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2.魔物

 ずっと《土操手》を使って土をいじっていた俺は居残り組の面子に「何やってんだ? あいつ」的な不審な目で見られたわけだが、特に気にせず使い続けた。

 小説とかで異世界の魔法だと、イメージが大事だといわれることがよくあるからとりあえずイメージを練って、土を動かしたり、穴を作ってみたり(小さいけれど)、そういう事をした。もちろん、それをした分MPは減っていって、最終的にMPは0になった。ちなみにMPは自然回復してくれるものらしい。まぁ、それなりに時間はかかるけど。でもスキルを使う際にMPを消費するのなら、何かあった時の場合MPは取っておいたほうがいいだろう。……今、勢いのままに0になるまで使ってしまったけどさ。

「……日向君、土遊びは終わったの?」

 ふぅと息を吐いて、ひと段落ついた俺に話しかけてきたのは、竜崎のグループの神崎朱莉かんざきあかりであった。黒髪のクールビューティーで、口数はそこそこ少ない。何故、俺に話しかけてきたのだろうかと不思議に思う。

「日向君、一人で何かやってるから、皆話しかけにくかったみたいで。私が声をかけたの」

 神崎のユニークスキルは、《水の衣》というものスキルである。身体に水の膜を張るというものだ。効果は今の所わからないらしいが、戦闘中に発揮するものなのだろうか?

「そうなのか」

「……ええ」

「…………」

「…………」

 沈黙になった。俺も神崎もあまり人付き合いはしない方(神崎は竜崎グループの面々とは仲が良いが)でもあるし、正直会話は続かない。そもそも神崎と何をしゃべればいいかわからない。

 無言のまま、俺と神崎の間に微妙な空間が出来上がる。

「………」

「………」

 二人とも喋らない。なんだかこれじゃあ周りから見てみれば、見つめ合って無言な不思議な二人とかそんな感じだろう。


 そんな、俺と神崎の微妙な空気を破ったのは――――。



 「うわああああああああああああああああ」

 叫び声だった。クラスメイトの声だとすぐにわかる。俺と神崎は、無言のまま頷き合って、そちらへと向かった。

 そうすれば、そこには―――赤い目をしたウサギが襲い掛かっていた。ウサギとはいえ、明らかに地球のウサギとは違うだろう。だってウサギは可愛いものである。あのモフモフは触っていてとても心地よい。が、目の前に映るウサギはといえば、狂暴な目つきをしている。人に襲い掛かるウサギなんて恐ろしいとしか言いようがない。

「神崎」

「ええ」

 あれは魔物というやつだろうかと思いながらも、体を動かす。ウサギに襲い掛かられているクラスメイトは二人。二人に群がるウサギは、十匹以上いるだろうか。

 人に襲い掛かる魔物を前に恐怖しているらしい周りにいるクラスメイトは動けないでいる。これで待機組の中の戦闘要員の沢木代野さわきだいのが居ればまだよいのだが。沢木は竜崎グループの一員で、名前からはわからないが女性である。竜崎の《光の剣》に劣らない攻撃力を持っているはずだ。

 でも今は沢木はこの場にいないのだからどうにかすべきだ。

 俺としても大して仲良くはないとはいえ、クラスメイトが死ぬのは目覚めが悪い。

 でもMP1しか回復してないし、ユニークスキルは使えない。まぁ、でもやりようはある。とりあえず、石を投げた。注意をそらすためだ。あのウサギは攻撃力は低いのだろう。襲われている生徒二人は傷はあるものの、死ぬほどのものではないみたいだから。というか、弱いからこそこのウサギは多数で人を襲っているのかもしれない。

 石は思いのほか、ウサギの一匹にあたった。きゅんっという声を上げて倒れるウサギに罪悪感はわくものの、多分放っておいたらこちらに攻撃されることは目に見えていた。だから容赦なく、そのウサギをまず蹴り上げ、攻撃不能にする。

 このウサギ、物理攻撃は結構利くらしい。

 そうすれば、一斉にウサギがこちらに向かってくる。とりあえず動物虐待のように見えて非常にやりにくいのだが、石を投げたり蹴り上げたりでどうにか切り抜ける。ウサギの爪が、頬をかすめたら血が出てきた。案外、あの爪は危険みたいだ。

 ただのウサギではない。

 なんとか傷は出来たものの切り抜ける。ただその頃には息切れをしていた。そして神崎の方を見れば、傷一つなくて愕然とした。

「……お疲れ、日向君」

「お疲れ、神崎。怪我、ないのか」

「ない。《水の衣》、防いだの」

「凄いな」

「これ、あと纏ってたら動きやすい」

「へぇ……」

 ゲームとかみたいに、纏っていたら身体能力を上がるとかそういう効果でもあるのだろうか?

 それにしても神崎、意外に容赦がない。ウサギは息絶えている。俺も殺したから人の事は言えないけれど。

 それからクラスメイトの一部に「殺すなんてかわいそう」と言ってくるものももちろんいたが、神崎が「やらなきゃ死んでいたかもしれません」といったら押し黙った。それでクラスメイトたちが結構暗くなっていた。

 沢木は駆けつけてきて、「朱莉ぃいいい、よかたあああああああああああああああ」と叫んで、抱きついていた。あと俺にも「日向君ありがとう!」といってくれた。お礼を言われるのは気分が良い。

 探索に出掛けたメンバーが帰ってくるまでの間、魔物らしき存在からの襲撃はあったが、このへんの魔物はそこまで強くないのかどうにか対処することが出来た。で、ふとステータスを確認したら、なんかレベルとか上がっていた。ゲームみたいに「レベルアップしました」とか教えてくれないらしい。




 日向彪牙 

 レベル2

 種族 人間

 年齢 十七歳

 HP 12

 MP 17

 STR(筋力値) 15

 VIT(防御値) 14

 INT(知力値) 28

 DEX(器用値) 41

 AGI(俊敏値) 10

 LUC(運値) 15

 CHARM(魅力値) 12

 スキル

 《投石レベル2》、《足技1》

 ユニークスキル

 《土操手レベル1》




 


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