第三十八話 レッツゲリラ!
『クローバー殲滅戦』実行当日。
真っ暗な夜で覆われている、東京ドーム前後の大きさの東京銀行の近くに、クローバーのメンバーが集結している。
メンバーの殆どが、黒いパーカーを着ている。
そのうちの一人の女性、アイラもパーカーを着てその集まりの中に入っている。
「しかし、こんな大胆に集まるなんて、良く見つからないもんだ」
「ここら辺は夜は殆ど人は通らないからな」
彼女の独り言に、別のメンバーがその言葉に反応して来た。
オフィス街である東京銀行周辺は昼間こそ通勤・通学で人通りが多いが、夜は殆ど人気がない。
(お前に言った訳じゃ無いんだが......)
アイラは不快に思いながらも、彼に質問をする。
「でも、もし人が現れたらどうするんだ」
「そんときゃあ、殺るしかねえな。上からもそう言われてるし......だが、全くと言って良いほど人がいないな......さすがに少し不自然だな」
「......そうだな」
アイラは少し間を開けた後に頷いた。
と、その直後に、彼は右耳の無線通信機を押さえた。
「......了解!!」
と言うと、
「おいいくぞ」
と、アイラに声をかけた。
「中に入るのか?」
「通信でいってただろ?武臣様が扉を破壊して、そこから突入するって」
「え、そうなのか?」
と、アイラが言うと、彼は顔をしかめた。
「何で聞こえなかったんだ?」
「あ、多分故障だと......」
「まじかー、こりゃ弁償だな。まあ俺が伝えてやるからとっとと入るぞ」
と、二人を含めたメンバーはたった今壊された銀行の玄関に入っていった。
「抵抗する職員や警備員は殺し、金は全て焼き尽くすのです。私とその部隊は大金庫室に向かいます。神のご加護が有らんことを」
祭服を着た武臣が部下に命令すると、それぞれの方向に向かっていった。
「俺は武臣様の部隊だが、お前もか?」
「ああ、そうだ」
「なら、お前も大金庫室だな」
そして二人は、武臣についていく。
暫く大金庫室に向かっているが、電気はついていないし、職員や警備員は一人も見つからない。
「ふむ......これはおかしいですね......」
と、武臣がこの状況を不思議に思っている中、アイラはさっき彼に『故障した』と言っていた通信機を起動させた。
「......ララ、聞こえるか?」
アイラが周りに聞こえないように小さい声で喋る。
「はいはい、只今ウィリアムとイザベルとか言う幹部と共に外の警備をする『役』をしているララでーす!」
通信機から聞こえるのは、この緊迫した雰囲気には似合わないハイテンションな声だ。
アイラはそれに苛立ちを感じる。
「おいアホ、お前集中してやってるのか? この作戦はとても重要なんだぞ」
「分かってる分かってる!」
本当に分かっているのかが怪しくなるような返事をした。
「おい、何独り言を言ってるんだ?」
さっきの人がアイラが喋っているのを指摘してきた。
アイラはその言葉に冷や汗をかいた。
「いや、なんでも......」
「緊張してんのか?」
「ああ、まあね......」
「そうか......」
と、彼は簡単に退いた。
「......私の合図で動けよ」
「はいはい」
と、最後に確認をして、通信を切った。
さて、彼らはいよいよ大金庫室の目の前に着いた。
その扉は厳重で、分厚い鉄の扉となっている、これ丸々金庫なのだ。
「ふむ、なかなか固そうな扉ですね......」
と、武臣が言うと、突然背中から真っ白な翼が生えてきて、さらに両腕も天獣手に変形した。
(天人だ......)
アイラは内心で、彼が天人だったことに少し驚いた。
「はぁっ!!」
と、武臣が天獣手で分厚い扉を開けると、その殴った部分がボコッとへこみ、穴が開いた。
(おお......)
と、彼女は彼の力に感心した。
「さあ、入りますよ」
武臣に続いてアイラ含めた15人ほどのメンバーが続々と入る。
しかし、鉄の壁の中は空っぽ。
金はびた一文無い。
「な、なんでない......」
武臣はその光景にがっくりとする。
その直後、通信が来たのか、彼は通信機がある右耳を押さえた。
「......な......どこにも金はないって......」
武臣の言葉に部下は騒然とした。
「嘘だろ、無いはずがない!」
「もしや、情報が国に漏れたのか!?」
と、混乱している中、アイラただ一人だけ、不敵な笑みを浮かべていた。
そして、通信機を起動させる。
「ララ......殺れ」
「オッケー♪」
とララに合図を送ると、通信を切った。
そして、黒いパーカーのフードを上げると、鋭い目が現れた。
そして、
「芝居は終わりだ」
と言った直後、空中から多数の剣が現れた。
その剣は武臣以外に次々と突き刺さっていった。
「フガッ何がぇ......」
さっきアイラと話していた彼も、例外なく串刺しにしていく。
「は!?」
アイラに背を向けていた武臣が振り向くと、彼女を見た途端、愕然とした。
「お、あ、お前は......『No.9』!?」
と、彼は後ずさりをした。
そんな中で彼女は、再び通信機を使い、
「ああ、もういいぞ」
と言った。
そして、武臣に向かってこう言った。
「どうだ? 貴様らの作戦が失敗に終わった気分は?」




