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第六十二話 宴会

 二区 ディフェンサーズ本部。

 ここには、大宴会場というものがあり、約800人を収容できる広さである。

 そこでは、P市南部攻略作戦及びエネミー地下収容所防衛戦の成功・勝利を祝う祝賀会が開かれている。

 二つの作戦の参加者達がそこに参加している。


 「諸君、君たちのおかげで、P市南部は解放された」


 檀上では会長の寿之がワイングラスを片手にマイクに声を吹き込むと、会場からは拍手が送られた。

 実は彼は、P市南部攻略作戦の指揮も執っていた。

 このような数百人規模の作戦には、彼が指揮官として活動することもある。


 「だがしかし、我らも大きな被害を出した。この作戦のために、多くの勇気ある戦士たちがエネミーに立ち向かい、散っていった」


  収容所防衛戦の被害は第五十九話に記したとおりである。

 P市南部攻略作戦は、援軍やナンバーズ含めて、総勢378名が参加したが、下級87名、上級27名の死者を出す損害(そのうちの約半数が要塞攻略戦によるもの)であり、ディフェンサーズも痛手を負った結果となった。

 

 「今日は、その戦士たちを追悼し、そして、我らの作戦の成功を祝おうじゃないか!」


 そしてワイングラスを高々と上げる。


 「乾杯」

 「かんぱーい!!」


 会場中から一斉に声が上がった。


 「はぁ、大変だたなぁ」


 アマツはジョッキのビールを持ちながら、この戦いの疲れを癒す。


 「絶対私のほうが大変だったわよ。何日も歩かされて、戦わされてで......」


 彼の発言にアリアスが小言を言う。

 

 「何だよ。二日目以外はほとんど暇だったんだぞ」

 「羨ましいじゃない。それにこっちは精神力も擦り減らされたわ......」


 と、2人が作戦のつらさを言い合っていると、「アリアス!」と、呼ぶ声がした。


 「あ、琳じゃん」

 「わーい!」


 と、琳はアリアスに抱き着いてきた。


 「おお、そんな抱き着くなって」


 アリアスはそういいながらも、笑みを出している。


 「え、誰?」


 突然登場した琳に困惑するアマツ。

 しかもアリアスに抱き着いての登場。

 相当懐いているようだ。


 「アリアスの友達ですか?」

 「ああ、まあ、知り合いだな」


 琳は黒目をアマツに見せる。


 「柊琳って言います!」

 「......赤城アマツだ」


 と、照れながら言う。

 低身長のアリアスよりもさらに数センチ小さい彼女の形の整った顔に綺麗な黒目は、大抵の男は魅了するだろう。


 「琳はあの作戦で衛生兵をしていてね、私はそこでで知り合ったんだ」

 「そんな最近だったのか(にしては結構な懐きようだな......)」

 

 アマツは内心そう思う。

 

 「琳、そういえば上級戦士に昇級したらしいじゃない」

 「そうなんです! やりましたよー!」


 彼女が昇級したのは、衛生兵として多くの戦士を救ったこと等の功績によるもので、戦闘能力以外の評価で昇級したというのは、一年に2,3人いるかいないかという珍しいケースである。

 他にも、No.8のスリニア・エアハートとNo.16の安倍泰昌が、それぞれ黒幕さんや笠置要と入れ替わる形でNo.7、No.15に上がった。


  「それは良かったな」


 アマツが琳を祝うと、そこにゆらゆらと漂う女が。

 スリニアだ。


 「お~、確か、この前の人ですねぇ」


 彼女はアマツに近寄る。

 彼は一瞬拒絶反応のようなものを起こした。


 「す、スリニアさんですか......」

 「戦い、よかったですねぇ」


 彼女はパンをちまちま食いながらアマツを称える。

 

 「いや、討伐したの、2体だけなんですけどね......」


 アマツは苦笑いをする。


 「頑張って下さいねぇ」


 と、去っていった。

 

 「はぁ......」


 アマツはため息をつく。


 「なんか、やる気の無さそうな人ですね......」

 「あれで現在No.7なのね......」


 琳とアリアスが彼女の強さに疑問を持つ。


 「何言ってるんだお前ら、No.7なんて寧ろ低い方だよ。あの人の戦いぶりを見た時の恐怖と不気味さは、もう忘れることなんてないな」

 「えー、そうなの?」


 アリアス達は未だに怪しんでいるが、彼女達がスリニアの能力を見ることがあれば、必ず恐怖に戦くだろうと、アマツは確信した。

 彼女の能力はいずれも残忍かつおぞましい。

 

 (あんなのを見たらトラウマものだ)


 アマツはそう思いながら、ふわふわと空中に浮いているスリニアの背中を見送った。

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