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幕間8:塚本孝輔

「孝輔君、そっち行ったよ!!」

「ああ!!」

 俺、塚本孝輔は異世界転移をして、クラスメイトの五人と共に冒険者をやっている。今回は、ダンジョンと呼ばれるものに潜っている。ダンジョンとは、魔核と呼ばれる物が埋まった自然発生する場所を指すそうだ。通常の鉱山や森といった場所とはまた違う。ダンジョンは色々な常識を無視した不思議空間である。

 こういうダンジョンと呼ばれるものは冒険者にとっては、稼ぎ甲斐のある場所だ。ただ、危険も伴うので、冒険者ランクによって入れない難易度もある。今回、俺達はランクCになれたので、このダンジョンに入る事が出来たのだ。

 六人のパーティー、《黒の王国》。……このパーティー名は、千奈が適当に考えたものだ。俺達は全員黒髪なので、それでいいのではないかという適当な理由でつけられた。まぁ、確かにこんな風に黒髪ばかりのパーティーはこの世界では珍しいけれど。

 ユニークスキル《硬質化》を使って、自身の体は硬くなる。最初の頃は恐ろしかったが、このスキルのレベルが上がったことで、魔物とぶつかっても怖くなくなった。

 俺が敵を引き付けている間に、光之助がユニークスキル《炎の弓》を使い、魔物を射抜く。俺に当たらないようにやってくれるという信頼があるからこそ、こうして俺は魔物に向かって特攻が出来る。

 このパーティーは比較的バランスの良いパーティーだと思う。俺が《硬質化》で敵を引き付け、光之助と千奈と奈子が《炎の弓》と《闇の裁き》と《火炎弾》で攻撃をする。そして信が《癒しの祈り》で傷を回復する。賢斗は《我流鑑定》であらゆる情報を鑑定し、こちらに伝えてサポートをしてくれる。

 その戦い方で、俺達パーティーは現状うまくいっている。この世界にやってきた時には、不安も大きかったけれどこうやって仲の良い友人達と冒険者としてやっていけて安心している。

 ――それに、奈子とも一緒にいれるし。

 俺と奈子は中学生の頃からの付き合いだ。その頃から俺は奈子の事が好きだった。……異世界に来たことはショックだったけれど、奈子とこれからも一緒に居れる事は嬉しかった。

 奈子に、好きだっていつか言えたら――俺はそんな風に考えていた。

 ダンジョンから出て、三部屋に分かれて宿をとる。その三部屋は、女性組、俺と賢斗、光之助と信で分かれている。冒険者を始めた当初は、三部屋もとる予定がなかったが、こうして三部屋もとる余裕が出来たのは良かったと思う。

 今、最初に俺達を保護した国とは別の国に俺達は来ている。不安も大きかったし、黒髪だけのパーティーという事で目立っていたけれど、こうして順調に進んでいけて良かった。

 俺達はこの世界に慣れてきていて、すっかりこの世界になじんでこれていた。

 

 ――でもその慣れが、悪い方向に左右する事があるかもしれないなんて俺はその時一切考えてなかった。



 この世界では男が娼館に行くことはよくある日常だ。冒険者として生活するのに慣れてきた光之助と信は、娼館というものに度々行くようになった。……そりゃあ、俺も男だからそういう気持ちはわかるけれど、正直好きな相手がいるのに他の相手とそういう行為をしようと思わなかったので行かなかった。

 まぁ、奈子と千奈も「男の人だから……」と理解を示してくれていて良かったけれど。でも、予想外の悪い方に何時頃か転がりだしてしまった。

 ……光之助と信が、娼館にはまっていったのだ。もちろん、お小遣いの範囲だし、本人達の勝手なのだろうけれど。でも正直、こんな風に友人が娼館にはまっていく様を見ると何とも言えない気持ちになった。

 そのあたりから、俺と賢斗は不安を感じていた。その不安を宿の中で二人で話していた。そしてその不安は的中してしまった。

 まず、一番目のきっかけは千奈と光之助が付き合いだした事。……正直娼館に顔を出しているのを千奈は軽蔑の目を向けていたのだが……どうやら大人の階段を上って、虜になったらしい。友人が友人に蕩けた女の顔をしているのは、何だか複雑だった。いや、恋人になったとかならともかく、光之助は女に手を出す気満々で、娼館の女性を引き取ろうとしていた。でさ、信じられないんだけど……こう、その大人の階段に信も混ざりだして、こう……複数? どういうことだと思えることになってきてな。

 奈子の事も混ぜてしまえ、混ぜれば後は思うままだみたいな感じになって、俺たちに混ざるかとか聞いてきて……これはまずいとなった。加えて、《我流鑑定》という戦闘には向かないスキルの賢斗の事を邪険にするようになってきた。奈子が身の危険を感じたのと、俺と賢斗も一緒にやっていけないという事になって、俺達は離脱する事になった。……光之助と信は、奈子と俺をパーティーから外す気はなかったみたいで色々煩かったけれど、俺も奈子もついていけないと思った。それに友人である賢斗をパーティーから追放しようなどとするのは許せなかった。

 というわけで、《黒の王国》は結成して一年ほどで分裂したのだった。




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