表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/78

幕間3.村野琢哉

 この世界は楽しい。地球ではなかった圧倒的な自分だけの力を手に入れられた事で、俺ははしゃいでいた。

 俺、村野琢哉は騎士になった。異世界の騎士。その響きだけでも興奮する。

 地球に居た頃では考えられなかった力。ユニークスキルを持つ俺達。騎士として俺たちは王都に入った。王都では俺たちは歓迎された。

 女たちは俺の事をちやほやしてくれて、恥ずかしながらサッカー一筋だった俺はこの世界で童貞を卒業した。日替わりに女性を抱く。娼婦も王都にはいて、女を抱く事にも不便はない。

 俺、金太、一鶴、優と共に魔物を倒したり、女を抱きに行ったりと好き勝手にする日々は充実していた。

「もっと皆と行動をしてくれ!」

 竜崎が煩いのだけが難点だ。確かに竜崎は《光の剣》なんていう他のクラスメイト達よりも強力なスキルを持ち合わせているが、だからと言って何でこいつがリーダー面をしているのだろうかと俺には不満だった。

 そもそも、地球に居た頃からこいつの事を少しだけ気に食わなかった。女たちはあいつにキャーキャーいって、サッカー部で活躍する俺に見向きもしなかったりもする。この世界に落ちてきて、条件は同じはずなのに、あいつは俺達よりも上に見られている。

 この世界の住民たちも、俺達のリーダーはあいつだと認識していて一目置いている。俺だって《魔球》という蹴った物に魔力を付加し操れるという強力なスキルを持っているのに、何であいつが……と思ってしまう。

 何より気に食わないのが、

「……光様っ」

 頬を赤らめてあいつを見ているこの国のお姫様、リーラ姫があいつに惚れている事だ。

 リーラ姫は美しい人で、銀色の髪も、女性らしい身体も、全てが俺にとってドストライクで正直一目ぼれをした。だが、リーラ姫はあいつに惚れてしまっている。しかしあいつはリーラ姫の思いに気づいておらず、相変わらず女性が周りに侍っている。

 リーラ姫を自分の物にするにはどうしたらいいのか、そればかり考えてしまう。

 俺だって、ユニークスキルもちで、戦闘系のスキルで、頑張れば活躍が出来てリーラ姫も振り向いてくれるのではないか。そう思って、金太たちと共に命令されてもいない魔物退治をしたり、依頼があれば率先してこなそうとした。でも幾ら頑張ってもリーラ姫は竜崎を見ている。

 それが本当に嫌で、何だかもやもやして、それもあって俺は竜崎の言う事を素直に聞けなくなってきている。羨ましい、妬ましいなんてこんな感情感じたくなんてないのに、どうして感じなければならないのだろう。こんな思いなんて感じたくないのに。

「琢哉、暗い顔をしてどうした?」

 金太はゴールキーパーをやっていた。俺とは小学生からの付き合いで、気の良い親友だ。ごつい顔立ちをしている力持ちで、ユニークスキルは《守りの手》と呼ばれるものだ。あらゆるものを防ぐ事が出来るという効果らしい。例えば、炎の魔法でも、《守りの手》の効果が発揮していれば暑さを感じずにつかむ事が出来る。故に、それを跳ね返す事とかも出来るわけで、中々使い勝手の良いスキルだ。

「………リーラ姫が、竜崎を見ていてやだなと」

「女なんてほかにも居るんだからあきらめたらどうだ? リーラ姫は良い女だし、惚れるのもわかるが、竜崎に惚れている奴が他を見るなんてないんじゃないか」

「それはわかっているけど……」

 ああ、もう苛々する。

 竜崎に惚れる女は揃いも揃って一途な女が多くて、他に振り向くという事があまりない。でも、竜崎はどうする気なのだろうか。気づいていないのはわかるのだが、だからといってこの状態のままで生きていくつもりなのだろうか。

 いや、この世界は一夫一妻の世界ではないし、竜崎ならハーレムを作るのだろうか。考えると素で作りそうだ。

 ……俺にもそういうの作れるだろうか。と思うけれど、遊びの女ならともかく、本命は一人の方がいいと思う。ハーレムって現実だと大変そうな印象しかない。

「ただリーラ姫の事を抜きにしても竜崎がリーダーというのは何だか気に食わないな。折角異世界に来たのに、俺らはその他大勢っていうのもな……」

「まぁな……」

 金太の言葉に俺は頷く。

 まるで竜崎が主人公で、他がその他大勢みたいなそんな感じで何だか嫌だ。騎士になってみたものの、ユニークスキルを持っていても、《渡り人》でもリーラ姫にとっても他の人にとってもその他大勢で、折角異世界に来たのにと感じてしまうのだ。

「でも今はともかく、そのうち騎士としてどこかに配属されそうじゃないか。俺、リーラ姫が竜崎と仲良くしているの見たくないし、配属の希望とか出せるならどうせなら遠くに行こうと思うんだけど、金太もできたら一緒に希望出さないか?」

「あー……それもいいかもな。竜崎たちの傍にいても面白くないしな」

 正直リーラ姫は自分のものにしたいと思うけれど、無理やり自分の物にするなんて真似はしたくないし、そんな悪役には俺はなれない。でもこのまま近くに居たら苛々してたまらなくて、俺自身が何かしてしまうのではないかと不安になるから、もしそういう希望が出せるなら竜崎が皆一緒が良いといったとしても離れる希望を出そうと俺は思うのであった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ