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53.湖のある街 1

「凄い」

 思わず口からそんな言葉が漏れてしまう。

 たどり着いた街では、街の中心部に巨大な湖がある。俺はその湖の傍に立っている。

 湖の傍に近づいて思わず湖を覗き込んだら、「落ちたら危ないぞ」と現地の人に声をかけられた。何でもこの湖に落ちてそのまま命を落とす人も多くいるらしい。

 小さなボートで湖の上を移動している人々も見える。生物が中にいるのは分かるが、釣りなどをしている人はいない。湖の中には多くの魚のような魔物も見える。危険性の高い魔物は少ないという話だ。ただ、船の上に居る分には大人しいが、落ちたら餌と認識してきて食べにかかるような危険な魔物もいるらしい。落ちるまでは大人しいって大分良心的な魔物だと思う。ちょっとどういう魔物がいるのか気になるけれども下手にのぞき込んだりすると大変なことになりそうだ。上から網で小さな魔物を取ったりはするらしいけど。たまに大きなものが引っ掛かった時は魚の魔物を取るのを諦めるらしい。

 見た限り大分、水深も深そうだ。

 深い湖とかって何か眠っていたりするのだろうかってそんな気持ちが湧いてくる。

 ちなみに湖に夢中になってしまっている俺を見て、サリエスさんは宿を取りにいってしまった。サリエスさんは湖にそこまで興味がないらしい。でもあれかな、エルフだからっていうのもあるのだろうか。エルフって森と共に生きるというイメージが強いし。

「湖は何か眠ってたりするんですか?」

「あはは、どうだろうね? この湖には伝承があってね。この湖に潜ると誰も出てこれないんだよ。この湖を調べるなかれってね」

「そうなんですね……」

「ああ。下手に湖に潜ると出てこれなくなるからね。連れの美しい人のためにも落ちないようにした方がいいよ」

 現地の人はそんな風に俺に教えてくれた。

 それにしてもそういう伝承が残る場所か。とても気になる。何かしらの伝承が残っているということは、此処に何かしら眠っているものがあるということだろうか。

 ちょっと興味が出てくる。

 命を失いたくはないから、深追いはする気はないけど……気になるものは気になる。

 図書館とかで調べてみようか。

 この湖のある街だからこそ、何か作るのにも役立つ知識が手に入ったりするかもしれない。そう思うと何だか少し楽しみになる。

 芸術の都でものづくりが出来て楽しかったけれども、もっとものづくりが出来るようにもなりたいし。ちょっとやりたいことが色々ある。

 湖で役立つような魔法具を作ることが出来たらこの街で売れたりもするのだろうか。そういうことも考えると色んな考えが湧いてくるものだ。





 湖をしばらく覗いて、色んな事を考えていたら宿をとったサリエスさんが迎えに来てくれた。

「ずっと見ていたの? 確かに綺麗な湖だけれども。でも泳いだりしたら駄目よ。ここは泳いだら危険だって噂だから」

「綺麗だからっていうか、こんなに深いと何か隠れてるんじゃないかって期待しちゃってるだけだ。危険なのは聞いてるから流石に泳がないよ」

「それは良かった。ヒューガが此処で死んだら悲しいもの」

 サリエスさんはそう言って笑った。

 それからサリエスさんに連れられて宿へと向かった。宿は冒険者が多く住まう大きな宿のようで、中に入るとがやがやしていた。

 自分も冒険者になって、冒険者と接していくことにも慣れて来ているけれど、ガタイの良い冒険者がこれだけいると少しだけ怯みそうになる。

 もっと誰が傍にいても問題がないぐらい強くなれたら安心なのだが。

 ああ、でもこの世界だと冒険者相手に問題がなくなったって、もっと信じられないぐらい強い存在がいるかもしれないから、モノづくりをして生きていくためには安心できないだろうけど。

「ヒューガ、今日は移動で疲れたでしょう? だから一日ゆっくり休んでから、明日から冒険者として依頼を受けましょう。戦闘系を早速受けたいと思っているけれど問題ないかしら? 少しゆっくりしたいなら数日ぐらいはもう少し簡単な依頼を受けてもいいけれど」

「いや、討伐依頼で問題ない。アラサラーノでゆっくりしてしまった分、冒険者のランクをあげれるようにしたいし」

「じゃあ、色々受けましょう。この街がどういう討伐依頼が多いか分からないけれど、出来れば今まで討伐したことがない魔物がいいわね。色んな魔物と戦う事で色んな経験が手に入るもの」

「ああ。サリエスさんにそのあたりは任せる」

「分かったわ。じゃあ、明日は早速冒険者ギルドに朝から向かいましょう。ヒューガがこなせそうなのも選んであげるわ」

 サリエスさんとそんな会話を交わしながら、夕食を食べた。

 街の真ん中にある湖以外にも、街の傍には川も流れていることから湖や川にいる魔物の料理が多くあった。美味しかった。



 明日からは冒険者として討伐依頼をこなそうと気合を入れるのだった。



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