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第八十五話 念力じいさん

 浩の周りには複数のエネルギー弾が浮遊している。

 彼はカルマンに向けて両手を押し出すような動作をすると、弾はそのカルマンの方向に向かって飛んでいく。

 カルマンはそれを飛び避ける。

 この時彼は初めてその場から動いたことになる。

 

 「念力、このような力を持っているとは......!」


 カルマンに休息はない、避け終わった矢先に今度はチェーンが飛んでくる。

 彼はそれも避け、一見したら回避だけで精一杯にも見える。

 しかし、マントを体で覆っている辺り、まだ余裕はあるようだ。

 様子見だろうか。


 「どうじゃ、核戦争後に目覚めたこの力、存分に味わってもらうぞ!」


 浩の弾をカルマンが避けると、弾は悪魔のような石像に当たり、その像の胴体が切り離される。

 そのまま地面に落下して粉砕するかと思いきや、浩が掌で物を受けるような仕草をすると、石像は静止する。

 そして彼が手を引くと、それに合わせて石像が手前に向かって突っ込んでくる。


 「ぬおっ......!?」


 背を向けていたカルマンは気付かなかったため、石像を背中でモロに喰らう。

 不意を突かれたカルマンは、遂に両手で持っていたマントを離し、胴体の前面をさらけ出す。

 見るからに鋼鉄のような固さをしているような真っ赤な腹筋が見え、今までマントを持っていた手はこれまた深紅に染まっている。

 顔こそまだ見えないが、その容姿は翼の無い悪魔である。


 「ワシが直接能力を掛けてマントを剥がしても良かったのじゃが、それじゃ何故か附に落ちぬからの......」

 

 浩は尚も神妙な顔を崩さない。

 浩の髭は荒々しく浮き上がっている。


 「......ほう、ここまでやるとは、我は少々見くびっていた様だな」


 カルマンは両腕を垂れ下げる。


 「もう一人来るといっていたが、もうそいつの出る幕は無いようじゃの」


 浩は撃破予告と聞いてとれる発言をし、またエネルギー弾を発生。

 右手を勢い良く前に出し、弾を発射する。

 が、着弾直前にカルマンがその場から消えたと思うと、浩の目の前にマントをはためかせているカルマンの姿があった。


 「ん......!?」


 浩はその一瞬の行動に目を見開く。

 カルマンはその顔面に向かって赤い拳を打ち付けようとする。

 しかし浩もこのまま墓に入るわけにはいかない、彼は念力を使って透明な膜のようなものを作り、カルマンのパンチを防ぐ。

 パンチの威力はかなり高く、膜の形を沿うようにしてヒビが入る。


 「我も少し本気を出してやろうぞ」

 「笑止!!」


 浩が右足を地面に踏み込むと、足に込められた念力によって地面が割れ、辺りに大きな風圧が発生する。

 カルマンは跳びながらのパンチ立ったので、少しバランスを崩しながら風圧に押されていく。

 破片が浮き上がるようにして飛び、その破片はバランスを崩しているカルマンに飛んでいく。


 「そんな小細工が効くか」


 カルマンは馬鹿にするように言うと、空中で仰向けの体勢になりながら両手でビームを放射、破片を消し飛ばしていく。

 浩にも当たるが、やはり念力バリアに妨げられた。


 「ワシのバリアを舐めるでないぞ!」


 彼は額に脈を浮かばせながらも、チェーン、エネルギー弾、そして念力と、あらゆる手段を用いてカルマンを攻撃する。

 攻防を繰り広げている最中、浩のチェーンがカルマンに飛んでくる。

 チェーンはカルマンの隙を突き、彼の右腕をマント越しに切り落とす。


 「......!!」


 腕はマントに隠れながら落下し、断面部からは血が垂れる。

 

 「遂に与えれたか......一苦労したわい」


 浩は息切れを起こしており、額も汗で濡れている。

 いくら彼でも老人だ、これ以上長期戦になるのはさすがに不味い。

 カルマンの防戦一方だったとは言え、浩の圧倒的有利と言うわけでは無かったのだ。

 だが、ここで大きなダメージを与えたならあとは止めを刺すだけ。

 

 「我に傷を負わせたのは評価してやろう......が、しかし」


 だが、カルマンは特に重大には思っていないい振りをしている。

 これを不審に思ったのか、眉をひそめる浩。


 「......!」


 彼は何かを察知したように急いでエネルギー弾を大量にカルマンに飛ばした。

 ほぼ同時に着弾し、轟音を出して爆発、煙をあげる。


 「はぁ......はぁ」


 彼はその煙を眺めているが、何となく左を向くと、カルマンが立っているのが見える。


 「......この程度のダメージでは我を倒せんぞ」


 カルマンは切断された右腕の根元を前にだし、浩に見せると、断面が変形し始めた。


 「ぬ......!?」


 それを見詰める浩は唖然とする。

 断面から、瞬時に腕が再生されていき、最終的には、切断される前と全く同じの鋭い指先を備えた手が生え、あっという間に元通りである。


 「なんということじゃ......」


 浩は顔をより一層険しくする。

 カルマンは再生されたばかりの右手を握って感触を確かめると、その右手から唐突にビームを放った。

 浩は急いで膜を張り、ビームを防ぐ。

 ビームが打ち終わり、遮られていたようやく視界が見えたかと思えば、目の前には赤い拳が構えられていた。

 拳は膜を思いっきり殴りつけると、さっきのように地面に亀裂が入るが、さっきよりも大きい。


 「小癪......!!」


 彼の額の脈はどんどん太くなっていく。

 そしてゴリ押しで何度も殴っているうちに、遂に念力のバリアを突き破ってしまった。

 パンチは浩の腹部にモロにあたる。


 「......!!!」


 彼は十メートル以上飛ばされ、何とか持ちこたえて足で着地する。

 だが彼の口からは血が垂れており、明らかにダメージが大きい。


 「はぁ......まだじゃ、まだこれからじゃ......!」


 浩は息を荒くしながら言うが、見るからに限界のようだ。


 「ふん、抵抗しなければ楽に葬ってやるものを......」


 カルマンは悪魔のような掌にビームをチャージする。

 その時であった、彼女が現れたのは。


 「浩......」

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