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64.山間部の街 4

 誰もが加工を出来ないと言う魔物の加工に取り組む。

 しかし当然失敗ばかりだ。何度も何度もその入手もしにくい素材を手に入れるために行動したりしているうちに、レベルも少しずつ上がっていく。

 こういう誰も加工出来ないものを加工したいと強い思いを抱いている俺のことをサリエスさんは笑いながら見ていた。

「ヒューガは、やっぱり職人気質よね。冒険者というより職人の方があってそうだわ」

 そんな風に言ってもらえると何だか嬉しかった。

 冒険者はあくまで、俺がこの世界で生きていくための術を身に着けるための手段でしかない。最終的には、そういう道に俺は進みたい。

「諦めが悪い所も、いい事だと思うわ。そういう何かにこだわる事は良いことだもの」

「サリエスさん、付き合わせてごめん」

「ふふ、いいのよ。あの魔物が本当に加工を出来ると言うのならばそれは面白いことだもの。ヒューガ本当に最初から芯の所がぶれないというか……そういう所は良いと思うわよ。そういう芯の強さがあれば、貴方はきっとどうにでもなれるわ。貴方は最初から冒険者はあくまで過程で、最終的には職人になりたいって言ってたものね」

 サリエスさんはそう言いながら優しい笑みを俺に向けている。

 サリエスが俺のことを評価してくれること、そして俺が最初に出会った時に告げた言葉を覚えていてくれたこと――それが嬉しかった。

 ただ結局その魔物の加工は難しくて、上手くいかなかった。そのため、いつでも加工出来る状況で素材を保存しておいて、もっと俺が技術を磨いてから、また挑戦してみることにした。今は出来なくても、いつかはきっと出来るようになるはず――と俺は信じている。

 《土操手》を使ってレベルを上げることもどんどん進めていった。あの加工しにくい魔物の素材以外でも魔法具店で、魔法具作成を進めたりもする。サリエスさんがフォローしてくれているのもあって、少しずつ俺も出来ることが増え、自分がどのように生きていくか固まってきて行っている気がする。とはいえ、俺はまだまだ弱くて、この世界で生きていくのは大変だけれども。

 そうやって過ごしているうちに、冬がやってきた。

 一面は真っ白で、雪かきをする人々が見られる。この辺りの建物は、屋根の所が斜めになっていて、雪が自然に落ちやすくはなっている。でもどんどん積もるようだ。魔法具で雪かきも楽になっているらしいけれども、それでもこういう場所での暮らしは中々大変そうだ。

 雪が降り積もっているというのもあり、俺とサリエスさんは、冬が過ぎるまではこの街に留まることになった。

 俺は地球でも北国には住んでいなかったし、異世界にやってきてもこういう山間部で冬を過ごすのは初めてである。そういうわけで俺は柄にもなくワクワクした気持ちになっていた。

 この真っ白な雪景色は、こういう風に異世界に来なければ見れなかった景色だろう。そういう景色を俺はこの異世界で沢山見ていくのだと思う。知らない景色に、知らない経験――この世界は、俺に沢山のことを教えてくれる。

 雪が沢山降るからこその、生活。冒険者たちもこういう時期は少し活動が短縮するものらしい。俺はサリエスさんに連れられて雪山で魔物狩りも行った。サリエスさんがいなかったら俺は冬にそんなことは出来なかっただろう。

 雪山を歩くのがおぼつかなくて思わずこけそうになったり、雪崩が起きて巻き込まれそうになったり――死んでしまうのではないかという思いを経験して怖かった。だけれど冷静に対処して、どうにかできた。

 やっぱり自然災害というのは恐ろしいものだと改めて実感した。この異世界では、死が近い。冒険者として活動するなら自然災害に遭遇する確率も高いし。でも自分のスキルを磨いていけば、どうにか対応していくことも出来るだろう。

 そういうスキルを磨いていけばなんだって出来るという可能性があることがこの異世界は凄いと思う。

 冬の山では、見た事のない魔物が沢山いた。冬の間にだけ出現する魔物。春から秋はどのように過ごしているかもわからないような魔物が、冬には出てきたりするのだ。自然の神秘というか、不思議な世界だと思う。あとこの時期は今まで見ていた魔物が冬眠していたりもするみたいだ。

 冬だからこそ手に入る魔物の素材や、植物の素材などを集めて、今後の魔法具制作に役立てることが出来そうで楽しみで仕方がない。

 その時の、その場所だからこそ手に入る素材が世の中には沢山ある。こういうのも常時手に入るように出来た方がいい。将来的にのんびりモノづくりをしながら遠隔で素材とか手に入るように出来たら一番いいと思った。……まぁ、そういうのは流石に色々難しいかもだけど、なるべくそういうのを目指したい。

 この世界って遠隔で情報を見たり、取り寄せってスキル使えば出来たりするんだろうか。サリエスさんに軽く聞いてみたら、「聞いたことないわね。それが出来れば世界も変わるわ」なんて言われた。



 

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