第百二八話 白い敵 その3
「べ......」
コーディが顔を横に思いっきり回され、歯が数本ふっとんで行くのも見えた。
彼の顔面を、思いっきり誰かの膝が直撃してた。
「今だ......!」
アマツは誰なのかを知る前に、腕に絡みついている白鉄をブチブチと離す。
そして改めて膝蹴りした人物を見てみると、シンプルな白Tシャツであった。
見覚えがある。
「き、恭介さん......!」
「アマツ、傷が深いな。少し休んで回復しておけ」
回復能力があるのをいつの間に知ってたのか、そんなことを言って休息を促される。
アマツは素直にそれを受け入れて、えぐれた腹を押さえながら彼らから少し距離を置く。
コーディが横にのけ反った状態から元に戻る。
歯はいつのまにか生えそろっており、かなり高い回復能力があるようだ。
「お前......門番だな」
「よく分かったな」
「フフフ......ナンバーズにも劣らぬというその実力、見せてみよ」
コーディは傷だらけの顔を少しゆがませると、白コートを広げ、そこからさっきよりも多くの数の白鉄を唐突に発生させる。
だが恭介は初見にも関わらず、それらを弾くなどして冷静に対処する。
さすがという感じであった。
「ほう、この程度の密度ではものともせずか」
コーディがそういってる間に、前へ詰めた恭介が攻撃に出る。
格闘術をコーディに見せるが、彼はなめらかな動きで数回かわした後、白鉄を恭介に当てる。
恭介は腕でガードするが、威力が強かったか、地面を擦りながら後退してしまう。
また距離を離された。
「距離を詰められさえしなければこちらが有利だ、さあどうする?」
コーディはさっきよりも少し細く、しかしさらに増加した白鉄を周りに漂わせる。
(一体どのくらいまで出せるんだ......?)
最初は二本だったのが、細くなったとはいえ10本にまでなっている。
これでは中々近づけないのではないか、と思いながら傍観していたのだが、発砲音と主に出た一つの閃光がそれらをほとんどちぎり去ってしまった。
「恭介さん、加勢します!」
そう大きな声でいったアリアスのビーム、シンシネレージョンであった。
左手が使えないので、右手から出したのか。
「そうかもう一人いたか、厄介なことよ」
そういいながらも表情は表情はほとんど変えず、余裕があることの裏返しにすら聞こえてくる。
根元付近まで取られた白鉄を一旦体内にしまうと、直後にまた出して攻撃していく。
「治れ、早く治れ......」
アマツは焦るような口調で呟く。
損傷部は火が出て治りつつあるが、内側まで傷ついているためかかなり治りが遅い。
その間にこの戦闘を見つめてるだけというのは、かなりもどかしい。
「もっとかかってくるがいい」
いくら白鉄を破壊しようが、再生なりしてもとに戻してしまう。
コーディにも疲れの色が全く見えない。
「恭介さん、キリがありません!!」
「ああ、困ったな......」
どうやら二人も決定打を掴めずに苦しんでいるようである。
アリアスに関しては遠距離攻撃も持っているが、距離があるので白鉄で防がれてしまうのが現実だ。
(よし、もう......)
アマツは思い切ってコーディ元へ突撃することを決めた。
まだ傷は治りきってはいないが、もう大丈夫であろうと思った。
(コーディは二人に夢中になっている、その隙を......!)
まだ少し痛みはするが、もはやどうってことはない。
コーディがアリアスと恭介に気を取られている隙に、一気に彼のもとへ走る。
白鉄が流れてきたが、それをかわし、とうとう彼の背後まで周りこんだ。
まさか全く気付かないとは思わなかったので、高揚感で思わずニヤつく。
アマツは跳びあがると、足を後ろに回す。
「もらった」
「んなっ!?」
丁度タイミングよくコーディが振り向いたところで、炎の蹴りを見舞わせる。
首は恭介みたいにグリンと回転し、よろめいたところをまた腹パンを入れる。
「ブゴォッ!?」
不意打ちは成功だ。
なかなか攻撃に転じれないコーディは、素手で殴りにかかるも、それを受け止めながらまた蹴る。
なかなか爽快であった。
「どうだ、この!!」
「己......!」
だが調子に乗りすぎた。
もう一発パンチしてやろうと思ったら、背中の服が何かに掛けられた。
「え――」
振り向いて、それが白いのだとわかった途端に思いっきり遠心力が体にのしかかってきた。
そのまま地面に叩きつけられ、倒れる。
脳震盪であたまがグラグラする。
「いつの間にここまで......」
というコーディの声の後に、アリアスのビーム砲が鳴る。
やられたのかと思い、視界がブレながらも体を起こしてみると、どうやらそれは外れたらしく、まだ地面の上に立っていた。
「今回はお前らの勝ちだ。あまり長くいると増援を呼ばれて不利になるんでね。ではまた次の機会で......」
白いフードを顔に深くかぶったコーディは、白鉄を一本出すと、建物に絡みつかせて、自らを鳥羽しながら、一気に遠くに行ってしまった。
「はぁ、終わった......」
やっと戦いが終わって、アマツは息を抜く。
頭痛い、腹痛いで、かなり損傷は激しい。
と、自分の前に手が差し伸べられる。
「ほら、ナイスファイト」
アリアスが微笑んでいる。
アマツは少し戸惑いながらもアリアスの手を握ると、彼女に引かれながら立ち上がる。
アマツはちょっと照れっぽくなった。




