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第四十八話 盲目のリリアンネ

 麗美は、突然の出来事に頭が真っ白になった。


 「笠置姉妹!?」


 イザベルはすぐに背中に背負ってある鎌を手に持つ。


 「な、なんでここにいると......?」


 麗美ははさっきまで自分と要を隠していた壁を粉々に砕いたリリアンネに問いかける。


 「......見えた」


 と、単語をひとつだけ言うリリアンネ。

 麗美はその言葉を不審に思わざるを得なかった。


 (見えた......あの目で!?)


 麗美が見たときは、彼女は確かに目を閉じていた。

 すると、リリアンネの口から、さらに難解な発言が飛び出してきた。


 「お前達、壁の向こうにいるの、透けて見えた」

 「透けた......!?」

 

 麗美は理解が追い付かなかったが、一つ言えることがあった。


 「......能力者ね」

 「そう」


 リリアンネは首を縦に振る。

 そして、イザベルが口を開いた。


 「こいつ、リリアンネは、盲目だが、空間や気配を把握できる」


 リリアンネは、その空間に、何があり、どんな形、どんな色なのかを感じ取ることができる。

 さらに、気配を感じ取ることもでき、どんな人物なのかが、服装も、髪型も分かってしまう。

 彼女は目が見えないが、もはや目があるも同然なのだ。


 そして強力なのが、その『気配』が障害物によって隔てられていても、それを透かし、感じ取ることが出来るところ。

 だから、リリアンネは麗美と要が隠れていたと言うことも分かったのだ。


 「なんて厄介な敵と遭遇したの......」


 と、自分の運のなさを嘆いていると、リリアンネの斧の先から光が見えた。


 「レミ姉、これ、やばいんじゃ......」

 「避けて!!」


 麗美はそう叫ぶと、要と共にその場を飛んで離れた。

 その直後、その矛先からエネルギー弾が放たれ、二人がいた場所に着弾し、爆発を起こした。

 

 (これは、かなりの強敵......)

 

 麗美は、リリアンネを強敵と認識する。

 しかも、あのイザベルもいる。

 しかし、ここで逃げたら追い討ちを掛けられるだろう。

 それなら、今ここでダメージを与えて終えなくするようにした方がいい。 

 本当は戦いたくはないが、今、戦わなければならない状況に立たされている。


 「要、戦うわよ!」

 「おっしゃ来たっ!!」


 麗美の許可を喜んで受け入れた要は、炎の槍を出した。

 それと同時に、リリアンネは麗美に、イザベルは要にそれぞれ向かっていく。

 

 「殺す」


 リリアンネが麗美に、2メートル近くはある長い斧で斬りに掛かる。

 麗美はそれを避けつつ、エネルギー弾を複数発射するが、リリアンネは見るからに重そうな斧を軽々と振り回し、弾をはじく。


 (くっ、要がいない!)


 本来なら、ここで要が近接攻撃を行い、リリアンネを翻弄していくのだが、その要はいまイザベルと戦っており、二人を分断されている。

 これでは、連携攻撃が持ち味の笠置姉妹の実力が発揮できない。


 (このままでは不利か......)


 と、麗美が考えた時、リリアンネは麗美のもとに近づき、左腕で彼女の首元を掴む。


 「うぐっ!?」


 麗美は首を絞められることにより息苦しくなり、吐き気も覚えた。

 リリアンネの目が少し見える。

 しかし、その目には一切の輝きもない。


 「死ね」


 リリアンネは斧を振り上げる。

 その時、要がイザベルに構わず、リリアンネの背後に飛んできた。



 (要!)


 要は恐らく、リリアンネの能力は正面にしか発揮されないと考えたのだろう。

 彼女はほとんど音を立てず、その炎の槍をリリアンネに突き刺そうとした。

 

 しかし、その予想は間違っていた。


 「無駄」


 リリアンネがそういうと、麗美に向けていた斧を、向かってきている要に突き付けた。

 

 「あ――」


 斧からエネルギー弾が放たれ、その弾は要に直撃し、音を立てて煙を上げた。


 「要ー!!」


 麗美はその光景をみて叫ぶ。

 要は少し飛ばされて地面に倒れこんだ。


 「後ろも、分かる」

 

 リリアンネは、人の視界の外の範囲でも、気配だけなら、感じ取ることができる。


 「離せっ!」


 麗美は油断したリリアンネの、首を掴んでいる手を離す。


 「あ」


 空中を跳びながら急いで要のところに向かう。


 「させるかっ!」


 イザベルが要を鎌で突き刺そうとするが、それには一歩遅く、麗美は要を抱え、イザベルの攻撃も避けると、その場から逃げていく。

 そして、麗美は追撃を許さないために、近くの建物をエネルギー弾で破壊する。

 二人は姉妹を追おうとするも、崩れていく建物の瓦礫がれきに阻まれる。


 「狡猾」


 リリアンネは斧から放たれる弾で邪魔な瓦礫を次々と破壊していくが、それは追いつかず、逃げられてしまった。


 「う......れみ姉......」


 要は目を半開きにしながら麗美に話しかける。


 「話しちゃだめ、傷口が広がるわ」


 麗美はこれ以上要に離さないように言いつける。


 (盲目なのになんて強さなの......)


 麗美はあのリリアンネの強さに感心する。


 こうして彼女は、負傷した要を背負いながら、P市南部から出て行った。

 そしてこの調査の後、デイフェンサーズは、『P市南部攻略作戦』に踏み切ったのだった。

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