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幕間7:佐川悠斗

 俺の名前は、佐川悠斗。

 クラス全員で異世界に転移するなどといった出来事に遭遇し、平凡な俺の人生もようやくバラ色に輝きはじめるのではないか、と微かに期待していた。転移した後、騎士になる道を選ばずに自分の道を歩むことを模索して行動し続けた方が良かったのかもしれない。

 その方が、おそらくこのユニークスキルを全員が持ち合わせているクラスの中で埋没している今の現状よりは上手くいったのではないかと思う。

 俺のユニークスキル、それは《石に好かれし者》というスキルなのか、これは? と思えるような謎スキルである。

 思えば、俺の地球での趣味は石集めだった。河原とかに行って、石を集めるのが好きだった。少しでも形の良い石があったりすると嬉しくて、すぐに持ち帰ったものだ。中には転がっているうちに変形して、面白い形になっている石などもあって、そういう石を集めるのが俺は好きだった。

 俺のこのスキルが何に使えるのか分からない。

 クラスメイト達も、この国の者達も俺のスキルは特に役に立たないようなものであると認識していると思う。俺だってそう思う。そんなわけで、俺は割と微妙な立場である。

 ユニークスキルを持ち合わせている《渡り人》だけれども、重要なスキルは持っていない。だけれどもユニークスキルというのは未知数の物であるからもしかしたら何かこれから役に立つかもしれない。そういう微妙な立場。自分が役に立っていない自覚はある。

 竜崎君たちのグループみたいに活躍しているわけではない。村野君たちみたいに此処とは違う場所にいって活躍が出来るわけではない。谷さんたちみたいに戦闘面以外で役に立てるわけでもない。

 ……まだ戦闘系のスキルを持ち合わせている人達はいいのだ。実際に戦えなくても役に立てる人達も。でも、俺はどちらの役にもたてない。俺だけじゃなくてもう一人そういう子がいる。

 それは、立花花蓮という少女だ。

 彼女のユニークスキルは《文房具マスター》。どうやら文房具をこよなく愛して、沢山の文房具を集めたり、使い勝手を比べたりしていたために手に入ったらしい。

 俺の《石に好かれし者》も、立花さんの《文房具マスター》もいまいちよくわからないスキルである。俺達は騎士の中でも微妙な立場にいて、正直言うと異世界の人達は俺達に酷い扱いをするわけではないけれど役に立たない《渡り人》に微妙な感情を持っている。そのことをちゃんと俺も立花さんも理解している。理解しているからこそ……目立たないように、余計な迷惑をかけないように、心掛けている。仕事は真面目にやっているから、現地の騎士達の下級騎士達や、清掃の人達とは仲良くなれているけれども……。

 ああ、それにしても竜崎達が眩しい。あいつら、本当に異世界に来て成功しまくっている。いや、まぁ、竜崎達は地球に居た時からもキラキラと眩しいリア充だったけれども!! まぁ、いいんだ。同じく微妙なスキルだったからこそ、立花さんと仲良くなれたから。立花さんは眼鏡をかけていて、地球に居た頃、地味な子だなーとしか思ってなかったんだけど……眼鏡外したら結構可愛かった。

 眼鏡を外したら絶世の美少女、とかそういう漫画的な展開はなかったけれど、結構可愛い子と同じ立場だから仲良くなれるっていうの、よくね? 俺は凄く嬉しい。それに立花さん優しい性格だし、俺は立花さんを彼女にしたい! とか思っているわけだ。俺も立花さんもクラスメイトに親しい友人は居なかったし、必然的に同じ立場の俺達はよく一緒に行動するようになったわけだし。

 ……立花さんが、俺の事嫌いとかじゃなきゃいいなー。

 なんてのんきに考えながら過ごしていた俺なのだけれど!!

「すまない。君たちは騎士として不適正である。《渡り人》である騎士だからと今まで騎士として雇っていたが……」

 俺と立花さんはとても申し訳なさそうにそんな風な事を言われてしまったのだ。俺や立花さんは《渡り人》の騎士として役目を果たせてないと。その通りで何も言えない。それに加えて、出来れば俺や立花さんから辞表を出したという形にしてほしいという事だった。

「わかりました」

 俺は答えに困っていたけれど、立花さんが頷いたのもあって俺も頷いてしまった。

 ああ、でもこれからどうしよう? 立花さんと一緒に居たいけれど、立花さんは一緒に居てくれるだろうか。職を失ったというのに、俺はそんな風に立花さんの事ばかり考えていた。

「え、ええと、立花さん!」

「どうしました?」

「こ、これからどうする? 職を失ってしまったわけだけど……」

「そうですね……。生計を立てなければなりませんから。どうしましょう? でも、佐川君と二人ならどうにでもできそうですし、楽しそうだからいいです」

「え、それって、これからも一緒にいてくれるということ?」

 荷物をまとめるために与えられた部屋に向かいながらの会話で、俺と一緒に居る事前提の会話をされたので俺は驚いてしまった。

 驚きの声をあげた俺に、立花さんは悪戯な笑みを零した。

「あら、駄目でしたか? 私はそのつもりだったのですが」

「いや、駄目なんて全然ない! 俺も立花さんと一緒に居たい」

 良く考えればとても恥ずかしい事を口にしていたが、俺がそう口にすれば立花さんは笑ってくれた。その笑みを見て、俺は立花さんの事がやっぱり好きだなと思ったのだ。



 ――そしてそれから数日後、俺と立花さんは正式に騎士職を辞するのであった。




クラスメイト一覧(今出ている分だけ)

《騎士》

三森(教師)


・竜崎グループ

竜崎光《光の剣》

紅沙月《炎の鞭》

西園寺南

神崎朱莉《水の衣》

野田千明

沢木代野《氷槍》


・元スポーツ部

村野琢哉《魔球》

八重金太《守りの手》

大洲上一鶴

内川優



山岸美緒《火纏いの剣》

深見果南《高揚の歌》


・問題解決の三人

谷陽子《写生記憶》

丘美喜《夢の世界》

中条天《物質記憶》


・騎士職を退職

佐川悠斗《石に好かれし者》

立花花蓮《文房具マスター》


《料理人》

中谷智《料理美味》


《モンスターショップ》

渡辺園美《犬耳》



《冒険者ギルド》

秋田奈子《火炎弾》

塚本孝輔《硬質化》

神宮信《癒しの祈り》

松崎賢斗《我流鑑定》

伊上光之助《炎の弓》

榎本千奈《闇の裁き》




畑有紀子《幾千の声》


《詳細不明》

大鳥学《拳強化》


《生産ギルド》

緑山文佳《植物知識》


《商人ギルド》

井之上乃愛

北野上美愛


《死亡》

真崎麻紀 《スキルコピー》


今の所名前判明しているクラスメイト32名(主人公含めて)

男16名

女16名


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