表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/78

47.芸術の都 4

 ギルドでゴブリン達に関する報告をして、報酬を受け取ってから俺とサリエスさんはギルドの前で分かれた。

 《アイテムボックス》とサリエスさんへのプレゼントを作るためにまずはまた図書館に向かった。ある程度、《アイテムボックス》に関してはどういう素材を使うべきかなどは把握している。しかしサリエスさんにどういった魔法具を贈るべきかというのがまだ思いついていない。

 サリエスさんは冒険者として生きている。年は教えてくれていないので分からないが、俺よりもずっと年上だろうとはなんとなく思っている。冒険者として長い期間活躍しているサリエスさんには俺の拙い魔法具など必要ないかもしれないが……、まぁ、作るだけ作ってみよう。魔法具を作る練習にもなるはずだしな。

 それにしてもやはり、戦闘に使えるものがいいだろうか。それとも旅をするのに便利な魔法具を作るべきだろうか。図書館の本を読みながら色々と考えたが、とある本にMP自動回復の効果を持つ魔法具が乗っていたのでそれを作るのを試してみようと思った。こういうHPやMPなどを回復させる魔法具は、回復させたい対象者と接触部分が多い方がいいらしい。指輪の形状のものが多いらしいが、何だか指輪をあげるのは躊躇われるので腕輪かペンダントで作ってみる事にしよう。

 図書館を後にして、次に向かったのは素材屋である。芸術の都は、魔法具作りも盛んなので、素材屋は沢山存在している。色々と素材屋を巡りながら、お店にいた人たちに色々と聞いてみたのだが、どうやらアラサ市というのが五日後に開催されるらしい。アラサ市というのは、このアラサラーノで三週間に一度行われる市らしく、都に住んでいない商人も多く集まるそうだ。珍しい素材なども手に入ったりするという話なので、折角なのでその市を見てから集まらなかったものを素材屋で購入する事にした。

 お金をもっと集めておかなければならない。

 必要以上にお金を使わないようにしているので、資金はそれなりにたまっている。冒険者の中には稼いだ分だけ酒代や賭け事に使ったりしてしまう人もいるらしいけど、正直そういうものに使うよりも何か作るためにお金は使いたい。大体、この世界ではお酒を俺と同じ年代でも口にしているが、日本で育った身としてみればお酒を飲むのは躊躇われる。

 やはりそういう事におぼれないように心がけるべきだろう。異世界に来たからってはっちゃけたら大変なことになりそうだと昼間から酒を飲んでいる冒険者を見て思った。

 とりあえずの目標として五日後に素材を買うための資金集めをすること。どんな素材を購入するかは、何となく頭の中にはあるが、もっとどの素材がいいか吟味していくべきだろうし。あとはサリエスさんにはばれないようにプレゼント作りをしよう。……なんだか作っているという事を知られるのは恥ずかしいから。どちらにせよ、渡したらプレゼント作っている事なんてもろバレしてしまうわけだが、どうにも恥ずかしいという気持ちがあったのでこそこそと作っている。《アイテムボックス》を作るとは堂々と言っているけど。

 ゴブリン退治を行ったばかりなので、討伐以外の依頼をしたかった俺は、次の日に一人で都の中で出来る依頼を受ける事にした。サリエスさんはギルドに行かずに、他の事をすると言っていた。何をしているかは不明だ。

 俺がまず受けたのは、魔法具工房の一つが出している依頼で魔法具の試運転を手伝ってほしいというものだった。それを受ける際にはまだ市場に出ていない魔法具の事を外に漏らさないようにという誓約書も書いた。誓約魔法も受けたので、外に漏らすとすぐに分かるらしい。魔法具が市場に出るまでらしいので問題はない。試運転に問題がなければそのうち市場に出回るそうだ。

 さっそくその魔法具工房に向かって、試運転する魔法具を見せてもらった。

 一つは、火を扱う魔法具。この魔法具は熱量を色々と調整が出来るらしく、思いっきり使えば目の前を火の海にできるし、うまく使えば料理など簡単な作業に使えるようだ。

 もう一つは、水を扱う魔法具。この魔法具は説明を聞いた瞬間、スプリンクラーだとしか思えなかった。水を放出する魔法具で、火事などの時に使えるようにと作られたものらしい。

 二つの魔法具を使ってみてほしいという事だった。火の魔法具を使って、その後、スプリンクラーで消すというので両方の試運転をと言う事だったそうだ。俺以外にも何人か冒険者が来ていた。

 魔法具は常時発動するタイプのものも、手動で発動されるものも、自動で発動するものもいろいろとある。その中で今回のは使用者が魔力を込めて発動するタイプだった。魔石などを使って発動させるものもあるらしい。

 火の魔法具の方は、少し魔力を込めただけでも思ったより燃え上がった。スプリンクラーの方は調整が火の魔法具より楽だったが、込めた魔力の分だけ水が出っぱなしになるので、そのあたりは調整が必要な気がした。

 冒険者の一人が火の魔法具で大惨事を起こしそうになっていたが、それは流石に魔法具工房でやっていたのもあって事なきを得た。……あの火の魔法具、魔力を多めに込めるとあんなになるんだと驚いた。

 それにしても魔法具というのは奥深い。

 こういう魔法具にはどんな魔法文字が組み込まれているのだろうかと、気になって色々聞いてしまった。他の冒険者たちは特に魔法具作りには興味がないらしいので、試運転の後はすぐに帰宅した。が、俺は興味津々だったので、いろんな事を聞いた。魔法具工房にいた者も、俺が魔法具に興味があるのだと知って色々と教えてくれて助かった。ついでに友人のようなものになった。勉強させてもらえて、とても良い依頼だった。

 その後は演奏会場の設営の依頼を受けた。

 この世界であれだけ楽器がそろっているのを見たのは初めてだったし何だか楽しかった。楽器とかも、いつか、自分の手で作りたいと思ったのでマジマジと楽器を見てしまった。



 そんな感じで、俺は幾つもの依頼を五日間で受けていったのだ。

 そして、ようやく今日はアラサ市の開催日だ。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ