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6.平穏

 異世界に落ちてきて、二週間ほど経過した。まだ森の外には出られない。森の中での生活は案外平穏に進んでいた。

 40人+教師合わせて41人もいるのだから、統率がとれていればそれなりにまとまった生活が出来るようになる。

 竜崎が相変わらず人をまとめ上げるカリスマ性を発揮しており、順調に進んでいた。

 一応俺たちの班は料理をするように言われているが、魔物たちが現れれば戦闘もする。

 相変わらず魔物相手におびえているものも多くいるが、ユニークスキルの効果で簡単に生物は殺せたりもする。使い方次第でユニークスキルは結構使い勝手が良い。

 俺の《土操手》もレベルが3になった。まだこれで何が出来るかはよくわかっていない。とりあえず土を操るというのはアバウトすぎて、どういうことが出来るのがいまいちわからない。

「日向のユニークスキルで何が出来るかかぁ、うーんわからん」

 中谷に何が出来るだろうかと問いかけてみたらそんな風に言われた。中谷は竜崎グループではないが、サッカー部でそこそこ活躍していた運動が好きな男だった。正直成績はクラスでも下から数えた方がはやいぐらいで、あまり考えるのはすきではないらしい。でも料理は得意という、見た目からはわからない意外な一面もあった。

 というか、ユニークスキルって少なからず本人の能力とかも影響されているのかもしれない。中谷は料理が得意だからそういうスキルで、竜崎は光が似合うから《光の剣》なのかもしれないし、少なからず地球での能力とかを考慮して使いやすいものが割りふられているのではないかと、クラスメイトたちのスキルと彼らの性格を考えながら思う。

「そうか」

「おう。わからん。でもそれって戦闘にも使えそうだし、羨ましい」

「中谷のスキルは戦闘には使えないからな」

「おう、悔しいぜ。役に立てるのは嬉しいけどな。でもどうせならかっこよいスキルが良かった」

 その気持ちはわかる。《料理美味》なんて旅とかには役に立つだろうし、重宝されそうなユニークスキルであるが、この危険な世界で戦闘系のスキルではないというのも色々不安になる。それに男としてはファンタジー世界に来たからにはかっこよく戦闘をしたいという気持ちもわかる。

「でも中谷、やろうと思えば普通のスキルでも戦えるだろう」

「あー、それはそうだけどさ。ユニークスキルってかっこいいじゃんか。かっこいいユニークスキルでどかーんってかっこいいことやりたかった」

 そんなことを中谷は笑って告げる。

 会話を交わしながら俺たちが何をやっているかといえば、魚を焼いている。とはいえ、この魚は普通のものではない。竜崎たちを飲み込もうとしていたらしいから、明らかに肉食だ。それに竜崎たちが持ってきたこの魚は驚くほど巨大だった。

 こんな恐ろしい魚をユニークスキルで一撃とか、色々竜崎はおかしい。

「……それは竜崎がやりそうなことだな」

「実際やってるもんな。やばいよなー、竜崎。《光の剣》使っているのみたけど、やばかったぜ」

 俺も《光の剣》使っているのみたけど、色々威力がやばい。戦闘に使っているからか竜崎のユニークスキルはレベルが上がるのもはやくて、制御が利かなくなってきているっていう話だ。

 その辺は紅たちが制御を学ばせているらしいが。これって、クラス全員同じ場所ではなく、バラバラの場所に転移とかになっていたら色々と悲惨なことになっていたかもしれない。

 そもそもバラバラだったら、俺も即死亡していた未来しか見えない。

 正直団体行動は得意ではないし、一人で行動したいと思わないわけでもないが、力をつけるまでクラスメイトたちと離れない方がいいだろう。少しずつレベルも上がってきているし、それなりに戦闘も出来るようになってきたが、現状で一人になれば俺は死ぬだろう。

「中谷の《料理美味》のスキルがあるからおいしいけど、これ調味料とか欲しいな」

「調味料か、確かに欲しいけど……調味料の取り方とかそんなの知らないしなぁ」

「……竜崎たちなら知ってそうだ」

「あー……解体も知っていたもんな。普通知らない事知っているって、竜崎たちってどんな生活してきたんだろうな!」

 本当にそれである。あいつら、同じ日本に住んでいたはずなのに、色々な苦労をしてきたからって理由で普通知らないだろうて事まで知っているのだ。

 毒草とかの見分け方まで知っているし、正直助かるけど意味がわからない。

 竜崎たちにそういうのを任せるっていう態度のクラスメイトたちもいるが、俺は自分でそういうのは学んでおきたいから積極的に竜崎たちに聞いている。

 この世界で一人で生きていけるようになりたいっていうのが目標で、そのためには様々な知識を学ぶべきだろう。

 竜崎は「俺たちは一心同体だ」って態度でクラスメイトたちがバラバラになることは考えていないようだが、高校卒業と共にクラスメイトたちが会わなくなるように、この異世界で現地民に接触して、色々な刺激を得たらバラバラになることだろう。

 まぁ、その前にこの森を抜け出すことが第一なんだけどさ。




 それから森から出られないまま、だけど平穏な生活が続いた。




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