第七十話 突入
アマツらは廃城の大きな扉の前に来ている。
「すげえ、なんて大きさだ......」
上級戦士の一人であるアマツはその城に見入る。
ペソ殲滅戦あとに聞いたことはあったが、この広大かつ巨大な林の中に、こんな巨大な城があるとは、この目で見るまでは半信半疑であった。
しかし、それはアマツの想像以上のものであった。
そしてその扉の前には、ディフェンサーズの戦士達がいる。
「お主ら、分かっておるな?」
No.2の浩は戦士全員の前に立ち、この作戦の概要を確認する。
「安倍泰昌とアイラ・ボクスベルクは八瀬武臣討伐、ミカ・レヴェリッジはデュル・クレバー討伐、ベンガル・マクレン、甲斐佐助、黒幕、エドナ・フリントは『凶龍』討伐、スリニア・エアハートとサナ・アストル、そしてワシはクローバーの親玉を討伐する。上級戦士らの班は一般の手下の掃討が主な任務。別の敵が現れたらそやつらに任せる」
浩は刀が仕込まれている杖をついている。
(この老人がNo.2......)
アマツはその老人のオーラを感じる。
見た目は平凡な老人だが、オーラは違っていた。
気迫が強いのだ。
......と、ここでアマツは気づく。
「あの、浩さん......」
「下でワシを呼ぶな」
「あ......足羽さん......」
彼は冷や汗をかきながら浩に質問する。
「サナさんは、どこですか?」
「アストルは遅刻じゃ」
浩は平然と言う。
「え!?」
アマツは耳を疑った。
上級戦士達の一部でもざわつく。
「あやつは遅刻癖がある。驚くことではない」
「こんな大事なときに遅刻って相当やばいっすよね!? しかもこれ日常茶飯事なんすか!?」
アマツは思わず突っ込んでしまう。
あの人のフリーダムさはもう異常と言っても過言ではないとすら思った。
「こんな真夜中じゃしの。それにワシらも会長も慣れたわ」
浩はそう言ってアマツを退ける。
「まあアストルもじきに来るじゃろ。......それじゃ、いくぞ」
そういうと彼は、杖を床に置くと、その扉をゆっくりと開けた。
その扉から見えるのは、壁に等間隔でともされている蝋燭の火であった。
廊下は少し続いてエントランスのようなものがある。
彼らはその城に入り、アマツもその中に入る。
「おお......」
圧巻であった。
彼がこのような光景を見るのは、せいぜい漫画やアニメの世界だけであったが、現実でこれを見てみると、迫力というものが格段に違っていた。
見とれていると、肩に固い物が当たった。
「ほらアマツ、ぼっとしないで」
それはアリアスの義手であった。
「ああ、すまねえ......」
エントランスに到着すると、役割ごとに分かれて行動することになった。
アマツら上級戦士の班は二階に上がった。
因みに、アマツ達の班長は元No.14のサラである。
「よし、私達は雑魚達を倒すよ。少し不本意だが......」
不満そうに言うサラ。
それはアマツにも分かった。
(やっぱり、強い相手と戦いたかったんだろうな......)
彼はサラの心情を察する。
少し行動しているうち、アマツたちの目の前に数人、クローバーの手下が現れた。
「お、来たか!」
サラが戦闘の構えに移った。
(まずい)
と、アマツは思い、サラの前に立つ。
アリアスもだ。
「サラさん、ここは俺達に任せてください」
「私達だけで片付けられます!」
「......ああ、そうか、すまないな」
サラは気にくわぬそうな顔をしながらも受け入れた。
サラは極力戦わせてはいけないと寿之会長に言われた。
あまりにやりすぎると発作が起こるので、アマツたちが手に負えなくなる時まで戦わせてはいけないのだ。
彼女はいわば、最終手段である。
「インシネレーション!」
アリアスがインシネレーションを放つと、手下の内数人は吹き飛んでいった。
「アリアス、お前威力上がったか?」
「ええ、義手を改造して、インシネレーションのパワーを上げ、燃料も多く積めるようになったわ」
(これは、俺も負けていられない!)
アリアスに対抗心を燃やしたアマツは、腕に炎を宿す。
そして、クローバーの手下に向けて炎を放った。
「おら、喰らえ!!」
「ぎゃあ!!」
アマツのファースト・ファイアは手下2、3人に直撃し、大いに燃え上がる。
壁も黒く焦げ、蝋燭のロウがポタポタと落ちる。
「アマツも火の勢いが強くなってるわね」
「おお、そうかな?」
アマツはあまりそういう実感は無かったが、アリアスに言われてみれば確かにそうかもしれないと思った。
「うわあああ!!」
すると、叫び声が聞こえた。
そして、その叫びを上げたと思われる戦士が吹っ飛んできた。
「うおっと」
その戦士をサラがキャッチする。
「なんだ!?」
何事かと思い、アマツがサラの前に行く。
「サラさん、これは......!」
「ああ」
その少し遠くには、戦士を飛ばしたと思われるエネミーがいた。
「......」
そのエネミーはロボットのような質感を持っている。
胴体は土偶のような形をしており、足はなく浮遊しており、手は体と少し離れている。
「......」
そのエネミーはその体から離れている両手からビームをチャージする。
「来る!!」
そしてそのエネミーは、そこからアマツ達に向けてビームを放った。
ビームはアマツ達に当たると、大きく爆発した。




