第二十話 ペソと戦闘を開始する直前まで
大きな森林の中に大きく構えてあるペソの居城。
その入り口の前には、大魔王ペソを倒そうと、ナンバーズ達が集まってきた。
「みんな揃ったな!」
そう自信良く言うエドナ。
翼は体の中にしまっている。
「みんな、死ぬ気でペソを倒すことだ。当然、私もそうする」
「よく言うよ、自分のは遠隔操作のロボットなのに」
人間ほどの大きさの、ごついロボットから聞こえるデリックの言葉に、アシュリーは呆れるように言った。
「まあ、俺は最初から本気で行くつもりだ」
重くて低い声を出したのは、黒幕さんだ。
サラリーマンが切るような服装をしている彼は、2メートル程の長身で、彼らの中でも一際目立っている。
彼の目も口もおおっているマスクは、大きく目が書かれてある。
「ミカはどうしたんだ?」
「あの人はあとで来るだって。なんてマイペースなんだろ」
エドナは溜息をした。
「......まあ、あの人がいなくても、私たちがすぐに片付けちゃうって」
彼女は余裕とばかり笑顔を浮かべていた。
そこからは、八重歯が見えている。
「はたして、そう上手くいくのか......」
アシュリーが不安そうに呟いていると彼女は、城の巨大な扉を見上げると、右手を扉につけた。
「さあ、そろそろいくわよ」
彼女はアシュリーたちの方を向いて言う。
エドナの言葉に、彼らは頷いた。
エドナは少し間を開けると、右手で扉を押した。
大きな扉はギギギと、音を出しながら開いていく。
その扉の中は廊下だ。
壁にいくつものろうそくが等間隔に付いてあり、その廊下はかなり長い。
「おお、まさに大魔王の城って感じだ!」
エドナはその雰囲気にテンションが上がっているようだった。
「それじゃあ、入るとしようか」
彼らはその城に足を踏み入れた。
床にはレッドカーペットが敷いてあり、それは彼らを大魔王の居場所へ導いているようだった。
そしてそのまま歩いてみるが、特にドアも階段もなく、ただただ廊下が一直線に伸びているだけだった。
「......なんか、つまらなくなってきた」
エドナは飽きたのか、大きなあくびをしている。
「そろそろなにか来てもおかしくないな......」
「あんだけ大きかったのにあるのは廊下だけか......なんか不自然だな」
そうやって彼らがこの城に廊下に不満をぶつけていると、寡黙だったデリックがしゃべりだした。
「生体反応があるぞ!」
「やっと何か来たか!?」
彼らが身構えていると、天井を破壊してだれかがそこから降りてきた。
「ヒヒヒヒヒ、お前らの命もらったああ!!」
現れたのは、大魔王の手下のエネミーであった。
「デリック、レベルは?」
「ちょいとお待ち」
デリックは、そのエネミーのレベルを診断し始めた。
「......強さはレベル3。上級戦士一人で処理できるエネミーだ」
デリックがレベルを告げた瞬間、アシュリーとエドナは、期待外れとばかりにエネミーに冷たい視線を注ぐ。
「なんだ、ただの雑魚か」
「なんで私たちに挑もうとしたの?」
二人の言葉に、エネミーは憤怒した。
「な、なああんだとおおお!?」
「黒幕さん」
黒幕さんが「わかった」というと、彼の影が急に伸び始めた。
影は、怒りで鼻息を荒くしているエネミーに近づいた。
やがてその影がエネミーを包むと、上から禍々しい黒い物体がその影から出てきた。
「え?」
その影は化け物の口のような形を作りながら、エネミーの周りを囲っていく。
「な、何が――」
エネミーがこの状況を理解しようとする前に、その黒い物体はエネミーを飲み込んでいった。
黒幕さんの能力は、『殺人影』という能力。
この能力は、自分の影を光の有無関係なしに自在に変化させ、自分の影の中に入ったものや生物を飲み込むことができる。
「ナイス!」
エドナは右手でサムズアップをした。
「じゃあ、先へ進むか」
アシュリーがいうと、一行は再びレッドカーペットの上を歩き始めた。
床に残ったのは壊れた天井の瓦礫だけ。
このエネミーが天井を破壊したことや、そしてそのエネミーが黒幕さんに喰われたという証拠は、全て彼の『影』の中に入っている。




