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8.街

 俺たちは異世界の街へと連れてきてもらった。ここが異世界だってことはわかっていたけれど、街を見ると一層そのことが実感できる。地球では見たことがない町並みが確かにそこにある。

 文化的に中世のヨーロッパのような場所なのだろうか? そのあたりはもう少しここで生活してみないとわからない。

 それにしてもあの騎士たちは俺たちをきちんと街に連れてきてくれて、「怪しい」と騒ぎ立てる門番たちに、「これは渡り人だ」ときちんと説明してくれた。それもあって俺たちは街の中に入ることができた。

 身分証みたいなものがあるらしく、それも発行してくれるらしい。とはいえ、騎士たちに何かしらの思惑がないとは限らない。寧ろあるだろうとさえ思う。

 俺たちは宿に連れてきてもらった。その泊まるお金も払ってくれた。宿のおかみさんは突然の来客に驚いていたものの、朗らかな笑みを浮かべて俺たちを受け入れてくれた。

 で、渡り人についての説明を聞くことになったわけだが、41人全員に説明するのもということで、代表して竜崎グループと三森先生が話を聞いてくることになった。そのことに皆異論はなく、俺たちは宿にいた。

 宿の部屋割りは男女でわけられている。一部屋に3,4人。宿を占拠しているようでちょっと申し訳ない。

 ちなみに俺と同じ部屋なのは、班でも同じの中谷と、そして探索班に所属していた大鳥学だった。大鳥は見た目的に不良のような外見で周りに敬遠されるがちなところもあるが、悪いやつではないとクラスメイトは誰でも知っている。

 そんな大鳥のユニークスキルは《拳強化》というものでまぁ、その名のとおり拳を強化するスキルらしい。スキル使って殴ると凄まじい威力を発揮するという。そのあたりは、大鳥が地球にいた頃から拳で喧嘩していたりするのも関係あるのかもしれない。

「これから、俺たちどうなるんだろうなぁ」

 部屋の中で中谷は不安そうに呟いた。

 クラスメイト全員で転移をし、周りに知った顔が沢山いるのは救いであるが、ここが自分たちが生きてきた世界とは違う異世界であるというのは確かな事実である。それに不安を覚えるのも無理はない。

 俺も少なからず不安はある。

 渡り人というのが、どういう存在なのかは明確にはわからない。

 ただ異世界から迷い込んだ人間をあらわす言葉なのか、もしくはそれ以外にも意味があるのか。それに俺たちは全員ユニークスキルと呼ばれる特別な力を持っている。

 そのことは異世界の現地の人たちにとってどのように受け止められているのか。そしてユニークスキルと呼ばれるほどのものなので、俺たちは特別な存在ということになる。利用される可能性もある。

「わからん。が、騎士たちが良い人間であることを願うほかないだろう」

 不安そうな中谷に、そういったのは大鳥である。

 考えても仕方がないというのが正直な話で、俺たちは竜崎たちが戻ってくるのをとりあえず待っていた。



 しばらくして竜崎たちは戻ってきた。




 41人全員を集められるような場所などもないので、部屋ごとに竜崎たちが説明をして回ってくれた。

 俺の部屋にやってきたのは、西園寺である。

「まず、渡り人とは――」

 最初に切り出されたのはそれだ。渡り人とは、異世界からの客人をさすらしい。この世界結構異世界人が迷い込んできた記録があるという。

 最も一斉に41人もやってくるというのは珍しいらしい。そして渡り人は総じてユニークスキルと呼ばれる特別な力を持つという。その力を持ってして歴史に名を残す渡り人は数多くいるだとか。

 で、重要な点がひとつあった。それは渡り人の寿命は長いということ。

「……寿命が長い?」

「ああ。どうも渡り人というのは、元の世界で生きているよりも寿命が長くなるらしい。大体、元の寿命の3,4倍になるという話だ。もちろん、それまで生きていられたらという話だが」

 要するに俺たちは数百年生きる存在になってしまったかもしれないらしい。実感はわかない。

「この国、《ジンク》に拾われて良かったといわれた。どうも、国の中には渡り人を無理やり国力とする国も多いらしい」

「この国は大丈夫なのか?」

「渡り人を利用することを目標とする派閥もあるらしいが、この国の権力者の中に百年ほど前にこの世界にやってきた渡り人がいるらしい。それもあって渡り人への対応がいいという話だ」

 そりゃあ、寿命が長いのならばそういう渡り人もいるだろう。西園寺の話では、俺たちは自由にしていていいらしい。最も国に仕えてくれるなら仕えてほしいとも言われたらしいが。あと、しばらくの間の宿代は払ってくれるらしいが、自分で稼げるようになるまでという話らしく(それも当然であるが)、俺たちの当面の目標としては仕事を探すことだということだ。




 異世界ではじめて就職活動をすることになるとは夢にも思わなかったが、生きていくためには仕方がない。

 早速、どのようにして生活していくかじっくり考えるためにこの世界について自分なりに学ぶことにした。




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