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52.次の街へ

「サリエスさん、次の目的地はどういった所だ?」

「そうね。次に行くのは湖が有名な街よ。観光地としても有名で、湖は男女が出かけるスポットになってるそうだわ」

 次に行く街では湖があって、ようするにデートスポットのようになっているようだ。

 街の外まで広まっているようなデートスポットか、人が多く集まるんだろうか。地球のデートスポットのようなものを想像してしまったが、そんなわけはないだろうと首を振る。

 この世界は地球程安全ではない。人が死ぬことは沢山あって、魔物と言う危険な存在が蔓延っている。男女で出かけるためにわざわざ危険な旅路を移動しないだろうし。よくて近場から人が来るぐらいだろう。地球のように星の反対側から観光のために出かけるなどという話は、この世界の人が聞いたら驚愕することなのかもしれない。

 馬車に揺られながらそんなことを考えた。

 改めてこの世界と地球は異なる。違いが多すぎると思う。俺も多分、無意識にこの世界にとって非常識な事をしていることはあるだろう。特に俺と一緒に行動しているサリエスさんはそのことが目に付くだろう。サリエスさんは余計なことを聞いてこないから本当に助かっている。

「そうなのか。人が多いなら面白い魔法具も見つかったりするかな」

「そうね。人口が多い街だから、ヒューガが気になる魔法具もあると思うわ。大きな街だと魔法具店もあるだろうし。ただ、アラサラーノでヒューガは冒険者としてはあまり動いてなかったから、冒険者としてのランクをあげたいなら戦闘面にも力を入れた方がいいかもしれないわ」

「あー……それはそうだな。アラサラーノであまり冒険者らしいこと出来なかったから、もっと戦う力を磨いた方がいいか」

 芸術の都――アラサラーノでは正直冒険者としての仕事もこなしていたが、ものづくりの方に力を入れていた。でも俺の目標は死なないために力をつけて、いつかものづくりをして生きていくことだから、幾ら何かを作ることが楽しかったとしてもそれだけをやれるだけの強さは今の俺にはない。

 今は覚えることが沢山あって、強くなるためにやりたいことが沢山ある。——いつか、ただものづくりをして過ごせるだけの強さを手に入れる事が出来たらとそんな夢を見る。

 ただ誰にも関わることなく、一心にものづくりに励んで、のんびりできる暮らし。それが俺の目標なのだ。

「でも好きなことがあるのは良いことだわ。冒険者として戦うことだけしかやっていないのはもったいないもの」

 サリエスさんはそう言って優しく笑った。

「ただそういう好きなことを出来るのはやっぱり生活に余裕があるからだわ。ヒューガも一人でも生きていけるようにもっと強くなるべきだわ」

「ああ」

 サリエスさんの年長者としての言葉は、心に響くような言葉が多い。

 今はサリエスさんがいるけれど、いつか、俺は一人になるだろうから。サリエスさんと別れるまでの間に一人でも生きていけるだけのものを手に入れなければならないというのを改めて思った。

 サリエスさんとの会話が一旦終わったので、俺は思考を続ける。

 次の街についたら何をしたいだろうか。

 街を見て回って、ものづくりのための何かを学びたい。あとはアラサラーノでさぼっていた分、冒険者して仕事を請け負っていくこと。

 《土操手》をもっと理解して、上手く使えるようにもなりたい。次の街にいるうちにもう少し《土操手》の使い勝手をよくしていきたい。

 《ユニークスキル》という特別なものがあるのだから、それをうまく使っていきたい。

 そのためにサリエスさんから沢山の事を学んでいかなければならない。

 ちらりと、座ってのんびりしているサリエスさんを見る。サリエスさんは冒険者としてまだまだな俺にはもったいない仲間だと思う。一緒にパーティーを組んでしばらく経っても、俺とサリエスさんはお互いの事を知らない仲だけど、サリエスさんが良い人だというのは分かる。この世界の事をそんなに知らない俺は、誰かに騙されて大変な目に遭う可能性もあったし、本当にパーティーを組めたのがサリエスさんで良かったと改めて思った。

 プレゼントはあげたけれども、それでは足りないぐらいサリエスさんに俺はお世話になっている。もっと強くなってサリエスさんにお世話になった分、返せるようになりたい。

 


 そんなことを考えながら馬車に揺られて、数日。

 目的地である次の街へと俺たちはたどり着いた。





 

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