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21.護衛依頼4

 最初に経由した村には一泊だけの滞在だった。その後は、次の村を目指して進む。

 四日目、五日目、六日目と、特に何も起こることもなく進んだ。いや、ちょっとした魔物は出現したわけだけれども、正直こちらにとっては脅威ではなかったのだ。

 本当に初めての旅が、《銀の狼》と《エラアクナ》の人たちと一緒で良かったと思う。色々な事が学べるし、彼らは俺が《渡り人》だと知っているのに驚くほどに優しい。

 そしてその日のうちに二つ目の村についた。

 二つ目の村では、あまり歓迎されていなかった。なんでも以前訪れた商隊が横暴な真似をしていたらしい。護衛の冒険者のうちの一人が女性を襲ったという話を聞いて気分が悪くなった。日本でもそういう事件があったけれども、それはニュースで聞くだけの話で身近でそういうものはなかった。だけど、この世界では今まで俺が生きていた日本よりもそういうものが身近にある世界なのだ。

 戦争をして、敵に捕まったりしたらひどい拷問が待ち受けているとも聞くし、それを聞くと国に仕える騎士にならなくてよかったと俺は思った。それにしても、竜崎は皆一緒にいよう! と軽くクラスメイトや担任を騎士に誘っていたが、多分もしかしたらそういう事になるかもしれないという事を考えていないのだろうな……と改めて、今までクラスメイトとして接してきた竜崎の事を考えて思った。

 その後、その商隊の名前を聞くと、どうやらティーレリ商会を目の敵にしている商会であるらしかった。その名は、ハイゾ商会。俺は聞いたこともなかった商会だったけれども、有名な商会であるらしい。……ティーレリ商会と同等ぐらい有名らしいが、ティーレリ商会とは逆に評判がすこぶる悪いんだとか。その商会には気を付けるようにとガントルさんたちに言われた。

 親とももう会えない。一人で様々な場所を旅していこうとしているのだから、誰も頼れる存在が居ない状況がどうしても出てくる。だからこそ、一層気を付けていかなければならない。一人で何かあっても助けてくれる人はいないのだから。

 ……そういう心理で、クラスメイト達の大半はそういうことを考えて、騎士として残ったのだろうと改めて思った。

 今はガントルさんたちが居るから、何かあれば助けてはくれるだろうけれども、その後は一人行動になるのだから本当に色々気を付けなければならない。そのことを改めて実感した。

 そして、七日目にまた次の村を目指して旅立つ。

 改めてこの世界についてもっと知っておきたいと思って俺は沢山の事を《銀の狼》と《エラアクナ》の人たちに聞いた。

 《エラアクナ》のアイキーさんとクノノさんと一緒になった時、「女性の場合~」「もし誰かと付き合う事になったら~」とかそういう話をされた。お二人は恋愛話とかが好きみたいで、色々教えるから代わりにそういう話をしましょうと、言われたのだ。

 でも正直俺にはそんな話は欠片もない。そう話したら、誰かと付き合った場合の事とか、女性と一緒に旅をしたらとかそういう場合の話をされた。でもそういう事がいつかあるかとかも想像も出来ないぐらいなのに、そういう話をされても困る。それに誰かと一緒にというより、今はまずは自分自身が生活できるように必死に動くことがやるべきことだ。

 冒険者になれたから、とりあえずそこで金銭を稼ぐという事は出来るようになったが、昨日の村で聞いた話では横暴な冒険者が出てきた。今まで俺がこの世界にやってきてからであった冒険者の中にはそういう人がいなかったけれど、確かにこの世界にはそういう人がいる。

 そういう人に会ったときは、自分自身の手でどうにか対処しなければならない。もっと自分の力を磨かなきゃいけない。俺はそういうことより何かを作ったりする方が好きだけれども、自分がやりたいように生きるためには力が必要なのだろうとも新めて思った。

 そう思ったから翌日の八日目には、《銀の牙》のタッカさんと、カルツアーさんに戦い方について熱心に聞いた。やっぱり冒険者として経験を積んでいるタッカさんたちの話はためになる。戦い方とかは、本で学ぶことももちろん重要だろうけれども、現場を知っている人に教わった方がわかることも沢山ある。

 この世界にはスマホとかはないから目的地についたらそのままタッカさんたちとは次はいつ会えるかわからないという状況になるだろうけれども、それでもこうして確かに良い関係を築けていけるのは嬉しいと素直に思う。

 こういう関係を築いていく事はこの世界でももちろん重要だろうし、コツコツと交友関係を広めていけるようにしなければ。人とかかわっていくことは得意ではないが、それでもこの世界で生きていくためには最低限そういうことを気にかけて生きていく方が生きやすいだろうと思った。

 そんなことを考えながら八日目が終わり、三つ目の村についた。




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