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第百三十話 時止めと陰陽師 その2

 メアリーが神社の参道を歩いている時は、すごい静かだった。

 町から少し外れているのもあるが、その周辺には今、人が一人として存在していないのだ。

 それに建物もあちこちで壊れているところから、ここでもエネミーの襲撃があったのだろう。

 これは都合がよかった。

 もしこの戦いを誰かに見られたり、或いは流れ弾が当たったりしても面倒だ。

 これで誰も自分の戦いを邪魔することは無い。


 (都合がいいわ、これで好きなだけあいつを倒せるという訳ね)


 

 見た目の割には時間が長く感じる道を歩いている中で、ようやく本殿までたどり着く。

 瓦屋根の木造で、ちゃんと綱も吊りさげられていている。

 その前で、竹ぼうきで地面を履いている長髪の人物も一緒に目に映り、一目でそれが攻撃の対象だと分かった。


 (あいつが......)


 ディフェンサーズのNO.15、安倍泰昌。

 彼は陰陽師の子孫であるが、その割には気障な性格だという。


 「......少しボロいでしょう、この神社?」


 メアリーの気配を感じ取ったのか、落ち葉の掃き掃除を止めて、後ろ向きのまま語り出す。


 「陰陽師は神道とはそれほど関係ないはずなんだけどねぇ、なんせご先祖様がこの神社の神主をやっていたという良く分からない関係だったからさ」


 そう言うと、泰昌はゆっくりとメアリーの方へ向ける。

 彼は少しにやけたような顔ででメアリーを迎える。


 「やあ......これはまたかわいい子が来たね」


 彼は純粋に歓迎しているのだろうが、メアリーは相手が敵なのだと自分の中で認識しているだけあって、少し気に触れる。


 「安倍泰昌だな?」

 「いかにも、僕がそうだ」

 「お前を殺しに来た」


 グダグダと語るのも面倒臭いので、率直に言う。

 動揺するかと思いきや意外と肝が太く、降ってきた落ち葉を手に取って眺めながら「なるほど......」と冷静に理解しだす。


 「参拝ではなく殺人をするのか......こりゃまた唐突な」


 今から自分の命が取られようとしているのに、初めて顔を合わせたときからのにやけを崩していない。

 これもナンバーズだからこその余裕か。

 しかし気障だというのは本当だったようで、いつの間にかイライラが募り始めていた。


 「お前を倒さなければならない、理由は知らなくてもいい」

 「そうか、こっちは闘った後だから、疲れてるんだけどなぁ......」

 「なら良かった」


 メアリーはそう吐き捨てると、とっさに腕に装備されていたナイフをいくらか抜き出して、泰昌めがけて正確に投げつけた。

 躊躇いは無かった。

 だが、きれいに一直線に飛んで行ったナイフは泰昌が持っていたほうきのブラシに全て受け止められてしまう。


 「うわ、ほんとに唐突」


 泰昌はほうきをポイと捨てると、神社の本殿まで走る。

 それを逃がさまいと次々に投げナイフをビュンビュンと次々に投げるが、それを巧みに避けきると、その本殿の前に立てかけてあった錫杖を掴みとる。


 「さてこっちも行くよ」


 その言葉を発した瞬間、メアリーのそばで、魔法陣が一つ自分の前に現れた。


 (来るか!)


 その場から避けると、予想通りビームを吐き出してきた。

 地面を破壊した音を背に、メアリーは泰昌のもとへ駆けていく。

 泰昌も階段から飛び降りて、メアリ-との接近戦に挑む。

 泰昌先に刃がついた錫杖をメアリーに、メアリーはナイフを泰昌に向けて斬りつけていくが、お互い当たらない。


 「建物にナイフが刺さって傷がついちゃったよ、弁償だね」

 「誰がするか!」


 メアリーは大きく一振り、ナイフを振るが、それを錫杖を受け止められる。


 「足元にご注意」

 「は?」


 何を言ってるのかと下を見下ろすと、そこにはあのビームがあった。

 一瞬驚いたが、ここはバックステップでビームをギリギリ回避する。


 「ぬ......下位とはいえ、伊達にナンバーズしてないわね......」

 「褒めてくれて嬉しいよ、なら、さっそく勝負に出させてもらうよ。『呪術・四面楚歌』」


 彼は札を出して何かの呪文を唱えると、メアリーの右上あたりにまた魔法陣が現れた。

 ただのビーム攻撃じゃないかと思っていると、自分とは違う方向にビームが放たれた。

 いや、これはビームではない、青白い柱だ。


 「何をして......?」


 なぜそんな方向に撃ったのかと思えば、自らの周りで次々と発射音がした。

 周りを見渡すと、自分を取り囲むように光の柱が次々と不規則にたれられていった。


 「な、なにこれ......」

 「見た通り、君の動きを封じているのさ」


 あっというまに身動きが取れなくなってしまった。

 しかもまわりには魔法陣が待ち構えられている。

 これはすこしミスってしまった。


 「さあどうする? これが君の本気かい?」

 「......フッ」


 泰昌に煽り立てられてムカっとさせるが、すぐに笑いをこぼす。

 少し早いが、そろそろあの能力を使う時が来た。


 「もちろん違うわ。ここからよ!」


 そして彼女は言い放つ。


 「『世界凍結ワールドフローズン』」


 その瞬間から、彼女以外のすべての時が、凍りつく。

 当然泰昌も......。

 メアリーは光の柱をのぼって飛び越えると、ベルトからナイフを取る。


 「安倍泰昌......お前の顔が崩れるのが楽しみだわ」


 今まで余裕こいていた泰昌に一発喰らわせてやる。

 そういう意気込みでメアリーは彼に向かって、通常よりも格段に重く感じるナイフを放つ。

 時は止まっているので、彼女が手を放した瞬間にナイフは硬直する。

 ある程度投げ終えると、メアリーはその能力を解除する。


 「苦しみなさい......解凍メルト

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