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第三十六話 ベッドの中で

 彼女が意識を失ってからしばらくして。

 未だにこの暗闇を彷徨っている。


 (死んだのかな......)


 と、彼女は思っていたが


 「お姉様......」


 メアリーが自分を読んでる声が聞こえた。

 もう死んでしまうんじゃないかと思ったが、これで生きていることが分かって、彼女は安心した。


 そして彼女が気づいたのは、自分は今ベッドの中にいるということだ。

 まだ目を開けるのもつらいような状況だが、このフカフカした感じは、間違いなくそうだと思った。


 (ああ、倒せなかったな......)


 と、あの時のことを悔やんでいる。

 あのような下衆は、なんとしても倒したいと思っていたのだが、あの天人によって阻まれてしまった。


 (あいつさえいなければ......!)


 と、今度はその天人を憎む。

 未だに倦怠感が体にまとわりついているが、とりあえずうめき声でもいいから声を出そうと試みた。


 「うう......」


 彼女は小さいながらも頑張って声を出した。

 

 「はっ!!」


 と、メアリーの驚く声が聞こえた。

 

 「お姉様!」


 彼女はミカの体を揺らす。

 ミカの体の所々で痛みが走る。


 (痛い痛い! 体を動かすな!!)


 と、心の中でメアリーに怒る。


 「うう、うぐう......」


 と、痛みで声まで漏れた。


 「だめですよ、妹様」


 ミカの気持ちも考えていない彼女を暁が止めた。


 (はぁ......)


 彼女はその痛みが止まったことに安堵する。

 ようやくまぶたを動かせるようになり、ゆっくりと目を開ける。


 (う、眩しい!)


 だが、差し込んできた光がまぶしくて、目を閉じる。

 もう一度ゆっくりと目を開けてみる。

 やはり、最初は光によって目の前は真っ白になっていたが、段々と慣れていき、そこには暁と、涙を流しているメアリーの姿が見えた。


 「お姉様ぁ!!」


 メアリーがいきなり彼女に抱きついてきた。

 抱きつかれた腹部が痛む。


 「いでで!!」


 ミカはその強烈な痛みに声をあげる。

 

 「あ、ごめんなさい......」


 メアリーはミカから離れた。


 「お嬢様、やっとお目覚めになられたのですね」


 曉が中性的な顔をニコッとさせる。


 「どのくらいたったのかしら?」


 ミカは動かせるようになった口から暁に向けて声をを出した。


 「およそ5時間です」

 「そんなにたっていたのか......うっ」


 と、右腕を動かそうとした途端、その右腕から電気が走った。

 見ると、包帯が巻かれてある。


 「あ、その腕は動かさないでください。複雑骨折です」


 曉にそう言われてミカは思い出した。


 (これは、デュルに握られた時のか......)


 そして、もう片方の腕でパジャマをめくると、腹部にも包帯が。

 

 「傷はもう酷かったですよ......グスン......もう死んでしまうのかと......」


 メアリーが涙をぬぐいながら言う。


 「当分は、活動は出来ませんね......」


 曉がミカを哀れむような顔をする。


 「はぁ......倒せなかったわ......あの天人がいなければ......」

 「あの人もクローバーですね。最近暴れだした人物です」

 「デュルは倒しておきたかったわ、腹が立つわ」


 ミカは骨折している右腕を左腕で触る。

 

 「まあ、当分は活動出来ないでしょうね」

 「でも、生きてて良かったです」


 メアリーが充血した目で笑顔になる。


 「メアリー、私が死ぬなんて思ってたのかしら?」

 「あ、はい」

 「そんな、私があんな下衆に負けるわけがないじゃない」


 ミカは微笑んだ後、


 「デュル......次会ったら絶対に倒す!」


 と、彼女は左腕をギュッと握った。


 ※ ※ ※


 「が、ゴホッゴホッ!!」


 あちこち傷だらけの男は、血を吐いた。


 「デュルさん、私が助けていなかったら、あなたは死んでましたよ」


 天人の彼は、天獣手を解除する。


 「す、すまねえ八瀬......」

 「貴方の能力は化け物揃いのディフェンサーズとの戦いにおいて重要になるんですよ。あろうことか、No.3のミカに一人で挑んでいくとは......」

 

 四つん這いになっているデュルと視点の高さを合わせるかのように、彼はしゃがむ。


 「貴方が今回助かったのは神のお陰です。神は私に『彼を助けに行け』というお告げをして下さいました。しかし、二度助けるほど神は甘くないですからね?」

 「あ、ああ......」


 すると、紫のパーカーを被った女性が現れた。


 「イザベルさんですか」

 「ボスからの伝言だ」


 彼女は頭を覆っているフードを外した。

 彼女のセミロングの青髪は、左目を隠している。


 「......この一週間後に、東京銀行を襲撃する」

 「戦力はどのくらいで?」

 「私と、武臣と、ノーラと、その他多数戦闘員」

  

 武臣は眉をひそめる。


 「何でそんなに多いんですか?」

 「今回はディフェンサーズの介入が予想されるかららしい」

 「もしかして、そこで出来るだけディフェンサーズの戦力を減らすと言うことなのか?」

 「そうらしいね」


  デュルの質問にイザベルが答えると、彼女は再びフードを被って、こう呟く。


 「ディフェンサーズ......一体どれ程の力を持っているのか、見せてもらおうかな」

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