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59.湖のある街を後にする

「ヒューガ、心配したじゃない」

「ごめん、サリエスさん」

 俺が少女に連れられて街に戻った時、サリエスさんに心配そうな顔をされてしまった。心配させてしまった事に悪いことをしてしまったと反省する。

 俺とサリエスさんの中には、ただの冒険者仲間という絆しかない。だけど、俺とサリエスさんは互いに信頼関係が築けているわけでもないし、何でも話せるような関係というわけでもない。だけれど、俺達は互いに仲間としての意識はあるのだ。

 ……俺だって、サリエスさんに何かあったら心配になる。そういう気持ちをサリエスさんに俺は与えてしまったのだ。そのことをより一層実感した。

 幾ら俺があまり人と関わらずに一人で生きて行こうとしていても、誰かと親しくならなかったとしてもそれでも人は一人では生きていけない。俺はサリエスさんの善意で冒険者としてパーティーを組んでもらっているのだ。

「サリエスさん、俺、もっと考えて行動する。同じパーティーメンバーなんだからもっと考える」

「ええ。そうしてちょうだい。何も私は全ての行動を制限しようとは思っていないわ。ただ今回はよくても、世の中には手を出したら死が待っているようなことも沢山あるわ。私も若い頃はそういう無茶をしたわ。でも折角一緒に冒険しているんだから出来たら死んでほしくないもの」

 ――サリエスさんは心から俺のことを心配してくれているのだ。自分のことを語らずにサリエスさんのことも知ろうとしなくて、あまり歩み寄ろうとしてこない俺のことを。

 そのことが心にじんわりときた。やっぱり何だかんだ心配されると嬉しいものだ。

 サリエスさんはエルフで、見た目よりも年齢を重ねている。そういうサリエスさんの言葉は深みがあった。

 俺はサリエスさんにこの湖の秘密は漏らしていない。あの少女が外に漏らさないようにと伝えていたから、そのことを説明したらサリエスさんは納得してそれ以上聞かなかったのだ。

 聞くところは聞いて、聞かない所は聞かない。そういう距離感が心地よかった。



 俺達は湖の謎も分かったわけで、このまま次の場所を目指すことにした。



「ヒューガはどこにいきたい?」

「俺は何処でもいってみたい。行ったことがない場所ばかりだから……。サリエスさんはどこか行きたいところある?」

「私もどこでもいいけど。そうね、この周りにどんな街があるか調べましょうか。私もこのあたりは久しぶりだから沢山変わっているもの」

 そういうわけで、俺とサリエスさんは次にどの町に行ってみようかと、情報収集をすることにした。

 サリエスさんは何処に行きたいかというのはないらしい。でも俺の意見ばかり言うのもどうかと思うので、サリエスさんにとっても行きたいと思える場所に出来れば行きたいなと思う。

 そう考えて俺は情報収集をしながら、近くにある街について調べて行った。

 この湖のある街は、いくつかの街に向かう事が出来る、交通の便のよい街である。

 その候補は三つほどある。このまま海に面した港町に向かうか、山間部に位置する街に向かうか、それとも冒険者が多くいるという森林に面している街か。その途中に幾つかの村や小さな集落と言ったものは存在するらしい。

 冒険者として活動するのならば、大きな街へ行った方がいいが……道中も考えて何処が良いだろうか。

「サリエスさん、俺はどこも色んな経験が出来ていいなとは思うのだけど、どこの方がいいかな?」

「どちらでもいいわね。ただそうね……。以前行ったことある街のその後も気になるから……」

 とサリエスさんは、山間部に位置する街の名を出した。

 俺は折角だからサリエスさんが昔行ったことがあるその街に行ってみたいと口にした。

 今いる街の湖の秘密などを知って、まだまだこの世界には知らないことが沢山ある。地球からは考えられないようなことが沢山待っている。そのことにどこか興奮する。

 いつかもっとたくさんの魔法具を作れるようになった時――、この世界は沢山の希望と可能性を与えてくれるだろう。

 不思議な物質や素材が沢山あって、それを組み合わせることによってさまざまなものを生み出すことが出来る。

 ――もっとたくさんの事を知って、いつか冒険者をやめて引きこもって、物作りをするときの糧にしたいから。

 ――またこの街を訪れるか、それとももう二度とこの街を訪れることがないのか。それはその時になってみないと分からない。だからこそ、最後に俺はこの街の沢山の場所を見て回った。

 最終日に見てまわっただけでも、新しい発見もあった。やはり全部見たつもりでもまだまだ分からないことがあるのだなとやはり面白いと思った。



 そんな気持ちを考えながら俺とサリエスさんは、その街を後にするのだった。



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