69.道中の出会い 4
「ふぅ……」
何とか街に辿り着いて男たちを引き渡す。本当に大変だった。
やっぱり相手を殺したくない、と思うとこういうことに慣れていかなければならないのだろう。必要であれば、誰かを殺すことは仕方がないことだ。それでも、俺が殺さずに対応出来るだけの力を身に付ければどうにかすることが出来るのだ。
……寄った街は、元々寄る予定のなかった場所である。想定外の出来事が起こるとこうやって寄り道をしなければならなくなるから少し面倒だ。
とはいえ、仕方がない話である。世の中には選択をしなければならない場面が多々存在する。今回もそうだ。
殺しておいていくか、連れて行って引き渡すか、それかそのまま放っておくか。
……こんな凶悪犯たちをそのままみすみす逃がすのは流石に嫌だった。それに無残な死体になると分かっておきながら放っておくのもなんだかモヤモヤする。俺は日本で暮らしていたからこそ、余計になんだろう……そういうの苦手だ。もう少し割り切れていれば、この世界で生きやすいだろうけれど俺はこういう人間なのだ。
「サリエスさん、ありがとう」
「別にお礼は要らないわよ。ただ余裕のない時には、こんなことは出来ないから覚悟はしておくこと」
「うん。それはそうする」
そう、あくまで今は余裕があったからこうして男たちを引き渡すことが出来た。でもそうじゃなければ、放っておかなければならなかった。
ああいう状況に陥った時に選ばなければならないことが、心苦しい気持ちになる。ただ俺はこの世界で旅をしていくのならば、危険な目には幾らでも合う可能性があった。
街の人々の中には、俺達にならず者達を処分してほしかったといった態度の者も居なくはなかった。生きたまま引き渡されるよりも、命を奪ってもらった方が楽だったのだろう。後々の対応を考えると確かにそうかもしれない。
というか俺達が引き渡した後に、彼らが更生するかどうかも不明なわけだし。
……本当に地球に居た頃よりも、この世界って理不尽で、危険と隣り合わせだ。ちょっとしたきっかけで命の危機に陥ることも当然あった。そのことを思うと、急に恐怖心が湧いてきたりもする。
とはいえ、幾らこの世界に対する恐怖を抱いたところで、元の世界に戻れるわけでは一切ない。だから、そのあたりは割り切って生きて行くしかないのだ。
――もし、危険な目に遭ったら。魔物が現れたら。
そういうことばかり考えていたら正直生きて行けない。この世界は地球よりはずっと危険でどうしようもない世界であるというのは受け入れて生きていくしかないのだ。
俺はそんなことをつらつら考えながら、サリエスさんと共に宿へと向かった。二部屋取って、部屋にそれからしばらく籠った。
だってなんというか、やっぱりああいう連中と遭遇すると気が滅入る。生きていれば良いことばかりじゃないことは分かっているけれど、旅を続けていればそれだけ……危険な目に遭うことって当然ある。何より知り合いの女性――サリエスさんのような人が大変な目に遭う可能性も高い。サリエスさんは戦う力があって、対処が出来たから問題なかったけれど……。そうじゃなかったらどうなっていたんだろうか。
考えるだけでぞっとする。
この世界にきて俺は人を殺した経験もあるし、人と敵対して戦ったこともある。ただ女性が襲われたりするっていうのは実際に中々見ない。……俺がそれらに対して全て対処できるだけの力を手に入れられたらいいのだろうか。
相手を殺さずに済むためには、こちらが圧倒的に強くあるべきなんだよな。おそらく。
なんだろう、もし自分や同行者とかに襲い掛かってくる人が居るなら、こちらの采配でどうにかしたいな。処罰するにしても、そうじゃないにしても……。そういう風に出来るのが一番いい。ただあれなんだよな、それってただの冒険者が出来ることでもなんでもない。
そういうことを決められる立場になるのは、まず現実的ではない。ただ……今回は良かったけれど、身近な人に何かあったら……俺はどうするだろう?
そう考えると、なんというか、やっぱり強くあったほうがいいんだろうと改めて思う。
敵対している相手の命を奪うか否か。それも十分に考えなければならない。俺が軽い考えで、捕まえた人が後から復讐に来るとか、そういうこともあり得る。
些細なことで、人から命を狙われたりもするだろう。
やっぱり人と人との関わり合いって難しいな。しばらく部屋の中で籠っていると、流石にお腹がすいたので宿の食堂へと向かって食事を摂った。サリエスさんの姿はない。
サリエスさんは宿から出て街を見て回ったりしているのかもしれない。俺と違ってサリエスさんはその辺、旅慣れしているな……。




