第九話 狐耳はいいぞ。 その2
「はぁ、はぁ、げ、限界だぁ......」
アマツはフリッズを背負ってT市の隣のD市に来ていた。
「ファイトファイト~、途中までタクシーで移動したんだからね、戦士ならこれくらい楽勝でしょ?」
「く......戦士は皆が皆力が強いわけじゃ無いんだぞ!」
アマツの心臓は苦しくなるぐらい心拍数が上昇していた。
傘を打ちつけるような雨は、アマツ達が外を出たときには止んでいた。
その雨がたまった道を、アマツは息を切らしながらエネミーの方に向かっている。
「こ、こんなんじゃ、戦いなんて出来ねぇ......」
アマツが弱音を吐いていると、エネミーと思われる生物が現れた。
「ん、あれがエネミー?」
「た、多分あれだな......」
アマツはゼェゼェと呼吸しながらいった。
そのエネミーは、蛇のようで、頭が5つぐらいに分かれている。
そのうちの一頭は、誰かをくわえている。
あれは......戦士だろうか。
「やべっ」
彼は、休む間も無くエネミーに突っ走り、足から炎を出し、エネミーに蹴りを入れた。
エネミーは悲鳴をあげると、くわえていた人を離した。
「が、がはっ!」
その人は口から血を吐き出した。
「おい、大丈夫か!?」
「あ、ああ、助かった......」
男はぐったりした様子で言った。
「お前も戦士なのか?」
「そうだ......お、俺はもう戦えねぇ、が、頑張ってくれ......」
「わ、分かった!」
と、アマツは立ち上がった。
「さあかかってこい!!」
アマツが威勢よく言うと、その言葉が分かったのか、直後にエネミーが襲ってきた。
エネミーの5つの頭が一斉に彼に突撃してきた。
アマツはそれをファイアーウォールで防御した。
エネミーの頭は彼によって築かれた炎の壁によって弾かれると、今度は後ろに回り込んできた。
アマツはそれも防ぐ。
そしてアマツは横に振り向くと、目を輝かせて応援しているフリッズが目に入った。
「頑張れ~♡」
その美声がアマツの耳を触った。
「......あいつに恥ずかしい姿見せて堪るか!」
奮起したアマツは、エネミーの頭に向かって火炎を放射した。
5つの頭のうちの2つは巻き込まれたが他の3つはそれを回避し、再び彼に向かっていった。
「くそっ!」
アマツは自分の周りに炎の壁を築いた。
エネミーは止めること無く炎の壁に頭突きをしていく。
時間が経つにつれ、アマツは疲労が蓄積され、この状態を維持する事が難しくなっていった。
「く、このままじゃ......」
アマツは歯を食い縛りながら炎の壁を保っているが、もう持ちそうに無い。
一方のエネミーは、疲れる様子はなく、隙を見せず何度も頭を打ち付けている。
そして彼は、とうとう壁の厚さが薄れていくのを感じた。
「も、もう......」
と、その時、
「ギャアアアアアアアアア!!」
と、エネミーの悲鳴が聞こえた。
同時に、壁に対する頭突きも収まった。
アマツがファイアーウォールをやめ、エネミーの様子を見ると、5つの頭のうちの3つが血を出しながら、下に垂れている。
「え、え? な、何が......」
アマツはなぜエネミーが苦しんでるのか理解出来なかった。
「ず、頭突きのしすぎで気を失ったのか......? いや、いまはそんなこと考えている暇はない! これがチャンスだっ!!」
彼は、すぐさま炎を手に出した。
「死ねええええ!!」
アマツが叫んで、ファースト・ファイアを撃ち込んだ。
エネミーの残り2つの頭もその激しく燃え盛る炎の前になすすべが無かった。
「はぁ~危機一髪だったな......」
「キャー、すごーい!」
フリッズが拍手をした。
「へぇ~、私を背負って息切れしたときは先が思いやられたけど、さすがディフェンサーズね!」
「いやいや、それほどでも......」
アマツは後頭部を掻いた。
「私、満足したわ。じゃ、もう家に帰るね」
「あ、もう? フードは?」
「ああ、もう面倒臭いからあげる」
(この人、以外とずぼら......?)
「そうか......じゃあな」
「うん! じゃあね!」
フリッズは満面の笑みを見せると、エネミーの死体がある所へ去っていった。
「......あ、この人気絶してる! 早く救急車を......!」
※ ※ ※
(あれが、赤城アマツ、か......)
と、死んだ筈のエネミーが、彼女を襲った。
まだ頭がいつ生き残っていたのだ。
「あ、知ってるわよ?」
と、彼女が言うと、地面から木の根の様なものが飛び出してきた。
その根は、そのエネミーの頭を貫いた。
そしてその根は、すぐさま引っ込んでいった。
「エネミーが死んでるかどうか分からないところ、まだまだひよっこなのねぇ......」
彼女は溜め息をついた。
「......ま、私の手助けがあったとはいえ、レベル3を単独で倒すとはね.....いや、4はあったかもね......」
彼女は微笑んだ。
「今後の活躍、楽しみにしてるわよ、ア・マ・ツ・君♡」




