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幕間4:緑山文佳

「そうそう、いい調子だ。あとは――」

 私、緑山文佳は師匠である薬師から、調合の仕方を勉強中だ。普通の高校生だった私がこうして異世界で薬師としての道を歩み始めるとは、地球に居た頃は一切考えていなかった。だけど、私は地球に未練があったわけではない。

 両親は事故で死亡していて、親族なんて私を疎んでいた祖母しかいなかった。高校卒業するまでのお金は払ってくれるといっていたが、その後どうなるか分からない不安は大きかった。そんな中で新しい場所にこれたのは正直私にとっては嬉しいことだった。

 何より、私は植物が幼い頃から好きだった。そんな私が植物関係のスキルを賜ることが出来て、薬師という植物に関わる仕事が出来ることがとてもうれしかった。

 だから私は他のクラスメイト達と違ってここにやってきた事を悲観もせずに、楽しんでいた。

 騎士になった半数以上のクラスメイト達は、多分特に考えもせずに流されるままに騎士になった。竜崎君というリーダーがそこにいるから。皆で一緒に居た方がいいといった先生の言葉もあるだろうけど。でも騎士って、それだけ戦いの中に身を寄せなければならないということなのだ。私は戦うなんてことはごめんだった。

 だからこそ、私のユニークスキルが戦闘に使えるものではなくてよかったと心の底から思う。

 

 師匠から調合の仕方を習ったあと、私は買い物をすることにした。


 街を歩いていたら、クラスメイトに遭遇した。

「文佳じゃん! 久しぶりっ」

「文佳ちゃん、元気にしていた?」

 このなれなれしい二人組のことを私は苦手としていた。話しかけられて特に拒否もしていなかったけれども、だからといってよく話しかけてくることには困惑していた。

 この二人、山岸美緒やまぎりみお深見果南ふかみかなは騎士になった。ユニークスキルは、確か山岸さんの方が剣道をしていたのもあって《火纏いの剣》という火を剣にまとわせることが出来るといったもので、深見さんの方は動画サイトで歌をアップしていたというのもあって《高揚の歌》という対象のやる気をアップさせるといったものだったと思う。どちらとも戦闘に使えるし、流されるままに騎士になっていた。

 私も騎士にならないか誘われてはいたけれども、騎士になりたくなくて断固拒否した。本人たちはそこまで強い意志を示してこなかった私に驚いた顔をしていたけれども、押し通した。

 ――私は死にたくない。

 そう真崎君のことを聞いた時改めて思ったのだ。だからこそ、騎士という選択肢をしなくてよかったと改めて思っている。

「元気だよ……」

 それだけ答える。それ以上話す必要は特にないと思っていた。

 というか、一人でのんびり買い物をしようとしていたら遭遇して少しだけ私は困っている。

「そうそう、聞いてよ。文佳! 村野たち、別の場所行くっていうんだよ!! 皆で一緒に居た方がいいのに」

 村野君たちの噂は私も聞いている。結構好き勝手しているとも。そしてその彼らに竜崎君のグループも手を焼いているとも聞いた。とはいえ、村野君たちは犯罪を犯しているわけでもないし、正直女性に手をだしまくっているのにはなんともいえない気分になるけど、自己責任で勝手にしてればいいとしか思えない。

 それに別の場所に行くというのも一つの選択肢だ。ずっと永遠と一緒にいれるわけではない。

 山岸さんは、クラスメイトが消えていくことを不安に思っているようだ。日向君もこの街を離れていったし、他の人たちも少なからずこの街からいなくなっている。渡辺さんもモンスターショップの仕事でしばらくこの街から離れるとも聞いたし。

「私たち、どうなっちゃうんだろう……」

 深見さんはまだこの世界に来たという実感が薄いように見える。どうなっちゃうんだろうという受け身で、これからどうしようかという意思がないみたいな感じ。どうなっちゃうもなにも、騎士になったのだから騎士として働いていく以外の選択肢はないだろう。

 国の騎士、という立場になったのだから命令のままに依頼をこなすだけだろう。どちらにしても、命令で移動することもあるだろうし、山岸さんと深見さんもそのうち離れ離れになったりするのではないかと思う。別にセットにしなければならないユニークスキルでもないし。

 それから私は山岸さんと深見さんにそれなりに長い時間捕まってしまっていた。

 長い話を聞くのは面倒だったけれど、クラスメイト達がどのように過ごしているかはそれなりに知ることが出来たからよしとしよう。

 最後に「文佳ちゃんは、どこにもいかないよね?」と不安そうな顔で言われたけれど「わかんない。私も、行きたい場所あったら、別の場所行くよ」と答えたら「なんでっ」と凄く煩くしてた。何でも何も、私の人生なのだから私もどこか行きたくなったら別の場所行くよ……としか私には思えなかった。

 




クラスメイト一覧(今出ている分だけ)

《騎士》

三森(教師)


・竜崎グループ

竜崎光《光の剣》

紅沙月《炎の鞭》

西園寺南

神崎朱莉《水の衣》

野田千明

沢木代野《氷槍》


・元スポーツ部

村野琢哉《魔球》

八重金太《守りの手》

大洲上一鶴

内川優


谷陽子《写生記憶》

山岸美緒《火纏いの剣》

深見果南《高揚の歌》


《料理人》

中谷智《料理美味》


《モンスターショップ》

渡辺園美《犬耳》


《冒険者ギルド》

秋田奈子《火炎弾》

塚本孝輔《硬質化》

神宮信《癒しの祈り》

松崎賢斗《我流鑑定》

伊上光之助《炎の弓》

榎本千奈《闇の裁き》


《詳細不明》

大鳥学《拳強化》


《生産ギルド》

緑山文佳《植物知識》


《死亡》

真崎麻紀スキルコピー


今の所名前判明しているクラスメイト25名(主人公含めて)

男14名

女11名


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