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第四十七話 いらっしゃいませ

 P市南部。

 この地域は、かつては人間が住んでいて、そこそこ発達した都市だったが、エネミーの急増によって住める状況でなくなってしまい、廃墟と化している。

 P市と同じような状況の地域は、他にも、特に田舎である東京都西部で多い。

 そしてさらに南に行くと、広い海が広がっている。

 しかし、その海は一部を除いて汚染しており、その海を含めた一部のきれいな海と汚染された海は頑丈に隔てられている。


 そしてその廃墟の入り口の前に、二人の姉妹が、立ち入ろうとしていた。


 「ここだな、あたい達が調べるべき廃墟は......」


 ショートヘアの妹、要は廃墟に立ち入れないように設けられた柵を握る。

 

 「要、あくまでも調査だから、なるべく戦闘は避けるようにね」


 要とは対照的なロングヘアーの姉、麗美は要に注意をする。

 二人は、サラがナンバーズを外されたのに伴い、麗美はNo.14、要はNo.15となった。

 彼女らの任務は、そのP市南部の調査である。

 最近、人が柵を越えて入っているという目撃があった。

 ディフェンサーズの役員らはこれを、『クローバーの根城がそこにあり、その人はクローバーのメンバだ』という推測をし、No.14の麗美と、No.15の要が調査に出ることになった。


 「よいしょ」


 要が柵の上を持つと、体を持ち上げ、柵の上を飛び越える。

 続いて麗美も、柵の網目に手足を引っ掻け登る。


 「おお、廃墟らしい廃れ具合だな......」


 要はツタが絡みついた建物を眺める。

 

 「よそ見をしてないで早く調査を始めましょ」


 麗美は要を促し、さっさと奥に進んでいく。

 

 「!」


 要は急いで麗美についていく。


 「レミ姉、もっと余裕を持とうよ、余裕。そんな淡々と進めてるだけじゃつまらないっつーの」

 「これは遊びじゃないの。あんたはこの任務の重要性を理解していない」


 と口論をしていると、人が一人、歩いているのが分かった。


 「お、いた」


 要はその人の存在に気づくと、その人も彼女らに気づいた。


 「だ、誰だお前らは!?」


 彼はそう叫ぶと、拳銃を彼女らに向けた。


 「しまった、見つかった!」


 麗美は見つかったことに焦ったいる一方で、要は動じることなく、その彼に質問した。


 「お前こそ誰だ?」

 「俺は、クローバーの一員だ、ここに入ったからには、生かすわけには――」


 と、彼が言いかけた時、要は彼の目の前に近づいた。

 そして、一尺ほどの長さの炎の剣を右手から出すと、彼の頭を宙に飛ばした。


 「情報提供、ありがとさん」


 要は顔に返り血を浴びた状態で彼に感謝をする。


 「要、戦っちゃだめだって......!」

 「レミ姉、見つかったら息の根止めるしかないでしょ、そりゃ」


 要は片目で麗美を見ながら、炎の剣を消した。

 たしかに、この状況でも戦わないといのか否かというのはさすがに要に一理ある。

 

 「はぁ、さすがに仕方ないかもね......」


 麗美は溜息をつく。


 「とりあえず、クローバーの根城があるということは分かったな」

 「今まで根城はなくばらばらに生活してるってことになってたけど......幹部級の人たちや監視役のメンバーのみが生活しているのかしら......?」


 そして、姉妹は再び足を動かし始める。

 今度はメンバーに見つからずに、上手く隠密して移動をしていった。


 ※ ※ ※


 「これで、半分ぐらいは終わったかしら......」


 二人は建物の跡地らしき場所にある、一部だけ残った壁に身をひそめながら休憩している。


 「しかし、あたいらが見ただけでも数十人はいた......クローバーって結構大きい組織だったんだな......」


 要はクローバーの規模の大きさに敵ながら感心する。


 「そうね、これだけ大規模なら、もしディフェンサーズが正面からぶつかっていったら、かなりの窓外になるかもしれないわ......あ、要、静かに」

 「?」


 麗美は要に喋らないように促した。

 すると、二人の人物が、歩いてくるのが分かった。


 (誰か来る......)


 麗美はゆっくりと壁から顔をのぞかせた。

 そこには、青い髪の女性、イザベルともう一人、でかい斧を持った女性が話している。

 その女性は目を瞑りながら、イザベルと会話している。


(クローバーのメンバーだ。確か東京銀行で暴れたやつと......あの人は目が見えないのか?)


 麗美は疑問に思いながら、再び壁に身を隠した。


 「東京銀行のやつ、残念だったね」

 「ああ、まんまとやられてしまった......」


 イザベルが髪を黒と白で等間隔にに染めてある女に、東京銀行の失敗を嘆いている。


 「まあ、仕方ない」

 「リリアンネ、あれでノーラとウィリアムを亡くしたんだぞ、仕方ないで済むものか」

 

 麗美が聞く限り、彼女はかなりショックに思っているようだった。


 「また、やり返せばいい」

 「ああ、今度はノーラやウィリアムの仇を取るために、ナンバーズ二人は倒しておきたいな」


 (かなり恨んでいるようね)


 麗美はイザベルの心境を察した。

 すると、リリアンネの口から、


 「......それなら、今できる」


 という言葉出てきた。

 

 「え?」


 彼女は一瞬、彼女の言っていることの意味が分からなかったが、それを理解したとき、冷や汗がどっと出た。


 「まさか――」


 次の瞬間、砕けるような音がしした。

 彼女たちを隠していた壁が弾きとんでいったのだ。

 そして、麗美と要が後ろを振り向くと、イザベルと、斧を前に出しているリリアンネがいた。


 「いらっしゃいませ、クローバーへ」

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