第十三話 大魔王の軍を追い払おう! その2
19区で起こったディフェンサーズと大魔王軍との戦い。
最初こそ大魔王軍有利だったが、ナンバーズが現れたことによって、戦況はディフェンサーズに傾きつつあった。
泰昌の次に現れたのは、魔女が着ているような服装をした二人。
その赤と白のタイル模様をした服は、姉と妹で配色が反転している。
「レミ姉、あたいらも戦う?」
「ええ」
彼女らはNo.15で姉の笠置麗美と、No.16で妹の笠置要の笠置姉妹である。
姉の麗美は、ビームの弾幕を張る魔法を得意としている。
そのビームの量は余りにも多く、敵に攻撃の隙を与えない。
妹の要は、「炎を操る」能力を持っている。
アマツと違うのは、彼は四肢から炎を出すことしかできないのに対し、彼女はその炎を遠距離で操作したり、炎の形状を自由に変化させることもできる。
いわば、アマツの上位互換のようなものである。
「アマツ、あの笠置姉妹、個人の実力ならあのナンバーも妥当だが、あの人たちが本当の力を発揮できるのは、二人が一緒に戦っているときだ」
ジュールがそういうと彼女らは空中に飛び始めた。
「あ、戦闘を始めるんすかね?」
「そのようだ」
「弾幕展開!」
姉の麗美が両手を左右に広げると、その周りに多数の弾が出現した。
直後に彼女はその弾をエネミー達に浴びせた。
弾が地面やエネミーに着弾すると爆発し、辺りは煙に包まれた。
一方の妹要は、右手から炎を出すと、それをやりのような形に作り、固体化させた。
すると彼女は、その煙の中に高速で突っ込んでいった。
姉は依然として弾を撃ち続けている。
「あ、あのひと突っ込んでいった!? あれじゃ弾幕に巻き込まれる!!」
「心配するな。絶対に当たらん。なんでかわからないが......以心伝心というやつか?」
ジュールは髭の生えている顎を触りながら言った。
「浄化浄化、はい浄化~!」
泰昌も周りのエネミーを倒して言ってる。
すると、また別の方向から、ドスンドスンと歩く音がした。
「うわ、またエネミー!?」
「何がエネミーだぶぅ! 失敬だぶぅ!!」
そこに現れたのは、人間とは思えないような大きさをしているデブメガネだった。
走ってきたのか、汗だくで、息切れをしている。
「あ、す、すいません......」
「わかってくれるならいいんだぶぅ......」
その人はハンカチで汗まみれの顔を拭いた。
「あ、No.13の黒山マルオさん!!」
「そうだぶぅ、ぼくちんはマルオだぶぅ。 アイドルのライブの会場から走ってきたぶぅ」
(こ、この人がナンバーズだと!?)
アマツはこのオタクがナンバーズだということに驚いた。
だが、本人の前でそれを表に出すのはまずいと思い、必死に顔をゆがむのを阻止した。
「だけど......遅かったでぶかぁ、もう笠置姉妹と泰昌が片づけてくれそうだぶぅ......」
マルオが姉妹の戦いを眺めてると、煙から、エネミーが数対、出てきた。
「うわ、エネミー!!」
「この......仲間の敵いいい!!」
そういうとエネミーの一体が口を開けて、ビームを撃とうとした。
「そうはさせないぶぅ!!」
彼はそういうと、彼も口を大きく開けた。
(あの人も口からビームを!?)
とアマツは思っていたが、その直後
「ぶごおおおおおおおおおお!!」
と、彼はエネミーを吸い込みだした。
「ぬ、ぬわあああああ!?」
ビームを撃とうとしたエネミーはすぐにマルオの口の中に納まった。
そして、彼はごくんと飲み込んだ。
「の、飲み込んだ......」
アマツはその攻撃に言葉も出なかった。
吸い込むなんて思いもしなかったのである。
マルオはエネミーを飲み込むと、再び口を開けた。
「ま、また吸い込み......?」
とアマツは推測していたが、
「いや、あのマルオさんは、吸い込んだエネミーの能力を少しの間だけ使うことができる。つまりマルオさんは......」
「ぶごおおおおおおおおおお!!」
今度はエネミーがやろうとしていたビームを口から吐き出した。
残りのエネミーはそのビームに巻き込まれた。
そのビームは、麗美の弾幕によって発生した煙を吹き飛ばした。
そしてその吹き飛んだ煙からは、ビームに驚いていたのだろう、目を見開いている要がいた。
「あ、要ちゃん、ごめんだぶぅ!」
「なんだデブか......危ないっての」
要は溜息を吐いた。
「恐らくこれでエネミーは全滅......ん?」
泰昌が言いかけると、また歩く音がした。
「マルオは歩いてないし......またエネミーか?」
すると出てきたのは、全身を鎧でまとった、6メートルほどの人型のエネミーだった。
「我こそは大魔王ペソ......」
そのエネミーは典型的な魔王の声をしていた。
「あ、あれが親玉か......」
アマツはその雰囲気につぶされそうになった。
「君たちは下がっているぶぅ。ここはぼくちん達にまかせるぶぅ!」
「あいつは俺たちが倒す!」
そうして、泰昌、マルオ、笠置麗美と要は大魔王ペソに向かった。
「あたいらがこいつを倒せばっ!!」
「あたし達ディフェンサーズの勝利!!」
「破片も残さず浄化してやる!!」
「鎧ごとすいこんでやるぶぅ!!」
彼らは一斉にペソに突撃していった。
すろと、
「うらあああああああああああ!!」
ペソは叫ぶと、エネルギーが発生し、それは周囲に広がった。
地面がえぐれるほどのエネルギーは、ナンバーズも飛ばした。
「ぶぎいいいいい!?」
マルオは地面に叩きつけられた。
「!?」
笠置姉妹は空中で何とか持ちこたえることができた。
「な、なんだこの威力!?」
泰昌がそういうと、ペソは、携えてた剣を取り出し、彼に向かって振った。
すると、エネルギー波が発生し、泰昌に向かっていった。
泰昌はとっさにバリアを展開したが、すぐに真っ二つに割れ、体に命中し、爆発した。
彼は少し飛ばされ、気絶した。
「な、ナンバーズの一人が一瞬で倒れた......」
アマツはこの状況に絶望した。
ナンバーズが、こんなにも苦戦しているのを見たのは、初めてだった。
こうして、大魔王の登場によって再び戦況が変わり始めようとしてたが......。