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第百九話 鬼人ララ その1

 アイラの殺戮ショーの一方。

 もうすでにミカとララの二人はシェルター内に侵入していた。

 彼女らは二手に分かれてエネミーの掃討にかかる。

 その内の一人、ララは、次々に襲いかかってくるエネミー達を斬りつける。


 「あ、が......」


 ゴツゴツとした、典型的な二足歩行のエネミーは、口を大きく開けたまま悶絶している。

 彼の両肩にはそれぞれ刀が埋まっている。

 その彼の頭上に足をつけ、しゃがみこんでいるのがその彼女である。


 「あはっ」


 ララは可愛らしげに笑うと、エネミーの背中側へと飛び降りる。

 その時に、逆手で持っていた刀の柄をレバーみたいに前へ倒したあと、落下する力を使って押し下ろす。

 刀の切れ味が鋭いのか、エネミーの固そうな外見が見かけ倒しなのか、抵抗感は無くあっさりと斬り込め、すぐに地面に足をつけた。


 「よっ」


 ララがエネミーの腰辺りにまで落ちていた刀を二本同時に引き抜くと、三つ分に切断されかけたエネミーは前にゆっくりと倒れこむ。

 その途中で、噴水が噴き出すような音がした。


 「これで......何体目だっけ? まあいいや、取り敢えず見つけたら倒すだけだし」


 彼女が今までに切り捨てたエネミーは、20体は優に超えるだろう。

 それだけこのシェルターに潜んでいたエネミーの数が多いということだろう。


 「あーあ、なんか手ごたえ無い」


 今までに顔を合わせたエネミーは、全てあっさりと斬られ、倒れて行った。

 さすがにこうなるとこの任務にも嫌気がさしててくる。

 退屈していた中、また一体エネミーを見つける。


 「お」


 通路の前で仁王立ちをしている姿が見える。

 西部劇に出てきそうな帽子と服。

 ならば武器はリボルバーの拳銃かと思えばそうでもなく、刃先が湾曲した、いわゆる青竜刀のような剣を握っている。


 「へっへっへ! 待ちなそこのお前!」


 そういって顔を上げると、緑の肌な上に顔の半分が左半分が骨だけという、奇妙な顔つきをしているのが見て取れる。


 「はい」

 「お前、一体どのくらいの仲間を殺したんだ?」

 「え......」


 急に質問を投げかけられ、真面目に答えだそうとするララ。


 「20体......ぐらいかな?」

 「20体か......へっへっへ、なるほど、じゃあこの俺様、セント様がお前のその不名誉な記録を止めて見せるぜ!」


 セントは自信満々でそう宣言する。


 (エネミー......か、だけど、今までのと雰囲気が違う)


 セントがほかのエネミーとは違うというのを、ララは直感で感じ取っていた。

 だが当然、ここから引く気は微塵もない。

 むしろ、やっと強そうな相手を見つけ、やる気が湧いてきている所だ。


 (少しは相手になってくれそう!)


 彼の力量に期待を寄せつつ、ララはしまったばかりの刀を再び握り、抜刀。


 「じゃあその不名誉な記録更新のために21体目になってよ!」


 彼女は動きずらそうなブーツで地面を蹴ると、風のような速さでセントに急接近する。

 唐突な行動に急いで構えているセントを完全に捉えた。


 「そらっ!」


 彼女は身体をねじられて刀を一振りする。

 しかし刀を振り切ったときには、セントはその場にはいなかった。


 「あらっ」

 「ヘッヘッヘ、お前の攻撃が見えるぜ!」


 セントは彼女の横に移動していた。

 斬れ跡は地面にくっきりと残ったが、肝心のセントにはない。

 セントは顔の右側だけを歪ませ高らかに笑う。


 (まさか、見切ったのか――)


 彼女は動揺しつつも下を向いていた顔を上げると、一寸もしない距離までセントの青竜刀が迫ってきていた。

 行動の隙を突かれ、回避が遅れたララは頬を切りこまれたのを感じた。


 「斬られた!?」


 実際はどうなのかも確かめる間もなくまた斬撃が飛んでくる。

 今度は回避に成功したが、その後も彼の斬撃ラッシュが続き、彼女はそれを凌ぐだけで精一杯だ。

 まさか防戦一方になるとは、思ってもいなかった。


 (速い、それに一撃も重たい、さっきのエネミーとは訳が違う! けど、『能力』はまだ使うべきじゃない......)


 彼女はなんとか反撃の糸口を見つけ出そうとするがなにせ攻撃の手数が多く、セントの刀が残像を出しており、彼の前に展開しているよう壁のように見え正に攻撃するバリアである。


 (駄目だ、このままじゃ腕が――!)


 ララが攻撃を受けとめている腕に限界を感じた矢先である。

 彼の重たい攻撃にとうとう腕が耐えられなくなり、刀の内の一本がセントによって打ち上げられる。


 「しま――!」

 「隙ありだぜい!!」


 さらにそれで驚いた一瞬の間に今度は腹部を横に切り裂かれる。


 「ああっ!!」


 激痛が走り、顔をしかめて悶える。

 その腹から一瞬血が飛び出したのが見える。

 恐らく致命的な傷の深さでは無さそうだが、この怯みが更なる隙を生んでしまう。

 セントはその斬撃の後、間髪いれずララの首元を鷲掴みにする。


 「がっ......!!」


 吐き気と圧迫感を覚え、目が潤んでくる。

 首を掴まれた衝撃でもう片方の刀も落とし、もはや抗う術を失ってしまった。


 「へっへっへ......」


 セントはにやけ笑いを浮かべ、苦しむララの鼻の先に刀を突き付ける。


 「これでもうお前に殺されるエネミーはいなくなるぜ!」


 彼は帽子から覗かせる目をララに睨み付ける。

 それは純粋な怒りの目であった。


 「お前ら人間は、ペソ様を殺したんだ!」

 「ぺ、ペソって......」

 「そうだ、あの大魔王ペソ様だ! 俺様が敵討ちをしたら、天国のペソ様は喜ぶ、絶対!!」

 「だ、だけど倒したのは私じゃない!」

 「うるさい!! 同じ組織だろうが!!」


 セントは怒りを露わにしながら首を絞めている手の力をさらに強める。

 気道を圧迫され、声を出すどころか呼吸することも困難だ。


 「はあ......が......」


 このままでは確実に息絶えてしまう。


 (もう、能力を使うしか、けどあの能力にはリスクが......いや、このまま死ぬよりかは......!)


 ララはこのセントとの闘いて、今までその能力を渋ってきた。

 発揮している最中のリスクが大きいからである。

 だが、ここまで追い込まれた以上、それを発揮せざるを得ない。

 彼女は決心すると、心の中でその禁忌の呪文を唱える。


 『鬼人化きじんか

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