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19.護衛依頼2

「お前が渡り人か」

 護衛依頼を受けるためにウーヤさんに指定された場所へと向かえば、その場にいた冒険者の一人に声をかけられた。

「そうです」

「おう、そうか! 俺はガントルだ。《銀の狼》のリーダーだ。よろしくな!」

「俺はヒューガです。よろしくお願いします」

 ガントルさんは、大剣を背負っている。髪は、自分で剃ったのだろう一本も見られない。顔には大きな傷が一つある。それはガントルさんがそれだけの修羅場をくぐってきたという証だろう。それにしてもあんな大剣を振り回せるなんて、それだけで俺はおぉと思う。よっぽど力があるのだろう。

「口調がかてぇなぁ」

「ガントルさんは俺よりも年上ですし、冒険者として先輩ですから敬意を払っているだけです」

「そうか。それにしてもお前ソロで大丈夫か? 渡り人でソロというのはキツイだろう?」

「今の所大丈夫です。無茶をする気もないので」

「まぁ、ソロが無理だって思ったら誰かとパーティーを組めよ」

 ガントルさんはそういって、その場にいた他の護衛仲間を紹介してくれた。《銀の狼》のメンバーは、六人。もう一つパーティーがいて、こちらのパーティー名は《エラアクナ》。女性五人のパーティーで、それぞれの名前から一文字ずつ取って、そういうパーティー名らしい。

 あとは俺。

 それで十二人で護衛していく形になるようだ。

 雇い主であるティーレリ商会の馬車は、五台あり、二、三人ずつ乗る形になるようだ。魔物や盗賊の警戒と対処はするが、それ以外は割とのんびりしていていいものであるらしい。あと馬車をひくのは、普通の馬ではない。というか、この世界の生物は魔力を持つのが当たり前らしく、馬車をひいているのは馬車を引くようの馬の魔物である。

 ドワンの街までは五つの村を経由して向かう。14日~17日ほど街につくまでかかる。その間にガントルさんたちから様々な事を学べるだけ学ぼうと思う。

 護衛依頼の一日目は平穏に過ぎていった。特にトラブルもなく、平和なものだった。護衛主であるティーレリ商会の人たちも良い人たちであった。過去の渡り人の文献を読み込んでいる人もいて、異世界について興味のある人も多く、仲良くなれた。

 今回は正式な護衛依頼であり、食事も商会側が用意してくれる。街で食べているものと比べると見劣りしてしまうが旅先での食事と考えると十分なものだと《エラアクナ》のリーダーであるエメナさんが教えてくれた。護衛依頼としてではなく、単身やパーティーでの旅だと、食事が自然に出てくるはずもなく大変なんだと。本当に食べるものがない場合は普段は食べないような虫系の魔物を食べたりもするらしい。

 正直日本で虫を食べた事もないし、異世界に落ちてからも虫の料理は食べていない。けど、冒険していくと決めたなら何でも食べていけるようになった方がいいだろう。この世界では食べ物がないという状況に陥る可能性も高いのだから。

 トイレは渡り人が持ち運び式トイレを生み出したらしく、旅先でも特に困りはしなかった。それが生み出されるまで色々と大変だったというからその渡り人には感謝しかない。

「ヒューガはなんで騎士にはならなかったんだ? 聞いた話では一緒に来た渡り人の大半が騎士になったんだろう?」

 夕食を食べている最中にガントルさんに聞かれた。

「理由はいくつかありますよ。大勢で行動するのはあまり好きではなかったので、ずっとクラスメイト……こっちの言葉でいうと学友と一緒にいる気もありませんでした。あと保護はしてもらっていますが、国のために仕えるというのも俺は考えていませんし、折角異世界に来たから色々見て回りたい気持ちもあったので」

「学友と仲良くなかったのか?」

「それなりの付き合いはありましたけど、元々俺は一人でいる方が好きなんですよね」

 騎士として国に仕える。その選択肢を一緒にきた担任やクラスメイト達の半数はしたけれども、大多数は『国に仕える』とか『国のために戦う』とかそういう認識はあまりないだろう。流されるままにというか、一番自分たちにとって平和な道を選んだというのも強いだろう。渡り人を保護している国だから彼らが利用されるだけされるって事はないだろうけれど、国のために行動しなければならないのだからそのうち何人かは騎士をやめたいってなったりするんじゃないかとは思う。

「一人が好きねぇ……。なら、貴方は一人で戦う術をもっと磨かなければなりませんな」

 そういったのは、聞き役に徹していたマサハさんだ。マサハさんは《銀の狼》のメンバーの一人だ。

「はい。だからこの護衛依頼中に学ぶだけ学ばせてください」

「がはは、何でも聞け。教えてやるぞ」

 俺の言葉にガントルさんは機嫌よさそうに笑ってそういってくれた。

「一人旅をするなら人を警戒しなければなりませんよ」

 色々と話を聞いていく中で、そんな風にもマサハさんに言われた。

 最初にたどり着いた街の人々も、ティーレリ商会も、ガントルさんたちも良い人たちばかりだ。でもそれはたまたまだろう。この国自体が渡り人に対して好意的な事もあって平和だが、そうじゃない国もあるのだ。世の中良い人ばかりでもないのだから、これから先、色々気をつけていかなければいけないなと改めて思った。

 夜は交代であたりの警戒をした。二、三人でその役割を交代でやる形で、俺と一緒に夜番をしたのはガントルさんだったので沢山の話を聞くことが出来た。充実した一日になった。




 

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