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49.芸術の都 6

 俺はサリエスさんへのプレゼントと、《アイテムボックス》を作る作業に勤しんでいる。生活のためにも依頼は受けなければならないため、一日中それを行う事は出来ないが、少しずつでもこうして進んでいけている事を俺は嬉しく思う。

 それにしてもこうやってものづくりをしているとやはり心が躍る。俺はやっぱり物を作るのが好きなのだ。その自分の気持ちをより一層実感する。だからこそ、いつか、自分の力で生きていくだけの力が手に入ったら――、どこかでものづくりをしながら生きていきたいと思った。今は冒険者として生きているけれど、いつか、定住したい場所でも見つけたら……そこでものをつくりながら生きていけないかって思うんだ。

 ただこの世界は、日本よりも危険だからやはり生きていくための力は必要だ。ただでさえ俺は渡り人なのだから、それを知られれば何かしら利用しようとする相手がいないとは限らないのだから。

 将来について希望を抱く。こうして黙々とものづくりをして、それを売って生計を立てる日々。それを想像するだけでも何だか楽しみになった。

 こうして未来への希望を見いだせるのも、今、前向きになれるのもサリエスさんのおかげでもある。そう思うから、サリエスさんへのプレゼントをなんとか作ろうと思っている。

 少しずつ進めているが、進歩状況は《アイテムボックス》の方が進んでいる。

 魔法文字を刻んでいく作業は、集中力が必要だった。少しでもミスをしてしまえば、それは魔法具として成り立たなくなる。失敗をすればどうなるか分かったものでもないので、魔法具作りは大変なのだ。

 残念なことに、一つ目は失敗してしまった。ただ失敗とはいっても、大惨事にはならなかったのでまだよしとしよう。一つ目の失敗があるので、今度こそ失敗しないようにしようとより一層丁寧に進めていく。今度失敗したら、もう皮が足りない。……折角大金をはたいて買ったものが無駄になるのは勘弁したかった。

 一つ一つ魔法文字を丁寧に刻んでいく。そして魔力回路がきちんとつながっているかの確認をしていく。どれか一つでも不具合があれば、これは《アイテムボックス》としては成り立たない。慎重に、慎重に進めていけば、なんとかその作業は終えた。あとは鞄としての形を作った時にきちんと《アイテムボックス》としての性能を持ち合わせていればいいのだが。そして鞄としての形を作るのも失敗してしまえば、これも失敗作になってしまう。

 丁寧に、慎重に。

 それを心掛けて、なんとか縫い合わせていった。

 あとは、その中に魔石を入れた。

 俺の作った《アイテムボックス》は、永続的に効能を発揮するタイプではない。というか、魔法具作り初心者の俺にはそんなタイプの《アイテムボックス》を作るのは現状無理だった。というわけで、魔力のこもった魔石を中に放り込んで効能を発揮するか、所有者の魔力を消費して効能を発揮するかといったタイプになっている。芸術の都にある時計塔のように常に魔力を蓄えられるタイプだと永続的に効能を発揮するらしいが……。というか、イメージとしてみれば地球の太陽光発電のようなものなのだと思う。自然の中にある魔力を蓄えて、それで効能を発揮するというのが最高級の魔法具らしいので。

 ちなみに容量もそこまで入らない。

 とはいえ、初めて作った《アイテムボックス》ならばこの性能でも十分だと思う。いずれ、もっと魔法具を作る知識などを手に入れたらもっと効能の良い《アイテムボックス》を作ってみようと思っている。

 でもあれだな。自分の手で作った、自分の《アイテムボックス》ってそれだけで何だか特別な気がする。誰かが作った《アイテムボックス》を自分のお金で買うよりも、自分の手で作って《アイテムボックス》を手にするという方が俺にとっては達成感がある。《アイテムボックス》は肩掛けのバックにした。見た目の大きさはそこまで大きくない。これなら戦闘中もそこまで邪魔にならないだろう。

 これが量産出来れば、売ってお金にすることも出来そうだ。とはいえ、材料費も馬鹿にならないし、俺の現状の技術だと失敗作も多く作ってしまって赤字になってしまう気がする。今度、簡単な魔法具を作ってみて、魔法具工房などで売れないか確認してみようかな。あとは生産ギルドもあるはずだから、そちらを覗いてみれば魔法具を売れるかもしれない。

 

 結局、《アイテムボックス》を作るのにも数週間かかってしまっていた。サリエスさんへのプレゼントは《アイテムボックス》の後に作ろうと思っていたからまだ完成していない。

 俺が芸術の都にもっと居たいと言ったからこそ、サリエスさんはそれを聞いてくれている。その事も踏まえて、やはり、ありがとうの気持ちを込めて今の俺の全力を込めてプレゼントを作成しようと思った。




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