第八十二話 乱入エネミー
しかし、彼の真正面である、バリアがそれを防ぐ。
「マタオ前ラカ......!?」
リフレクトが煩わしく言うのと同時に、彼の後ろでモーター音が聞こえる。
「!?」
「左腕がまだあるわよっ!!」
彼女は肘にあたる部分にエネルギーを放出させると、その勢いで左腕をリフレクトの顔面に吹っ飛ばした。
彼の土偶顔は粉々に四散し、空中を飛び散るが、直後に破片はピタッと止まり、彼の首元に引き寄せられるように戻っていき、あっという間に元通りになってしまった。
「我ハ死ナヌ!!」
そういうと、光の剣を出して二人に対して振り回す。
彼は二人を相手に死角を必死に隠そうと抵抗し、剣によってアマツの体の幾つかに切り傷がつけられる。
だがしかし、とうとうアマツが隙を見つける。
「ここだぁ!!」
そしてアマツは右腕に力を込めると、リフレクトにファースト・ファイアを思いっきり打ち出した。
アリアスはそれをうまく避け、リフレクトのみに命中した。
「ブガガガアッガアア......!!」
彼が火に焼かれて苦しがっているところを、アマツは追い討ちをかけるように、殴り、蹴り、また殴った。
そのたびに陶器が砕ける音が響く。
リフレクトの身体を組織していた破片は炎によって茶色く焼け、バラバラになっていた。
(これだけやっておけば大丈夫だろう......)
そうやって緊張を解いたアマツは、恐る恐るサラのほうを向く。
その彼女は、酷く冷たい目線で彼を見る。
(なんでだ、俺はサラさんを助けようとしてたのに......)
余計なお世話だったのだろうか。
しかし、あのままではサラの身は危険な状況に陥っていたかもしれない。
「......あはは、すまないね」
彼女は急いで笑顔を作る。
作っているのが明らかであった。
「アマツ......!!」
アリアスが焦っているような口調でアマツを呼ぶ。
「なんだ?」
「リフレクトが......!!」
まさかと思い、リフレクトのほうを向くと、彼の体は接合されつつあった。
「アト一歩ダッタナ......!」
「おい、まだ死なねえのかよ......」
まだ壊し足りなかったのか。
そうして一度解けた緊張をもう一度張り巡らせようとしたとたん、壁近くの壁が吹き飛んで行った。
リフレクトの後ろにある壁だ。
そこから、何かが侵入してきた。
「またエネミーか、なんて不運だ......!」
この状況なのにさらに敵が増えては大変である。
しかもその乱入者とは、白い鱗の境目に、煮えたぎった血液が流れているような赤い光が飛び出してる。龍であった。
「な、なんだありゃ......まさか......」
白い龍とは、あの龍しか想像できなかった。
「凶龍マルヴァード......!?」
マルヴァードは呻り声をあげている。
なぜ凶龍がここにいるのか分からなかったが、もう頭が真っ白になるくらい絶望的である。
「ン......マルヴァードカ!?」
蒼かった胴体が茶色く焼けたリフレクトも凶龍の存在に気づく。
「オオヨカッタ、お前も一緒に戦ッテクレルノカ!?」
そういった途端、マルヴァードは此方に向かって突進してきた。
(やばい......!)
こちらに襲ってくるのか、と思っていたが、その想像は全く間違っていた。
マルヴァードは大きく口を開けると、油断してバリアを展開していなかったリフレクトの体を噛みついてきた。
「ヌオ......マルヴァード、何ヲオオオオオ......!!」
リフレクトは無機質な悲鳴をあげる。
しかし、マルヴァードには届かなかったようで、そのまま牙によって粉々に噛み砕いていった。
「え......」
余りにも予想外の出来事にアマツは唖然としていた。
そしてマルヴァードは大きく咆哮をあげると、さっき破壊した壁の穴から潜り込み、何事もなかったかのように去っていった。
暫く地響きが起こる。
「......」
そして、静寂に包まれる。
アマツは開いた口が塞がらない。
どうしてマルヴァードがああいう行動をとったのかは分からないが、ただ一つ、自分たちが助かったのだけは、理解出来た。
「ア、アマツ......」
アリアスが声をかける。
アマツはそれでようやく口が動く。
「......これで、終わったのか......?」
「ええ、取りあえず、ね......」
アリアスはアマツの言葉を付け加えるように言うと、次に彼を左腕で指差す。
「?」
「傷が......」
傷がどうかしたのかと思い、腕の切り傷を見ると......。
「あれ、治っている......?」
服は裂けているものの、そこに創傷は無かった。
血もついていない。
気になって、あの背中の傷も見てみるが、それも治っている。
「何だ、これ......」
アマツは気味悪く思う。
こんな力、あったのだろうか......。
「さあ、行こうか」
サラ口を開く。
少し怖いが、アマツはサラに訊く。
「何をしにですか?」
「残党処理だ。残りの雑魚を倒す。さっきの龍はエドナ達にに任せればいい」
彼女は真顔でそういうと、さっさと歩き始める。
(......この回復が気になるところだけど、それは後回しだ。今は任務に集中しよう)
そう決心したアマツは、アリアスに言う。
「......まあいいや、アリアス、行くぞ」
「え、ええ......」
その能力の真相を知りたかったのか、アリアスは少し困惑したような感じの返事をする。
そして、彼らはサラを追っていった。