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56.湖のある街 4

 湖について調べると決めて湖のことを調べてから、より一層この湖と街で暮らす人々の関係が不思議な関係だと思える。

 落ちたら命を落とすことは確定しているけれど、落ちなければ問題がない。……湖に住んでいる魔物はどうして落ちなければ人の事を襲わないのか。そういう部分も不思議だとしかいいようがないと思うし。

 図書館で調べている情報の中でも詳しく書いてあるものは少ない。寧ろ詳しく書いてあるものがこれだけ少ないというのは、逆に不自然だと思う。

 昔からこの湖は存在していたのだというのは分かるけれど、何故、此処に居を構えたかなどは一切書かれていないというか、そういう部分が不自然だし……、敢えてこの湖の伝承を抹消しようとしているというか、そういう部分があるように見える。

「……敢えて隠しているってことは、知ったら大変なことになりそうね。私も少し聞き込みをしてみたけれど何も語らなかったわ。ただ、あの湖は危険で、落ちてしまったら大変なことになるというのだけ伝えられているけれど……。あとはたまに大きな影を見ることがあるっては一人だけ言っていたわ」

「大きな影?」

「そう何か見ることがあるって言ってたわ」

 宿に戻って、全く情報を集められなかった俺と違って、サリエスさんはそういう話を聞いてきたらしい。大きな影というのは何なのだろうか。

 本当にあの湖は不思議で、俺はあの湖について知りたくて仕方がない。その願望の元、俺は調べて回った。

 サリエスさんが言っている大きな影というのが、この湖の謎を探る大きな手掛かりとなるのだろうか――。そんな予感が俺はしていた。

 俺はそんな予感を感じながら、必死に情報を集めて行った。——それでも情報は中々集まらなくて、何とも言えない気持ちになってしまう。焦りそうにはなるけれど、焦ったところでどうにもならないというのは分かるのでなんとか自分の気持ちを落ち着かせる。

 それにしても湖の秘密なんて放っておけばいいのに、何で俺はこんなに興味を抱いて、湖のことを知りたいと望んでいるのか。自分の気持ちも分からないが、それでもやっぱり知りたいのだ。


 そうやって動いていたら、一人の女性が近づいてきた。





 その女性は俺がこの街で湖について調べていることを知っていたらしい。あれだけ色々聞き込みをしたり、本を読んだりしていたのでこの街の中でも俺が湖を調べていることは少し広まっていたらしい。

 そのかわいらしい少女はこの街に根付いて長い一族の生まれらしい。ずっとこの街で育ち続けた少女、サザは外からやってきて湖に興味を抱いている俺に興味を抱いているらしい。

「湖のことを知りたいのでしょ? 一緒に話しましょう」

 などと言われて俺は警戒心を抱いた。

 湖のことを知っている人がいなかった中で、急に湖のことをよく知る人が近づいてきたのは都合が良さすぎる。

 そのため俺は少女に大人しくついて行くことはしなかった。少女は俺についてきてほしいと言っていたが、それを断った。

 その後、サリエスさんにその報告をしたら、「それが正解ね」と言っていた。困っている時に近づいてくる人の中には、善人も居ればこちらをだまそうとしてくる人もいる。

 ああ、でもそう考えればサリエスさんが俺をだまそうとか思っていなくて良かったなと思う。もしサリエスさんが悪い人間だったのならば――俺の異世界生活は詰んでいたことだろう。これでサリエスさんがこれだけ優しくしてくれていても、実際は俺をだまそうとしているのかもしれないけれど――、それだったらサリエスさんを信じた俺の見る目がないという話になるだろう。

「――ヒューガ、本当に気をつけなさいね。そういう人が近づいてきたということは、それだけ危険な目に遭う可能性があるのだから」

「ああ。分かっている」

 サリエスさんの警告に俺は頷いた。

 危険な目に遭う可能性ももちろんあるから、あまり人気のない場所にいかないようにしたりといった工夫はする予定だ。サリエスさんにはもうあきらめて次の街にいく? とも聞かれたが、俺はもう少し調べたいと答えた。

 サリエスさんもこの街のことは気に入っているようで、滞在する分には問題がないらしい。

 サリエスさんから警告を受けながらも、また俺は情報収集を開始する。

 見つかった情報は限られている。それでも少しずつ考察していくことは出来る。あの湖の存在を街の人々が疑問に思わないのは、それが当たり前だとされているから。それでいてあの湖には魔物が多く住んでいるが、落ちることがなければ襲わないのは――なにかしらの契約や誓約でもあるのだろうかとか、そんな妄想をしてしまう。きっとサリエスさんがいっていたあの大きな影が関係しているのではないかと思うが――。

 そんなこと考えながら人がそれなりにいる食事処で食事をしていたら、急に眠気が襲ってきた。




 そして気づけば俺は意識を失うのだった。




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