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66.道中の出会い 1

 俺とサリエスさんは、旅を続けている。

 行きたい場所に、行きたいように移動する俺たち。

 俺とサリエスさんは、相変わらず互いのことを話すことなどせず、自分たちがやりたいように過ごしている。

 こういう関係性だからこそ、旅がしやすい。

 俺もサリエスさんと初めて出会った時より、冒険者らしく、この世界に慣れてきたと思う。

 そういえば、クラスメイトたちとは全く遭遇していないけれど、皆元気にしているだろうかとふと思った。騎士として残った者が多いから、その国に戻ればまた会えそうな気もするけれど。

 でも幾ら元クラスメイトでも、もう道が別れてしまっているわけだから諍いなども起きたりしてしまうのだろうか。生き方が違えば、どんな風に考え方が変わっているのかもわからないのだから。

 俺はもし、元クラスメイトたちと遭遇した場合――、敵対していた時にどう動けるだろうか。前々からの知り合いだからこそ、躊躇いの気持ちが出るだろうか。そういうことを考えながら、今の自分の事を考える。

 なんだかんだきっとこの異世界で色んな経験をした俺は恐らく彼らと敵対した時に殺すことも出来る気もする。なるべくそういうことはしたくないとは思うけれども、そう望んだところでどうしようもない時はどうしようもないから。

「ヒューガ、何か考え事?」

「……もし、昔の知り合いに出会って、敵対関係になったらどうしようかと考えているんだ」

「そういう可能性があるの?」

「ありそうだから、今の内から考えておきたいなと思っていて」

「最悪の可能性を今のうちから考えておくことは良いことだわ。いつ、どのタイミングでそういうことが起こるか分からないのだから」

「それもそうだな。……なんかもしサリエスさんが敵になったらやばそうだなって今思った」

「私はヒューガに負けるほど弱くないわ。でもヒューガは私と敢えて敵対するほど愚かな真似はしないでしょう?」

「それはそうだよ。自分が絶対に勝てないであろう相手に、そういう風に敢えて敵対なんてするはずがない」

 サリエスさんが俺の許せないことをするなら――とかそういうことを考えても、やっぱり俺はそういう時に立ち向かわないと思う。少年漫画とかだと、そういう相手に立ち向かって能力が覚醒とかありそうだけど……俺は正直言ってそういうのはほぼないと思う。

 そういうわけで俺は多分、そういう状態になっても大人しくしていると思う。

 力をつけたら立ち向かうかもしれないけれど、そのままな気もする。

「ヒューガは年の割にはそのあたりが冷静だものね。だから多分、貴方は昔の知り合いと敵対してもなんだかんだ冷静に対応すると思うわよ」

 ――そういう何気ないサリエスさんの言葉を俺は嬉しいと思っている。サリエスさんとの距離が縮まらないでいいと思っているけれど、こうやって認められているような言葉をかけられるとやっぱり嬉しい。

 俺もこの異世界で、少しずつ変わって来ていて――この世界で命を失うまで生きていくことを決めた俺はきっとそういうことも出来るのかもしれないと思った。

「サリエスさんは、昔の知り合いと敵対関係になった時はどうしているんだ?」

「私の前に立ちはだかるなら誰であろうとも、どうにかするわ。私は自由である事が好きだもの」

 サリエスさんは、基本的に優しい。周りのことを思いやる気持ちもあって、俺のことも放っておけないって手を伸ばして――だけどやっぱりこの世界を一人で旅しているだけあってとても強い。

 優しそうに見えるだけれども、それだけじゃないのがサリエスさんだと思う。

 俺もここで生きていくのならば――、そういう風になりたいなとさえ思う。恥ずかしいから口にはしないけれど、いつかサリエスさんみたいに一人で生きていける強さを持てたらきっと俺の未来は明るくなるだろうと思った。

 サリエスさんとそういう会話をしながら歩いている中で、冒険者パーティーと遭遇した。

 それは冒険者のパーティーなのだろう。全員が武装している。中には魔法を使う者もいるみたいで、バランスがよさそうなパーティーだった。俺とサリエスさんが二人で冒険しているのを聞いて、彼らは驚いていた。

 ……俺はサリエスさんっていう存在に出会えたから、二人で冒険が出来ている。でも一般的な冒険者パーティーはもっと人数が多いものだ。俺がこの世界で冒険者として生活していて、確認できている冒険者たちは大体5,6人が多い。あとはもっと大きな纏まりになっている冒険者だっている。

 だから俺とサリエスさんみたいな二人組って結構珍しいのだ。

 その冒険者パーティーとは行き先がしばらく一緒だったので、少しだけ一緒に行動することになった。

 出会ったばかりの存在なので信頼が出来るかどうかが分からないと俺は思ったのだけど、サリエスさんは「これも良い経験よ」と笑っていた。


 多分、サリエスさんは例えばこの冒険者たちがこちらに牙をむいてもどうにかできるだけの力はあるのだろう。

 俺も何かあった時のことを考えて気を引き締めて接しよう。



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