46.芸術の都 3
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ご迷惑をかけてすみません
芸術の都における冒険者ギルドでのクエストの中には、芸術の都ならではのものも多くある。例えば、楽器を運ぶ要員を求めていたりとか、有名な学者様を呼ぶのでその護衛について欲しいとか、少し離れた村に画家として将来有望な子がいるのでその子を迎えに行ってほしいとか。この都ならではの依頼なども多くあって、面白いなと思ってならなかった。
様々な依頼があるからこそ、どの依頼から受けてみようか悩んでしまう。目を輝かせて依頼を選ぶ俺の事をサリエスさんはにこにこしながら見ていた。
「ヒューガ、どの依頼を受けるか決めた?」
「折角だから、此処、アラサラーノでしか受けられないのを受けてみたい」
「そうね。その方がヒューガにとっても良い経験になるでしょうね。楽器の整備とかならヒューガ一人でも出来るかもしれないわね。まぁ、戦闘を生じるものは流石にヒューガ一人で受けるのは危険だと思うけれど」
楽器の整備の依頼……そういうのも是非やってみたい。
今は冒険者として過ごしているけれども、俺は最終的にそれ以外で生きていきたいから。そのための糧にここでの生活がなればいいと思ってならない。
今回はサリエスさんもいるという事で、アラサラーノの傍でゴブリン退治を受ける事にした。
準備をしてサリエスさんと共に都の外に出る。すぐ近くの森に生息しているゴブリンを退治してほしいという事だったので、そのためにゴブリンを探しながら森を歩く。最初にゴブリンを退治した時、俺は人を初めて殺した後でいっぱいいっぱいの中でゴブリン退治を行った。でも今回は、もう少し戦う事に俺はなれる事が出来た。やっぱりこれらはサリエスさんのおかげだ。だからこそ、やはり何かをプレゼントしようと思った。
「森を歩くのも少しヒューガは慣れてきたわね」
「全部サリエスさんを参考にしているんだけだよ」
「ふふ、役に立っているのなら良かった」
サリエスさんは相変わらず森を歩く足取りが軽くて、無駄がない。俺も少しずつサリエスさんの真似をしているけれど、まだまだサリエスさんほどにはなれていない。
「あの果実は美味しいわよ」
途中で、そんな言葉を言われて思わずその果実を収穫してしまった。サリエスさんにも渡して、その場でかじる。甘い。こうやって食べるのも美味しくていいなぁと思う。
周りを警戒しながら進んでいれば、目的のゴブリンが目の前に現れた。その数は二十匹近くいるだろうか。思ったよりも数が多い。
「思ったより、数が多いわね。でも、まぁ、なんとかなるわね。ヒューガは好きなように動いて、私は勝手に動くから」
サリエスさんは笑いながら続ける。
「心配する必要はないわよ。ヒューガは最初に会った頃より、強くなってる。だから大丈夫よ。自信を持っていいわ」
サリエスさんがそんな風に笑ってくれる。サリエスさんはこういう時、誇張する事はない。そのことをわかっているからこそ、俺は大丈夫だと安心する。正直、こんなにゴブリンがいると不安も大きいけれど、このくらい出来るようにならなければならないと気合を入れて動き出す。
馬鹿正直に正面から戦おうとは思わない。まずは、不意打ちをして数を減らしていこうと決めた。まずは、気配を殺してゴブリンたちに少しずつ近づいていく。
「土の塊を生成せよ。その塊を落とせ! 『アースメテオ』」
それは、習ったもののあまり使う機会のなかった魔法だ。これだけの数がいるのならばこの魔法をいざ使ってみようと思った。扱いが難しい魔法だからこそ、《土操手》で補助もしながら行ったそれ。
ゴブリンたちの頭上に現れた巨大な土の塊。それを落とす。そうすれば、全員ではないが五、六匹のゴブリンは絶命、もしくは行動不能には陥らせることが出来た。……もっと魔力があれば『アースメテオ』を一つだけではなくもっと出現させることも出来るだろうが、現状は一つが限界だ。
残りのゴブリンたちが俺達に近づいて、声を上げる。
驚いた事に、ゴブリンの一匹が魔法を使った。慌てて『アースウォール』を使って事なきを得たが、驚いた。
サリエスさんが「ゴブリンメイジもいるのね……」とつぶやいていた。
ゴブリンメイジ……魔法が使えるゴブリンか。そんな存在と対峙するとか考えていなかったから驚いた。まぁ、一先ずこいつらを倒さなければならない。
そう決断して俺は動く。
魔法だけではなく、長剣も使いながら行動を起こす。
サリエスさんの方を見る余裕なんて俺にはなかった。ただ必死に、ゴブリンの息の根を止めるべく動いていた。ゴブリンメイジを真っ先に狙った。なんとか、長剣で倒すことが出来てほっとする。ゴブリンメイジは二十匹中、一匹しかいなかったようで良かった。
俺がそうやって動いている間に、もうすでにサリエスさんはほとんどのゴブリンたちの息の根を止めていた。本当にサリエスさんは凄いと思う。
「ゴブリンメイジまでいるなんて、ギルドに報告するべきね」
ゴブリンメイジまでいるのは、ゴブリンたちが増殖している証であるそうだ。そのため、このことはギルドに報告すべきであるそうだ。
何か異常が起きるという事がなければいいが。俺はそう思いながら都に二人で戻るのだった。




