第二十二話 大魔王第二形態
「な、なにが起きてるの!?」
ペソから出ている光に、エドナは手で目を遮った。
「貴様らが俺を第二形態に変身させたこと、褒めてやる!」
そして、ペソが纏っていた鎧は、段々剥がれてきた。
切断されていた右腕も、光を出しながら再生していく。
「やはり、このままあっけなく終わるわけなかったか......何てことだ」
アシュリーは自分の予感が見事に当たってしまったことに絶望した様子だ。
やがて、ペソが纏っていた光が消えると、そこには、裸同然の巨漢がたっている。
背中には、エドナの天使のような翼とは対の存在である、悪魔のような翼。
その翼の両端には、ハートの形をしたものがはめ込まれているかのようにあった。
デリックは、第二形態のペソの強さを測定した。
すると......。
「こ、これは......レベル6ではない、レベル8だぞ......」
デリックは絶望した。
「れ、レベル8なんてあるのか......?」
「いや、俺が独自に設定したんだが......まさかそれが使われるとは......」
「これはまた悪趣味な形態だな......」
エドナはそれでも彼を挑発した。
だが、彼女の額は汗をかいており、あの余裕の表情はないことから、彼女の発言は強がりだということがわかる。
「ふん、その口、二度と開けないようにしてやる」
スキンヘッドの彼は、彼女を指さす。
「?」
彼女が疑問に思っていると、ペソの指からビームを出した。
「!?」
不意打ちを受けた彼女は、咄嗟にそのビームを避けた。
しかし、完全によけきることはできず、彼女の翼は煙を上げていた。
「エドナ!」
デリックのロボットはすぐにミサイル発射の準備をする。
すると、ペソの拳がロボットの前に現れた。
ペソがロボットを殴ると、ロボットは壁にものすごいスピードで激突をした。
そして追い討ちをかけるかのように、ペソはエネルギー波を浴びせた。
「デリック!!」
ロボットは、ただの鉄の塊になっていた。
「これであれも只の鉄屑だな」
「な、なんなのよその威力......」
エドナは、さっきのペソとは比べ物にならないくらい強い、と言うような感じで言った。
すると再び、ペソは彼女に攻撃しはじめた。
「でかい体なのに速い、それに強い......!」
ペソの攻撃は第一形態よりも段違いに速く、彼女は避けるのに精一杯である。
「ふん!!」
ペソの拳が飛んできた。
それを彼女は避けようと試みた。
「なっ!?」
だが、その翼は言うことを効かない。
あの攻撃で傷んだ翼を酷使することによって、それが遂に悲鳴をあげたのだ。
彼女はガクンと体勢を崩した。
しかし、それは一瞬だけで、彼女は再び翼を動かし、避けようとする。
......が、間に合わない。
彼女は天獣手でガードをするが、ペソのパワーが強く、壁へと飛ばされた。
彼女は壁に両足をつけ、何とか激突することは免れたが、彼女の目の前に、ペソの拳が見えた。
彼女はもはや疲れきっている。
これを回避するのは無理だろう。
と、その時、その拳は横に外れた。
「アシュリー!」
アシュリーが剣で受け流していたのだ。
「僕にも相手をさせてくれよ」
アシュリーは剣を鞘に納めた。
「エドナ、ここはミカが来るまでの我慢だ!」
「......うん!」
エドナは地面に足を着け、体勢を整えた。
アシュリーは剣を抜くと、ペソの右腕をまた切り裂こうと試みる。
しかし、傷がつくことは無かった。
「!?」
「なんだ、その攻撃は?」
と言うと、ペソは彼に向かって殴る。
彼は剣で受け流すが、ペソの力が強くて、さっきよりも負担がかかっていた。
「くっ!」
と、エドナの気砲がペソに当たった。
が、はやり、傷一つついていない。
「やはり、ミカが来てくれないと無理だ......」
と、エドナが弱音を吐いていると、ペソの後ろから黒い物体が。
それも、ペソを包み込めるかのような大きさに。
それは、黒幕さんの殺人影だ。
「俺の影に、飲み込まれろ......」
黒幕さんは、怒りに燃えたように言った。
影は、ペソを包み込もうとする。
「この黒い物体で俺を包みこむということか......」
ペソは、影の方を向いた。
「諦めたか......?」
アシュリーは小声で言う。
しかし、そうではなかった。
ペソは、両手からエネルギー波を出したのだ。
「まさか、あいつ!?」
ペソの放ったエネルギー波は、あっという間に影を消し去った。
「そ、そんな馬鹿な、俺の影にあんな弱点があるとは......!」
普段は冷静な黒幕さんは、このときばかりは動揺していた。
彼は、影が威力が高い攻撃を受けると、消滅すると言う弱点を知らなかったのである。
今までは、エネミーの多少の悪あがきでも、影は消えることは無かったからである。
「さあ、どうする? どうやって俺を倒す?」
ペソは慢心をしている。
彼らは沈黙していた。
彼を倒す方法は無いのか......。
と、王室の扉の向こうにある廊下から、コンコンと、歩くような音がした。
その音は、どんどん大きくなっている。
「......これは、もしかして!?」
エドナの予想は、当たっていた。
その廊下からは、人が見えてきた。
それは、真っ白い衣装をまとった、お嬢様。
「......ごきげんよう、愚かなエネミー......」