表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/151

第四十三話 VS吸血鬼 その2

 ディフェンサーズ戦士は沈黙している。

 室内はノーラの笑い声と、『餌』を食べる音のみが響いている。

 彼女は肩から出ているどす黒い棘で上級戦士の3人を串刺しにし、その内の一人の戦士の肉を噛みちぎっている。


 「モグモグ......アハハッ!」


 ノーラは真っ赤に染まった口角を上げる。

 アマツには、それが自分達を蔑んでいるようにも、『餌』がまだあることに喜んでいるようにも見えた。


 (ノーラ......こんなやつが人間なはずがねぇ!)


 彼はノーラの食事風景を見て、虫唾が走る。

 人間が人間を食べるなんて、聞いたことがない。

 

 (いや、こいつは人間じゃない......エネミーだ)


 「はぁ......」


 ノーラは飽きたのか、棘を振って戦士を放り投げた。

 それと同時に、恭介が動き出した。


 「お前ら、やるぞ」


 と、彼は生き残っている戦士に指示を出した。

 アマツは一瞬拒絶反応が出たが、やらなきゃどうせ喰われるだろうと思い、立ち上がった。


 「んん?」


 ノーラはアマツ達の動きに、唇を水平にし、彼らの様子を伺っている。

 すると突然、恭介が床を蹴り、ノーラへ飛び込んでいくと、右腕で殴ろうとする。

 ノーラは黒い棘2本を体の前に出し、それをガードする。


 「俺の仲間の味はどうだったか?」

 「ええ、とても美味しかったわよ......でも、あなたのほうが上手そうねぇ」


 と、赤い歯を見せると、その棘は棒状に変形させ、恭介を振り払う。


 「あはは、すごいでしょ? 血鋼けっこうって言うのよ!」


 ノーラは相変わらず不敵な笑みを浮かべて、両肩からでる血鋼を再び棘状に変形させて、恭介に突き刺そうとする。

 しかし、恭介は空中で上手く体を動かし、回避した。

 アマツ、アリアス、ジュール等もその戦いに参加する。

  アマツは掌に火の玉を出し、ファースト・ファイアを打つ準備をする。

 打つ方向にノーラ以外誰もいないことを確認すると、彼女に向かって放つ。


 「喰らえ!」


 しかし、彼の炎はノーラの右肩の血鋼によって阻まれてしまった。


 「くそっ!」


 と、アマツが悔しがったのも束の間、ノーラが悲鳴を上げた。


 「ああああ!?」


 ノーラは、疎かになっていた左肩の血鋼を恭介によって折られたのだ。


 「隙を作ってしまったな」


 恭介糸目から黒目を出し、ノーラを睨むようにして見る。


 「ううう......!」


 ノーラは血鋼が折られた左肩を押さえ、苦しむそぶりを見せる。


 「......ぐうう......!!」


 しかし、血鋼が折られた部分から新しく血鋼が生えてきた。


 「い、痛いわあああ......!」

 

 彼女は痛みを堪えているのか、言葉を伸ばし、恭介やアマツ達を睨む。


 「なるほど、回復するのか......」


 恭介は他の戦士とは比較的に冷静に言った。

 そして、その直った血鋼を恭介に向かって飛ばした。

 

 「餌の分際でええええ!!」


 ノーラはそう叫びながらアマツ達にも攻撃をする。

 アマツ達はそれを回避する。


 「ご飯が欲しい、欲しい!!」


 彼女は恭介を両肩の血鋼を枝分かれさせ、先を鋭くして攻撃をする。

 恭介はそれを回避しようとするも、棘のひとつが恭介の左腕に刺さった。


 「恭介さん!」


 アマツが恭介を心配して叫ぶ。

 しかし恭介は、少し顔を歪めただけで、大して痛いと言う反応はアマツ達には見せなかった。

 そして恭介は、腕に刺さった血鋼を抜くと、腕からは血が滲み出てきた。


 「喰わせろおお!!」


 ノーラは右の血鋼を手のような形に変形させて、恭介の右腕を掴む。


 「その腕をちょーだい♪」

 

 これを見たアマツ、恭介が危ないと思い、右腕に炎を宿し、手の形をしたその血鋼を破壊する。


  「ぐああ!」


 ノーラが苦しむ。

 そして恭介は、右腕にまだくっついている血鋼を振り払うと、即座に右の血鋼を根本まで破壊し、更に右腕を彼女の体から切り離した。


 「きゃあああああああ!!?」


 ノーラは金切り声で絶叫する。


 「ナイスだ、アマツ」

 「ありがとうございます!」


 アマツは恭介の感謝の言葉を光栄に思う。

 

 「アマツ、恭介さん、まだくるわよ......」


 アリアスは無機質な腕でノーラを指差す。

 そこには、上半身を後ろに反らせながら、右腕や右肩の血鋼を再生させている。


 「おいおい、腕も治るのかよ......」


 恭介も流石に驚きを隠せない。


 「あはは、痛い、あああああ、ご飯をくれぇ......!」


 ノーラの顔は怒りや、痛み等が混じっているかのような歪んだ顔をしている。

 とうとう気が狂ったのかとアマツが思っていると、アマツ達の方を睨む。

 

 「食べたいいい!!」


 ノーラは血鋼をさっきよりも枝分かれさせて、アマツ達に絶え間なく攻撃をする。


 「くそっ、なんて攻撃の密度だ!」


 アマツは次々と襲ってくる血鋼を避け、その内の一本を破壊する。

 しかし、ノーラは苦しむ様子はない。


 「アハハハ!!」


 ノーラは笑いながらまだアマツ達を攻撃する。


 「これじゃ、俺の体が穴だらけになるのも時間の問題だ......!」


 と、アマツがこの状況を嘆くと、彼はふと、ジュールの方を見た。


 「あ」


 その瞬間、アマツは頭が真っ白になった。

 彼がが見たのは、腹が血鋼によって突き破られている、ジュールの姿だった......。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ