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37.作った武器

 自分の作った長剣を振るう。

 ただ、それだけでも心が躍る。

 それだけのことでこんなにも嬉しくなるなんて俺はどれだけ単純なのだろうかと思うけれども、嬉しいものは嬉しい。

 もっと沢山のものを作れるようになりたい。そして、出来たらもっと技術を高くして、良い武器をもっと作っていきたい。

 ――自分を守るために、この異世界を生きていくために強くならなければならない。自分で戦う力を手にしなければ、すぐに死んでしまうかもしれないのだから。

 そう思うからこそ、もっと戦う力を身につけたいけれどもやっぱり俺としてみれば戦っていけるだけの力を手にする事が出来たのならばのんびりものづくりをしながらそれで生計を立てていきたい。でもそのためには、強くなることと同時に物づくりの技術も身に着けていなければならない。やりたいことが、沢山わいてくる。

 このドワンにやってきてから、やりたいことが幾らでもわいてくる。

 今日は鉱山に素材集めもかねて向かうことにした。サリエスさんは「じゃあ私も行くわ」と言ってくれて二人で向かった。

 魔法の練習もしていきたいが、今日はひとまず長剣を使って戦う術を身につけたいといった俺にサリエスさんは笑ってくれた。

「あの魔物は、あそこを——」

「ああいう時はね……」

 サリエスさんは一つ一つ、俺に戦い方を教えてくれる。

 それを聞いて、頭では理解したつもりになっていても、サリエスさんのように洗練された動きをすることは難しい。

 サリエスさんは……近づけば近づくほど凄い人だというのがわかる。

 エルフであるため、魔法を使う事が得意だ。精霊魔法を使うことも出来る。それに加えて、武器の扱いも出来ている。本当に凄い人だ。詳しくは聞いていないけれど……サリエスさんのギルドランクはきっと高いのだろうと薄々と感じていたけれども、本当に凄い人だ。

 こんなに凄い人と偶然が重なって一緒に冒険をすることが出来るようになった俺は、運が良いのだと思う。

 この運がどれだけ続くか分からないのだから、運が続いているうちに本当に様々な事を学んでいかなければならないと思ってならない。

「それにしてもヒューガは武器も作れるようになって良かったわね。ヒューガがもっと鍛冶が上手くなったら私の分も作ってもらおうかしら」

「……俺の腕ではサリエスさんの腕に釣り合わないと思いますけど」

「だから、いつかよ、いつか。ヒューガはものづくりをずっと続けていくのでしょう。だったらいずれ鍛冶の腕も上がるでしょう? だったら私が作ってもらいたいと思えるような鍛冶師にもきっとなるわよ」

 にこにこと笑いながらサリエスさんはそのような事を言う。サリエスさんが笑顔で言い放つ言葉が本気なのか、冗談なのか、俺には分からない。

 一先ずその言葉に頷けば、サリエスさんはまた笑った。

 サリエスさんは常に笑みを零している。人生を楽しそうに生きている。この人が怒る事なんてあるのだろうかと思うぐらいに、にこにこしている。

 剣を振るう。

 サリエスさんに助言をもらう。

 それをずっと繰り返す。

 鉱石が掘れるところを見つけては採掘をする。

 自分の作った武器の性能を確かめながら、魔物を倒してレベルをあげることも出来る。そしてその合間合間で鉱石を掘って、次に自分で何かを作る時の材料が掘れる。

 何だか本当、こうして過ごせるのは嬉しくて仕方がない。

 充実した気持ちになる。

 ――自分の武器を自分で作れるのは良い。

 本当は武器だけではなくて防具も作れるようになりたい。というか、全部自給自足できるのが目標だ。鍛冶をある程度習ったら裁縫も習いたい。

 鎧も作れるようになりたいけれど、裁縫で作れる防具も作れるようになりたいのだ。正直裁縫で作れる防具で防御力なんてあるのかと思ってしまうけれど、そこは異世界なので様々な素材があって防御力の高いものが出来たりもするらしい。本当に地球よりも面白い効果のついているものが多くて、俺はその素材を手にした時を考えただけでも楽しいと思う。

 何日も、自分で初めて作った武器を振るう。適度に手入れをしながら、自分で作った長剣が手になじんできた。

 自分の手になじんできた自分の武器。

 それを自分の手で生み出せた事は良かった。もっと上手く良いものを生み出していきたいけど、ひとまずはこの長剣が壊れるまでは、上手に手入れをしていきながら愛用していきたいと思った。

 手になじむまで鉱山に何度も足を運んだことで手にした素材を使って、今度は何を作ろうか。……ワルザさんに、俺が作ったものを売ったりするのは出来るか聞いてみよう。ワルザさんにも大分、鍛冶の腕が上がってきたとは言われたし。もっといろいろなものをワルザさんから学んでいかないと。



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