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第二十九話 負けないって言ったでしょ?

 「グオオオオオ!!」


 真っ赤な竜は、咆哮を出しながら降りてくる。


 「うわ、こっちくる!!」


 彼は寒気が走る。

 周りからは、キャーキャーと叫びながら逃げる者たちがいる。

 この場の人々は混乱していた。

 

......一人をのぞいて。


 「エネミーね......」


 サナは動揺する様子もなく言う。

 アマツはそのあまりにも冷静な彼女に一瞬死を覚悟しているのかとでも思ったが、


 (あ、そういえばこの人No.1なんだっけ......)


 と、納得する。

 

 その間に、エネミーが空から地面に降りてくる。

 と、その口からは、炎が出ている。

 それをみたアマツ、


 (あのエネミー、炎を使うのか! これなら勝てるかも!?)


 アマツは、炎にはめっぽう強く、火の火傷は一切負わない。

 たとえあのエネミーの口からどれだけの炎が出ようとも、アマツにダメージは与えられない。


 (サナにまた助けられてたまるか!)


 と、アマツは窓から覗くのをやめる。


 「君には勝てないわ。」


 サナはさっきまで和むような笑顔をしていたとは思えないような真剣な表情で言う。


 「え?」


 アマツはドキッとなった。

 まだエネミーと戦おうというようなそぶりは見せていなかったはずなのに。


 「な、なんでわかった?」

 「そういう感じだったから」


 サナは少しだけ口の端を上げると、正座を解き、玄関のほうに向かう。


 「も、もしかして、戦うのか?」

 「ええ」


 サナは靴を履くと、ドアを開けようとする。


 「ま、待て!」


 アマツはサナを止めようと、肩を掴む。

 すると、アマツの背中がゾクッとなる。


 彼女の眼差しは、途轍もない威圧感を放つ。

 まるでさっきの明るい彼女とは別人だ。


 「ひっ......」


 アマツは自分でも情けないと思うような声を漏らし、思わず手を離す。


 「大丈夫よ......負けないから」


 彼女はそう言い残すと、ドアを開けて、出て行った。


 (な、なんなんだあのオーラは......)


 彼は少しの間立ち止まったまま呆然としていると、


「......はっ、サナはどこにいるんだ!?」


 と、彼はいそいで窓のほうを再び覗く。

 そこには、地面に立っている竜のエネミーと、サナだ。


 「グウウ......」


 エネミーはサナに向かって喉を呻らせた。

 そして、ドスンドスンと地面を震わせながら近づいていく。


 「ああ、サナが危ない......」


 アマツは彼女を心配する。

 当の本人は、呻りに動じることはなく、じっとエネミーのほうを見ている。

 エネミーはサナの目の前まで近づき、顔を前に出して威嚇する。


 少しの間だけ彼女とエネミーのにらみ合いが続くと、突然、エネミーが咆哮をあげた。


 「グオオオオオオ!!」


 アマツはその咆哮に耳をふさいだ。

 しかしサナは、髪後ろに舞うだけで、耳をふさぐことはない。


 すると、エネミーの口から炎が漏れているのがアマツの目に入った。

 彼には、サナの前で口から火を吐くのだということがすぐに分かった。


 「やばい、サナ逃げろ!!」


 しかし、サナは避ける様子がない。

 恐怖で足が固まっているのだろうかと思ったが、彼女の表情からして、そういうようでは無さそうに見える。


 直後、エネミーの口から莫大な量の炎がサナを襲う。

 サナは一瞬にして炎に包まれた。

 その炎の熱さは20メートル程離れているアマツにも伝わった。


 「すごい威力だ......サナもさすがに丸焦げになってるか......」


 彼は勝手にそう推測し、不安になる。

 

 その業火がやむと、周りの建物や床は焼け跡が。

 この周りの建物はコンクリートばかりで、木造がなかったので火災が起きることはなかったが、コンクリートは真っ黒に焦げていた。

 だが、真っ黒になった地面の上に立っていたのは......サナ。


 「グ!?」


 エネミーは驚いたのか、首をひっこめる。


 「む......無傷だ......」


 今日二度目の驚愕だ。

 サナの体には火傷の後一つ見つからない。

 そして彼女は、こう言う。


 「所詮は、レベル6ね」


 そういってエネミーを貶める。


 (レ、レベル6で所詮だと......)


 レベル6は、前までとはいえ最高レベルだった。

 それを弱小と言わんばかりの彼女の発言に、アマツは理解しかねる。


 すると、サナは右手をエネミーの前に出した。


 (何をする気だ? おそらく技を出すんだろうけど)


 と彼が思うと、彼女は塩を少々つまむかのように、親指と人差し指を合わせる。

 彼女はその手を左に持ってきたかと思えば、素早く右に移動させた。


 すると、何やら線みたいなものが現れた。

 彼女はその線を指で押し広げると、いろんな色をマーブリングさせたかのような空間が広がる。


 「グウウ?」


 エネミーはそれに興味を持ったのか、ひっこめてた首を再び空間の前に出す。

 そして、サナはこういう。


 「『スカルチャック』」


 彼女がこういった直後、その空間から、赤いビームが飛び出してきた。

 そのビームはエネミーを直撃した。


 「グ、グウウゥゥゥ......!」


 エネミーが断末魔を上げるも、その声はだんだんと小さくなっていく。

 サナがその空間を閉じ、ビームを止めると、エネミーは骨だけになっていた。


 「へ!?」


 その骸骨をが目に入り驚くアマツ。

 その骨は、ばらばらと関節ごとに崩れていく。


 カランカランと音が鳴っている中、サナは窓から覗いているアマツのほうを振り向く。

 エネミーが現れる前のような、明るい笑顔で。


 「ね? 負けないって言ったでしょ?」

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