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第八十九話 リベンジ・オブ・凶龍

 天井の瓦礫が地面に落ち割れる音と共に、赤く光る大きな生物が着地する重たい音が混じる。

 瓦礫で見えないが、翼を持っており、龍のような体格をしている。

 とてもいい予感なんてしない。


 「グルル......」


 その龍が発したと思われる唸り声もあがる。


 「き、貴様はまさか......!?」


 カルマンは龍を見て驚愕する。

 美しい白い鱗を身に纏い、その境目からは燃えたぎるような赤い光を発している。

 ......凶龍・マルヴァードである。


 「グウウ......」


 マルヴァードは真っ赤な目でカルマンを睨む。

 彼の目は正に仇を見るような目だ。


 「きょ、凶龍じゃと......フリント達は一体何をやっているのじゃ!」


 浩もまさかの乱入にエドナ達に対する愚痴を漏らす。


 「何故ここにいるのだ、マルヴァード!」

 「ガアアアアアアアアアアア!!!」


 カルマンが叫ぶと、それに対してマルヴァードが大きく咆哮をあげる。

 そして、口を開けると、問答無用でビームを吐き出してくる。

 

 「ぬっ!」


 カルマンは殺意が込められている攻撃をすぐにかわす。

 はずれたビームは王座に直撃し、跡形もなく消し飛ぶ。

 

 「ッ......!」


 反応が少し遅れて、カルマンの左腕が消滅した。

 だがそれを痛がる暇はない、今度は彼の尾がしなりながら飛んでくる。

 彼はしゃがみこむと、白い鞭が後ろの石像にあたり、石像は四散する。

 凶龍はもはや手が付けられない位凶暴化している。


 「......」


 一方の浩たちはマヴルァードの流れ弾を避けながらその戦闘を眺める。


 「......差し詰め、自分を幽閉していた主に復讐をしているってところじゃろう。じゃが、あの龍では倒せないじゃろうな」


 だが彼はカルマンに軍配が上がると見切る。

 確かにマルヴァードも十分強いのだが、最初のビーム以外はすべて避けられている上に、さっきとれた左腕もいつの間にか回復を遂げている。


 「......ふん、使えない奴め」


 カルマンはそういうと、回避行動だけをとっていたところから攻撃に転じ始める。

 彼がそこらじゅうにエネルギー弾をばらまいていくと、弾は時間差でマルヴァードに直進していく。


 「ガアア......!!」


 光輝く雨は彼の鱗を痛め付ける。

 マルヴァードはそのビームを受けて悲鳴を上げながらも、こちらもビームで抵抗する。

 だが、カルマンの雨粒に阻まれ、カルマンを捉えることが出来ない。


 「止めだ」


 カルマンはエネルギー弾に紛れて超スピードで接近していくと、近接攻撃で彼の背中部分を叩く。

 エドナらでも正面から叩き割ることのできなかった鱗だが、カルマンの手にかかれば一気にひびが入り、いとも簡単に破壊されてしまった。


 「グ......!?」


 マルヴァードはよろめきながらも、食いしばってなんとか踏ん張る。

 その龍に対してカルマンは非常だ、彼は容赦なく彼の身体破壊行動を続ける。

 それもじっくりと、時間をかけて......。


 「フフフ......これが裏切り者への罰だ」


 カルマンの顔はいつの間にか笑っていた。


 「なんという非情さ......裏切ったとはいえ、自分の部下に対してあんなにも快楽を味わいながらなぶり殺しているのエネミーは初めてじゃ......」


 浩にも冷や汗を垂らしながらそう言わしめるほどの冷酷な仕打ちをしているカルマンは、とうとうマルヴァードをノックアウトに陥れる。

 鱗の大半が白から赤へと塗り替えられたマルヴァードは力尽き、ゆっくりと横倒れになる。


 「......」


 その様子をと見つめていたサナはぐったりとしたマルヴァードのもとへ近づいていく。

 彼女は口元まで近寄るが、息遣いが聞こえてこない。

 首元に手をやり、脈を測る。


 「裏切り者の最期だ。同情する必要はない」


 カルマンはそういうも、サナはそれを聞いていない様子である。

 彼女の目は、まさしく同情の目であった。


 「......あなた、何も感じなかったの?」


 サナは再びカルマンに目を向ける。

 すぐに睨むような目に変貌する。


 「何をだ」

 「裏切ったとはいえ、自分の部下を楽しむように虐殺して、それに罪悪感は感じないのかしら?」

 「なぜ感じなければならないのだ」


 カルマンは平然と答える。


 「手下なんて所詮は『駒』に過ぎないのだ。あの盲目の女や、キリスト信者の天人も、便利だから優遇してやっているだけだ。使えなければ切り捨てる、それが俺のやり方だ」

 「だってよ、神父君」


 カルマンが言い切った後、ハスキー声が開き切ったままの扉から侵入してきた。

 その扉にはぐったりとした泰昌を担ぎながら、武臣を従えているアイラがそこにはいた。

 背中に複数のナイフを突きつけられている武臣は、絶望に堕ちた顔をしている。


 「ボ、ボス、嘘だ......私をそんな風に思っていたなど......」


 それを見たボス、カルマンは面倒くさそうに舌打ちをする。

 

 「ああ、神よ、私は間違った選択をしてしまったようだ......私はどうすればよいのだ......」


 武臣はショックで泣き崩れる。

 あれほど信頼していたカルマンに、駒としてでしか扱われていないことを知ったのだから。


 「やっぱりな。貴様ならそういうと思った。組織の首領はそういうものさ、どうせ月詠寿之もそうさ」

 「はぁ、そのひねくれた考え方、どうにかならないものなのかしら」


 サナは呆れ口でアイラに言う。


 「その口調は相当怒っていらっしゃるな。あまり刺激しない方が身のためだな」


 彼女は半分からかいで言う。


 「......まあいいわ、このエネミーが酷いっていうことは分かったわ」


 サナはそういうと、カルマンの方を向く。


 「随分と酷い言いようだな」

 「本当のことだもの」


 彼女は周囲に闇手を発生させる。


 「......さあ、決着を付けましょう」

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