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28.ゴブリン退治1

 サリエスさんと共にドワンから西へ進む。

 討伐依頼の出ている《ゴブリン》が居るのは、ドワンから少しだけ西に進んだ森の中だ。正直、初めての人型の魔物相手の戦闘ということもあって、俺は情けない事に緊張していた。人を初めて殺してしまったと、あんな状況になってしまっていた俺がちゃんと《ゴブリン》を倒すことが出来るのだろうか。出来ないのではないかと、弱音を吐きたくない。

 だけど、俺は冒険者としてしばらくは生きていくと、これからもこの世界で生きるために前を向くと決めたのだ。出来る、出来ないではなく、やるか、やらないかだ。そんな決意を胸に、俺はサリエスさんと共に足を進める。

 サリエスさんの足取りは軽い。俺と違って森を歩くことも慣れているのだろう。俺はサリエスさんについていくことで必死だ。サリエスさんの足を進める様子から何か学べないかと俺はまじまじと見つめてしまう。そしたら「どうしたの?」と振り向いたサリエスさんに聞かれてしまった。

「俺よりも足取りが軽いから参考にしようと思って」

「そうなのね、是非参考にしてみて」

 サリエスさんは愛想があまりよくない俺とは違って、にこにこしている。

 サリエスさんの足取りを真似しようとしていたのだけど、中々上手くいかなかった。この世界で生きていくためにもっと学んでいかなければならない。サリエスさんとどれだけパーティーを組むかも分からない。パーティーを組んでいる間に学べるだけ学んでおきたい。

 そんな風に俺は思った。

 誰かとパーティーを組む気はなかったし、サリエスさんとパーティーを組むのも想定外だけど、学べることを沢山学んでいけるようにしたいと思った。

「この木のみ美味しいのよ」

「この木はね――」

「この草は薬草になるの」

 サリエスさんは穏やかにほほ笑んで、周りのことを教えてくれる。

 この世界のエルフがどういう存在なのか、そういうのはまだわかっていない。地球で漫画とかゲームとかに出ていたようなエルフそのままなのだろうか。

 植物に詳しいのは、エルフとしての特性なのだろうか。それともサリエスさんだけなのか。少しだけ気になった。でも俺自身自分のことを聞かれるのがあまり好きではないし、自分が嫌がることをやるのはどうだろうかと思うし気になってもきかなかった。

 俺自身、自分が《迷い人》であることなど知られたいとは思わない。その立場は利用されるには十分で、俺自身のユニークスキルのことに対しても十分に利用される価値がある。だからこそ、必要以上に周りに知られるわけにはいかない。

「ゴブリン、もうすぐいるけどいける?」

「……」

 サリエスさんは、知覚能力も高いのだろうか。俺はどのあたりにゴブリンが存在しているかなど正直さっぱり分からないのだが、その段階からもサリエスさんはゴブリンの存在を知覚している。それが凄いと思ってしまう。俺もいつか、それだけの力を手にすることが出来るだろうか。

 まだ、先のことは分からない。それよりも目先のことをどうにかしなければならない。ゴブリンがすぐにそこにいる。それと、俺が戦えるか、どうか。

 自問する。

 人を殺して、そのことに怯んでしまって、あれだけ落ち込んでしまった俺がゴブリンという人型の魔物で倒すことが出来るのかと。

 いや、出来る出来るかではないのだ。やるか、やらないかなのだ。

「大丈夫だ。俺はやる。俺はゴブリンとどれだけ戦えるか分からないけれど、だけど俺はやっぱり冒険者として生きていきたいと思うから」

「ふふ、じゃあ頑張りましょう。私も一緒に戦うから」

「ああ」

 怖い、恐ろしい―――そんな情けない感情が俺の心の中には確かに存在している。だけど、恐ろしいからと立ち止まっていてはいられない。

 俺はこの世界で生きていく。

 自分がやりたい道を進むために、ひとまず冒険者として生きていける力をつける。それが俺の目標。それを叶えるためにまずは、ゴブリンを倒せるようになる。人の形をした魔物だろうとも、倒せるようになる。そして、相手が人だろうと倒さなければならない相手を倒せるようになる。

 そう、なろうと決めたから。

 サリエスさんが、優しい目で俺を見ているが、その視線がなんだか恥ずかしくなる。それをごまかすように俺は足を進めた。

 そして、視線の先には、緑色の肌をした生き物が映る。背は、俺よりも低い。小学生ぐらいの背だろうか。だけれども、その人型の姿をした魔物が十匹以上いる姿にはぞっとした。幾らそこまで力を持たない魔物とはいえ、人の姿をした魔物が多く居る。

 立ちすくみしそうになる。

 だけど、やる。

 そう決めた俺は、俺が使える土属性の攻撃魔法、《アースブレッド》をゴブリンたちの群れに向かって放つのだった。







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