第八十話 1に見、2に探、3に突!
サラは仁王立ちでアマツの前に立つ。
その不敵な笑みは、恐れの一つも知らないようだ。
『持病』すら、である。
(また、起こすのか、あの人は......?)
アマツはその持病......発作の事を心配する。
「......マダ、我ニ抗ウノカ」
「ああ、そうだね」
サラはそう言うと、体の姿勢を低く保つ。
「......始めるか」
サラはそう呟くと、その姿勢のままリフレクトに向かって高速で迫る。
10メートル前後あった距離はあっという間に縮まり、彼女はリフレクトの目の前で一瞬止まる。
その反動で、サラの腹に縛られてあるジャージがフワッと浮く。
「速イ......!」
「刹那蹴り」
サラは移動の勢いを利用し、横へ薙ぎ払うように蹴りを喰らわす。
透明だったバリアは、サラの脚が当たった途端に姿を現し、そのキックをブロックする。
金属板をへこませたかのような音が響き、相当重い一撃だと言うことが伝わってくる。
流石は元ナンバーズと言ったところである。
だが、それでもバリアが破られることは無い。
「ん......!」
「無駄ダ」
リフレクトは土偶のような顔をしたまま一切顔は歪めていないが、アマツには、心の奥底では勝ち誇ってるように感じた。
「あれでも破れないなんて、どうなっているの、あのバリア......」
それを見ているアリアスは、その様子を唖然と見つめている。
サラは蹴りと殴りのラッシュを続けていくが、バリアはいつも通り網目を光らせているだけで、一向に破壊される気配がない。
「ドレダケ攻撃シヨウトモ、バリアハ破ラレナイ」
様子見のためか攻撃していなかったリフレクトだったが、ここでやっとサラにビームを放つ。
「おっと」
彼女はそのビームを横に回避すると、そのビームはアマツ達の方へと向かっていく。
「うわっ!?」
アマツとアリアスは咄嗟に頭を下げ、ギリギリビームを回避する。
アマツのせず時に寒気が走る。
(あ、あぶねえ......)
胸をなでおろしているうちに、サラは壁を使い三角跳びをし、リフレクトの後ろ側へと回っていた。
彼女はその背後へと蹴りを喰らわすせようとする。
「ン!?」
リフレクトは少し取り乱すようにしてすぐにサラの正面へと回り、防御をする。
サラヲ振り払うようにしてビームを放つと、彼女は再び三角跳びして、リフレクトの背後、元の位置へ回り、拳を飛ばす。
「チョコザイナッ!」
リフレクトは急いで回転し、防御をすると、サラが殴った隙を突いて、彼女めがけてビームを放射する。
彼女は避ける様子を見せぬまま、ビームを受けると、そのビームは爆裂した。
「あ......!」
アマツとアリアスはほぼ同時に声を漏らす。
あのビームの威力ははかなり力を入れているように見えた。
しかし直後、彼女はその煙幕から抜け出してきた。
両腕でガードしたのか、腕のテーピングは部分的に剥がれていたが、そのほかは特に傷は見当たらなかった。
「......成る程ね」
サラはそう言うが、強がりに聞こえる。
「サラさんでも無理なのか......強すぎる......」
アマツはそう悲観をする。
「我ノ壁ハ完璧、誰モ我ニ傷ハ入レラレナイ!」
リフレクトは両手で天井を仰ぐ。
「そうかな......?」
サラは顎をさするしぐさを見せると、
「......じゃあ聞くけど、なんで私が君の背後に回ったとき、あんな慌ててたのかな?」
まるで弱点が既に判明しているかのような言いぶりを見せる。
(え、まさか......)
とは思っていたが、どうやらそのようであった。
「! ......ソレガドウシタ、オ前ハ何ガイイタイ?」
「こう言うことが......」
彼女はそう言いながら、空中へ跳ぶと、バリアの上部へと手をつけ、逆立つ。
「――言いたいんだ!!」
そして半ひねりしながら体を落とすと、バリアの端を持ち、その落下の勢いでリフレクトの背中に膝蹴りを喰らわせてやった。
「ブゴゲガ......!!!」
リフレクトの背中にはヒビが入り、そこからは血と思われるものが溢れ出す。
(え......!?)
何故リフレクトがダメージを受けたのか。
諦めかけていたアマツは目を疑った。
「君のバリアは前面に半球状しか出せない。だから背中はがら空きだし、君は背後を取られたとき、慌ててこっちを向いたと......完璧なんて、嘘ばっかり」
サラはリフレクトの背中を台にして蹴り飛び、地面に着地する。
アマツに言わせれば、すごいの一言である。
バリアの盲点を僅か2分ほどで見抜くとは......。
サラがしゃがんでいたところから立ち上がる。
「まずは取り敢えず攻撃して様子見、効かないようなら次に弱点を探る、そしてその弱点を突く......」
彼女はリフレクトに対してニヤリと笑う。
「1に見、2に探、3に突、これが私の戦闘スタイルと言うものだ!」