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第二十五話 ニュースは俺を報道しない

 「まだかなぁ......」


 彼はビールを飲みながら、テレビと睨み合いをしている。


 「アマツ、まだ映らないのか?」


 十郎は待ちくたびれている。


 「あと5分でニュースが始まるぞ......」


 アマツはドキドキしながら11時になるのを待っている。

 もうすぐペソのニュースがやるはずだ。

 その時に、それに貢献した人物の一人として、自分の名前が上がるはずだ。


 「ほんとに、苦労したよ......恭介っていう人が助けてくれなかったら間違いなく死んでたよ」

 

 酒が少し回っているアマツは、陽気に「ははっ」と笑った。

 アマツは酒には強い方だが、缶ビールを3本も飲んでいるので、さすがに酔っている。


 「......ん、まてよ? それって恭介ってやつの手柄だよな?」

 「いや? とどめは俺とアリアスでやったから俺の手柄だぞ? 恭介さんも良いって言ってたし」

 「そ、そうなのか......」


 十郎は腑に落ちない様子を見せるも、それ以上言うことは無かった。


 すると、ニュースのopの音楽が聞こえた。


 「!!」


 彼らは急いでテレビに目をやった。


 『11時になりました、ニュースの時間です』


 メガネをかけた男のニュースキャスターが、画面の正面で喋り始めた。

 「よっしゃあ、やっと始まった!!」


 アマツは缶ビールを握りめた。


 『昨日、19区を荒らしていた大魔王ペソは、ディフェンサーズによって討伐されました』

 

 アマツはテレビを見つめているまま動かない。


 「アマツ」

 「しっ!!」


 彼は十郎の口を閉ざした。


 「俺の名前を聞き逃してしまうかもしれない!」

 「はぁ、そんなに出るのを楽しみにしてたのか?」


 アマツに十郎は呆れた。


 『ペソを討伐したのは、黒幕さん、アシュリー・エイリー、デリック・キャンベル、エドナ・フリント、ミカ、レヴェリッジ、この5人です。次のニュースです』


 「......あれ?」


 アマツは信じられなかった。


 「十郎、おれの名前出た?」

 「......い、いいや? ペソを討伐した7メンバーしか出なかったぞ」


 ジュウロウは恐る恐る答えた。


 「ウソだろぉ......」


 アマツは全身を脱力した。

 そして、虚無感が彼を襲う。


 「出ると思ったのにぃ......」


 アマツはドンドンと床を叩いた。


 「まあ、こうなるとは思っていたけどな......」


 十郎は苦笑いをした。


 「まあいいじゃないか。組織から感謝状をもらったんだろ?」


 十郎は感謝状の紙をパタパタと煽る。


 「......こうなったら」


 アマツはむくっと起き上がった。


 「テレビに名前が出るくらい活躍しまくってやるうううう!!」


 アマツはそう意気込む。


 「......で、今からどっかで湧いているエネミーを倒すのか?」

 「後で」


 アマツはまたばたっと脱力して倒れた。

 酒の飲みすぎのせいでテンションがおかしくなっている。


 「いかないのかい!」


 十郎はそう突っ込むと、立ち上がり、玄関へ向かった。


 「じゃあ、俺はもう家を出るぞ」

 「いってらっしゃ~い」


 アマツはやる気の無い声で言う。


 十郎が家を出ていくと、アマツはゆっくりと起き上がった。


 「はぁ......」


 アマツは酔いによる不快感を紛らわすために溜息をつくと、


 「......テレビに出るほど活躍する......か」


 アマツはさっきの言葉を思い返した後、未開封のビールを、冷蔵庫にしまった。

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