44.芸術の都 1
芸術の都へ到着した。
芸術の都は何というか、カラフルだった。様々な色の建物が建っていて、トリックアートのようなものも多くあった。また、オブジェクトも多くある。音楽の楽譜の記号のオブジェクトだったり、魔物のオブジェクトだったり――沢山のオブジェクトが街の中に存在していた。
「ヒューガ、目をキラキラさせている所、悪いけれど……、先に宿をとるわよ」
「ああ」
芸術の都を興奮してみていたら、笑いながらサリエスさんにそう言われた。興奮して目をキラキラさせてしまうなんて、俺は子供か……と少し恥ずかしい気持ちになってしまった。
サリエスさんは以前、この都に来た事があるからと道に迷う事なく宿の並ぶ通りに進んでいった。そのあとを俺は慌ててついていく。芸術の都は思ったより大きな街で、正直一人になってしまえば迷ってしまう事が間違いなかった。
「ヒューガ、泊まるのはここでいいかしら?」
「ああ」
「じゃあ、入りましょう」
サリエスさんはそう言って、一軒の宿の扉を開いた。
「いらっしゃい」
「二部屋を……、そうね、ひとまず七日ほどお願いするわ」
サリエスさんがそう言って、宿を取った。その後はついたばかりという事もあって、俺とサリエスさんは別行動をしようという話になった。俺も芸術の都を見て回りたいという気持ちも強かったので、それを了承した。
宿を出て、芸術の都――アラサラーノの街に繰り出した。オブジェクトを見るのも楽しい。この街は俺の好奇心を刺激する。絵を描いている者も何人も見かけた。俺も絵も描きたいなという思いも沸いた。
この世界は、地球では見られなかったような景色が沢山ある。それを絵に描き留められたらどれだけ楽しいだろうか。また、やりたい事が増えた。絵を描くための紙も欲しい。《アイテムボックス》を持っていたら荷物にならないのだけど……。流石に一緒にパーティーを組んでいるとはいえ、必要以上にサリエスさんに寄りかかるわけにはいかない。
結局、《アイテムボックス》を買っていないから、そろそろ買った方がいいだろう。……《アイテムボックス》って作れたりするのだろうか。出来たら買うよりも自分で作りたい。
《アイテムボックス》は魔法具と呼ばれるものだ。魔力によって不思議な力の込められたもの。——俺はいつか、それを作れるようになりたい。そのためにはあらゆる生産技術を身に着けるべきだ。
ドワンの街でも生産技術は少しは学べる事が出来たけれど、もっと知る必要がある。
例えば、この都の中心部には魔法具の建物が存在する。その時計塔は、魔法具職人達の手によって作られたものだという。この時計塔は、頂上に時計がついている。それ以外はただの巨大な塔だ。通常は都の皆が何か催しをするときに使ったりするらしい。地球で言う公民館のホールみたいな役割で、音楽が披露されたり、様々な事がなされるらしい。この時計塔は、緊急時には要塞と化すという。例えば、魔物が街に入り込んで危機に陥った時、この時計塔に逃げ込めば、緊急時には障壁が出現する。敵が中に侵入する事を許さない。また、攻撃魔法も搭載されていて、時には敵を滅ぼしもする。
巨大なこの魔法具は、毎日空中の魔力を蓄える仕組みになっているらしい。そしてその蓄えられた魔力により、要塞となる事が出来るそうだ。
……まじまじと時計塔を見ていたら現地の人が教えてくれたが、凄まじい魔法具だと思う。というか、魔法具というか、魔法建物? なんていうんだろうな。分からないが、魔法具というのはこんな通常なら考えられないような効果を発揮できる。素晴らしいと思う。俺も魔法具を作ってみたいものだ。
時計塔を後にして、街の中を見て回る。
面白い建物やオブジェクトが沢山あって、これは良い都だと興奮してならなかった。
そうしていると、図書館も見つけた。
お金を払って中に入る事が出来る図書館だ。興味本位で中に入ってみた。この世界では書物は地球よりは貴重なのもあって、入る時と出る時に持ち物検査をされるとの話だった。また、芸術の都の図書館というのもあって、この世界でも貴重な書物も多いようだ。そのため、そこら中で司書達が本を破いたり、本に書き込んだりしている者がいないかと鋭い視線を来館者にむけていた。加えて、監視するための魔法具がそこら中に設置されていた。館内の様子を記録する魔法具らしい。模写するのは自由だが、それも指定された場所でやるようにという事だった。
この世界に来て、これだけの本が存在するのを見るのは初めてだった。
ひとまず、俺が読んでいるのは魔法具に対する本だ。既存の魔法具についての本を読んで、魔法具について学んでみようと思ったのだ。
そして本を読んでいたら、あっと言う間に時間が過ぎていったのであった。




