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第百三七話 洞窟


 「ほらっ!」


 また一体、エネミーを炎の中に容赦なく包み込み、消し炭にしていく。

 その際の悲鳴が、洞窟のようなつくりの空間に響く。

 

 日が少し経ち、ついに『裁断作戦』が実行に移された。

 いくつかのグループ(単体もいるが)があるのだが、そのうちの一つが、アマツ、アリアス、琳、恭介ら4人のグループ。

 彼ら含めたグループの任務は、『アービター』の完全殲滅。

 抽象的ではあるが、情報が少ない以上これは仕方がないとアマツは考える。

 ただ、No.1のサナ一人だけは別で、アービターのボスの討伐が最優先と具体性があるものとなっている。


 「......にしても、さっきから同じ顔しか見ないの、気味が悪いな」

 「エネミーなんて元々気色が悪いものですよ」

 「え、いやまあそうなんだが......」


 琳からニヤ付きながら「気色が悪い」という言葉が出るのは少しびっくりはしたが、確かにそうではある。

 自分ら人間からみたら、ほとんどのエネミーが異形である。

 いや、そうじゃない。


 「このエネミー達、もしかしてあの召喚されたエネミーかなって......」

 「だとしたら、会議でも言ってた通りね」


 アリアスがインシネレーションを放ちながら俺と琳の会話に入ってくる。

 この組織の最大の特徴......それは戦力の量産。

 それはペソにもクローバーにもない脅威。

 アシュリー曰く自分の家の近くに現れたそうで、ドロドロしたような物体からエネミーが一定間隔で出てくるらしい。

 実際彼の言っていた通り、表面は肌色、あるいは茶色で、形もほとんど似通ったエネミーだ。

  たまに他の形をしたエネミーもいたのだが、でもほとんどがそれらのエネミーであることから、アシュリーの言葉は正しかったと見れる。


 「これは面倒くさそうだな......」

 「あ、アマツ後ろ!」


 琳が大声で自分のことを叫んだのを聞いて急いで振り向くと、その噂をしていた肌色のエネミーが、凶悪な顔をを見せながらこちらに襲い掛かってきていた。

 会話でふっと油断していた中であった。


 「やばっ――!」


 今から炎を出しても間に合わないかも知れない、というくらいに接近していた。

 相手は一回引っかかれただけでも大ケガを負いそうなくらい鋭い爪先を立て、そしてアマツに向けて振り下ろさんとしている。


 (やっぱり無理か!?)


 と思っていたら、次の瞬間にはエネミーの頭部は右に大きくへこむのがほんのちょっと見えた後、その顔の代わりに拳がアマツの視界に入っていた。

 振り向くと、恭介が真剣な顔つきをしていた。

 左を向くとあのエネミーはトマトを潰したような状態になっており、恭介のパンチの勢いそのまますっとんでいって壁に大きく叩きつけられたようだ。


 「恭介さん......」

 「お前らなるべく会話は慎んだ方がいいぞ。数が今回は桁違いに多い、いつか気を取られて死ぬぞ」


 恭介は表情を顔にはあまり出さないタイプだが、彼が真面目にアマツ達を叱っているのは良く分かる。


 「すみません、つい......」


 アマツは当然ながら頭を下げて謝罪する。

 他の二人もアマツに続いて謝る。


 「今回はこの空間の内部も良く分からない状態だ。いつどこに仕掛けがあるかわからないから、いつも以上に警戒する必要があるぞ」

 「はい!」


 アマツは恭介の忠告に対して返事をする。

 それと共にアマツは、今回の作戦は今まででも一番厄介なことになるだろうと確信する。


 ※ ※ ※


 暫くして、少し開けた空間にたどり着いた。

 絶対何かくるだろうとアマツが思っていたら、案の定、いつものエネミーがそこに数体たまっていた。

 なんか見すぎて少しうんざりしてきた頃だが、それと戦闘とは関係ない。


 「よし、今度はちゃんと気を引き締めてな」

 「分かりました」


 恭介の言葉に鼓舞されながら、皆一斉に戦闘態勢を取る。

 一方のエネミー達も、こちらに気づいた途端に大声を上げながらこちらに襲ってこようととした時だった。


 「待てぇぇぇ!!」


 かなり大きい声がこの部屋のさらに奥の通路から響き渡るようにして聞こえる。

 壁の反響もあってかなり威圧的だったので、今まさにドンパチやろうとした、エネミー含めその場全員が思わず硬直する。

 そしてこの声は、前に聞いたものであり、はっとする。


 「まさか――」


 しかし一瞬硬直したはずのエネミーらが、さっきの声に背向くようにして、再びアマツ達に向かって走り出したら、その罰が直後に下った。

 またもや見覚えのある白い物体が、突然、エネミー達の真下の床を突き破って現れると、容赦なく彼らを串刺しにしてしまった。

 断末魔を叫ぶ猶予すら与えなかった。


 「あーあ、だから俺『待て』って言ったんだがな......」


 まるでたった今起こった現象を他人事のように話ながら、靴の音を鳴らしながらゆっくりとこちらに歩いてくる。

 ......やはりそうだった。

 最初からフードはめくれていたから顔は分かった。

 あの時に見た、特に左が傷だらけの顔だった。

 そして今エネミーを突き刺しながらそびえているのは、白鉄。


 「......やっぱりお前か、コーディ......!」

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