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第八十六話 No.1

 一人の女性の声が門から王室の中を通る。


 「何だ......?」


 カルマンは彼女の声に反応しチャージを中止、女の方を見る。

 る女は、緑系統の色をベースにした着物の裾で両腕を隠すようにしている。

 

 「誰だ、貴様は......」


 カルマンは威圧的な声色で言うが、狐耳の女は顔を一つも変えず、凛として立っている。

 黄色く澄んだ目は恐れという概念すら知らないよう。

 浩は彼女のことを見もせずに安堵する。


 「やっと来よったか......アストル......」


 今ここに、『No.1』サナ・アストルが降臨した。

 それも、明るい方ではない、冷酷なサナが、である。


 「......お疲れ様」


 サナは静かに浩の健闘を称え、下駄の音を出しながらカルマンに向かって歩いてくる。


 「お主はなんでいつもこうなんじゃ、それと足羽と呼べといっておるじゃろう......」


 浩はサナに対する愚痴を漏らすが、呟き程度の言葉しか出ない。


 「サナぁ......」


 スリニアがサナに声をかける。

 斬られた目はとっくに治っていた。


 「あ......」


 それを見たサナは方向転換し、スリニアのもとへと向かっていく。

 彼女はスリニアのもとへと寄ると。を拘束しているその槍を握る。

 彼女は特に力は入れていないはずだが、槍は抵抗することなく抜けていく。


 「うぉ......」


 サナが四本の槍を抜き終えると、スリニアは一瞬身体のバランスを崩すが、浮遊して立て直す。

 早速創傷部からは霧が発生する。


 「なるほど、奴が貴様の言っていた『もう一人』という訳だな」


 カルマンは浩の言葉を理解し、サナに言い放つ。


 「次は貴様が相手になるのか」

 「......うん、そうね」


 サナは振り向くと、彼に冷たいまなざしを向ける。

 彼のフードからなんとか見える口元が一瞬開きかかったが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。


 「......ふっ、いい目をしているな」

 「......」


 彼女は無言で再びカルマンに歩み寄る。


 「スリニアと浩は休んでてね」


 浩は息切れにより敗北も時間の問題、不死身のスリニアも対抗策によって再び行動不能にされるだろう。

 今カルマンに対抗できるのは、サナ一人である。

 浩はまたも下の名前で言われたことに不服な顔を浮かべるが、もう声を出すことはなく諦める。


 サナはカルマンとある程度距離を置いて歩みを止める。

 王室の扉から吹き込む風がサナの髪とカルマンのマントを揺らす。


 「......我が名はカルマンだ。サナ・アストルと言ったな、貴様もあいつらと一緒に葬ってやろうぞ」

 

 カルマンはマントで隠されていない右腕を前にだし、拳を一気に作る。


 「......じゃあ、まず顔を見せてくれないかしら?」


 カルマンに対する第一声が飛び出す。

 彼は「またか......」と呟きながらも、浩に行ったのと同じ言葉を口に出す。


 「なら力ずくで剥がして――」


 カルマンが言い切る前に、風を切るような音が聞こえる。

 それと同時に、彼の体から何かが一瞬で通過した。


 「......?」


 カルマンは唖然としていた。

 彼の前には、サナが手を伸ばしている。

 直後、マントには4本の切断した跡が現れ、そこから彼の血が飛び出す。


 「ぬ......!?」


 マントは5枚に分かれ、彼の体から落ちていく。

 今まで隠していたカルマンの顔は遂に露出される。

 腕と同様にして真っ赤な顔は、猛禽類のような鋭い目をし、髪はすべて後ろに倒してあるオールバックだ。

 彼はその四白眼を見開かせていた。


 「な、なにを......」

 「を発生させた。指からビームの類を出しつつ、高速で指を移動させることによって、衝撃波のようなビームを形成させたのよ」


 サナは胴体に対して垂直にしていた腕を下す。

 カルマンは5分割にされ、それぞれ離れようとしている身体を引き戻し、すぐにつなぎ合わせるようにして修復された。


 「......久々に、強そうな相手に出会えたかもしれないわ」


 それを見たサナは、無表情を崩して微笑した。

 カルマンも、たじろいでいたが、徐々に笑いを浮かべていく。


 「フ、フフフ......私が敵に顔を見せたのは長らくしてなかったが、まさかこうも一瞬で披露することになろうとは......面白い!」


 カルマンはそういうと、腰を落として戦闘の構えを見せる。


 「これは、恐ろしいことが起きそうじゃな......」


 浩は嫌な予感を張り巡らせていると、カルマンは猛スピードでサナに迫ってきた。

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