを見ると皆布団に入り眠っている。このまま此処にいて起こしてしまうのも悪いので、俺はもう一度温泉につかろうと考えて部屋を出て行く。
浴室に着いたがどうやら今日はもうしまっており、残念だが明日の朝にならないと入れない事がわかった。
「どうしよう。温泉には入れないのか…… 何処かに入れる所は…… あっそう言えばこの宿の手前に公衆露天風呂があったよな? 確か24時間って書いてあった気がするけど。一度行ってみるか」
俺は浴衣のまま宿を抜け出し、5分程度歩いた所に作られている露天風呂の建物にはいる。
時間も遅い事から今は誰も入っていないみたいだ。更衣室で浴衣を脱ぎドアを開く。外には小さな露天風呂がつくられていた。
シャワーも2つだけの小さな浴室で屋根は無く、温泉に浸かり首を空に向けると満天の夜空が見えていた。それは凄く綺麗で手を伸ばせば掴めそうな位だ。
「ふぅ~ ここへ来て正解だったな」
一人でノンビリと温泉に浸かる。深夜の為に今の気温は昼間よりも低い。上半身を湯船から出していればのぼせる事もなく。ゆっくりと入っていられた。
その時に誰かが脱衣室に入る気配を感じた。俺の鼓動は急激に高鳴る。何故ならさっき入って知ったのだが、この公衆露天風呂は混浴だったのだ。男性ならばいいが女性が入っていたらどうしたら良いのか?
取り敢えず俺は浴槽の端に移動し、入り口に背中を向ける。これなら女性だとしても出会い頭に裸をみる事もないだろう。
ガラガラと引き戸が開く音が聴こえる。そして足跡が聴こえ、かけ湯を身体に掛けている。
音だけ聴こえるって言うのも何だが変な事を想像して逆効果かもしれない。これならいっその事一度だけ振り返り、男性か女性かを確認した方がいいかもしれない。
だがタイミングを逃し、今振り返る事は出来ない。そのまま入ってきた人はチャプンと音を立てて湯船に浸かる。だがよく聴いてみると、2人組のようだ。声は出していないが気配は感じていた。
(振り返るぞ。もう限界だ。湯船に浸かったからもう大丈夫だろう。このままじゃモヤモヤしすぎてのぼせてしまう)
俺はそう決意し、入ってきた人の方を振り向こうとした。だがその時に背中に柔らかい感触を感じる。
この感触は絶対に男じゃない…… と言うことは女性になる。だがその女性が何故俺の背中に接触してくるんだ?
意味が解らずに混乱していると、クスクスと笑い声が聴こえた。その声は聞き覚えがあう声だ。
まさかと思い。思い切って振り返るとそこにはユズハとフラウの姿があった。
「お前達だったのか…… っておい!! 頼む前を隠してくれ」
俺は片手で顔を抑えてそう告げる。彼女たちはタオルとかで身体を隠していなかった。薄暗い電気の浴室でも2人の裸体がハッキリと見えていた。
「何をおっしゃいますか。私たちは大和様の妻になるのですよ。隠す必要などございません」
「私も気にしないよ」
2人はそう言っているが、年齢的に元気すぎる年齢な為に俺の一部分は瞬時に反応していた。タオルで気付かれない様に隠しているが、このままでは動けない。
これなら卓球のチラリズムの方がマシだ。
「さぁ、大和様お背中をお流ししますので一度出てくれませんか?」
(そんな事言われても、出れねぇよ)
さて困ったぞ。裸体が目の前にある間は俺は出ることが出来ない。なので何とかして2人を先に上がらせる必要がある。
だけど2人は俺の両腕を互いに持ち風呂から上がらそうと引っ張ってきた。もう隠す気はゼロで2人の裸体が俺の目に焼き付く。
「こうなったら。 衝撃!!」
俺は湯船の中で掛け無しの魔力で全力の衝撃魔法を放つ。威力は弱いので怪我はしないが、魔法の影響で湯船が周囲に飛び散る。流石の2人も顔を手で隠して湯船から身を守る。
俺はその瞬間に飛び出して、身体も拭かず下着を履き浴衣を急いで着ると公衆露天風呂から飛び出した。
(何でこう積極的なんだ。据え膳食わぬは男の恥って言うけど、この2人に手を出せばダダでは済まない。最低でも異世界に住む位の覚悟は必要だろうな…… 本当に生殺しだよ)
半ば泣きながら宿を目指した。身体が濡れているので移動中に身体が冷えてくる。これは明日は風邪を引いているかもしれない。
自信のヘタレ具合に嘆きつつ。俺は勿体無い事をしたかな? と少々迷う優柔不断ぶりを発揮していた。
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翌日の10時にチェックアウトを済ませて俺達は宿をでる。この後は温泉街で買い物を済ませて家路に付く予定だ。
今朝、起きた時には二人共起きていて、普段と変わらぬ様子だった。俺が気にしすぎたのかも知れないと考えて居た時にフラウが近づき耳元でそっと囁く。
「私達は本気でお慕い申し上げていますので、何時でもお背中を流しいたしますわ」
本当にドキリとする。それが彼女達の本心なのだろうが、俺自身の覚悟がまだまだ足りない。




