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1.異世界

「皆、落ち着け! 慌てても仕方がない!」

 慌てふためくクラスメイトたちにそう告げたのは、クラスの中でもリーダー的存在である竜崎光りゅうざきひかりだった。

 奴は、文武両道で、鈍感で、ハーレムを形成しているといった男子生徒たちから目の敵にされそうなモテ男である。まぁ、奴はそんな男だが、性格の良さと明るさで男子生徒からも好かれているが。

 流石、クラスの中心というべきか、その声で周りのクラスメイトたちもそれなりに冷静さを取り戻したらしい。俺ではとてもじゃないが出来ない所業だ。すげぇという感想しか出てこない。

「まず、状況を整理するのが一番だと思うわ」

 そう告げたのは、竜崎の幼馴染である紅沙月くれないさげつである。茶色のさらさらとした髪を持つ美少女である。なぜか竜崎の周りには美男子と美少女が集まるという謎現象が展開されており、竜崎のグループの顔面偏差値は異常に高い。

「日向、一番冷静そうだからお前が理解している範囲で説明してくれないか?」

 なぜか俺に話を振ってきたのは、竜崎のグループの一員である西園寺南さいおんじみなみである。クールな様がかっこいいと騒がれるような黒髪の美男子である。ちなみに竜崎グループは男二人女四人という感じであるが、女子四人は全て竜崎に惚れているようなので、俺的には西園寺はあれだけ美少女と交流していても不憫な奴だなと思っていたりする。

 でも何故、俺に話を振ってきたかはよくわからん。

 しかしまぁ、クラスメイト全員と担任に注目されているわけで、これ説明しなきゃならない雰囲気じゃね? ってわけで、口を開く。

「まず、俺たちはこの異世界の刺激となるために呼び出されたらしい。そしてスキルを一人一つ与えたってこと。そしてこの世界にはステータスというものがあって、『ステータスオープン』と口にすればステータスが見れるらしい。現に俺は見れた」

 しかし、俺は今もステータスを開いた状態であるのだが、周りにはそれが見えていないのだろう。そのことを言及している奴がいないのを見るに。

 自分に向かって『ステータスオープン』といった場合そうだったというのならば、他人に向かってそれをしたらどうなるのだろうか? とちょっと疑問に思った俺は人のよさそうな竜崎に問いかける。

「なぁ、竜崎に『ステータスオープン』やってみていいか? 自分にやった場合、自分にしか見えないようだからためしに」

「ああ、いいぞっ」

 他人に自分のステータスを見られようが気にしないらしい竜崎はそう答えた。こいつ、こんなので異世界に来て、だまされたりしないだろうか? とクラスメイトとして不安になった。

「ステータスオープン」

 と告げてみる。しかし、ステータスは現れない。これは自分だけが見れるものであるっぽい。まぁ、自分のHPとか戦闘中とかにでも人に知られたら問題だしな。

「自分でやらないと出ないんだな! じゃあ、皆どんな感じのステータスだ?」

 人懐っこい笑みを浮かべて竜崎は言った。自分でしか確認できないとなると、きちんと自己申告しない奴も居そうなものであるが、竜崎的感覚でいえばクラスメイトなんだから問題がないとでも思ってそうだ。

 どこまでも楽観的だ。

「俺のは―――」

 竜崎は自分のステータスを自己申告し始めた。

 それによると竜崎のステータスはこうらしい。




 竜崎光 

 レベル1

 種族 人間

 年齢 十七歳

 HP 25

 MP 19

 STR(筋力値) 20

 VIT(防御値) 15

 INT(知力値) 12

 DEX(器用値) 10

 AGI(俊敏値) 19

 LUC(運値) 55

 CHARM(魅力値) 63

 ユニークスキル

 《光の剣レベル1》




 大分俺のステータスと違った。どうやらステータスは、本人の地球での状況とかも考慮して振られているらしい。俺は地球で色々作ったりしていたから器用さが高かったようだ。

 というか、竜崎のLUCとCHARMがレベル1として色々おかしいとしか言いようがない。

 しかも《光の剣》とかどこの勇者だと疑いたくなるようなスキルである。

 ユニークスキルは人それぞれ色々と違うらしい。攻撃系統のものもあれば、防御系統のものもある。基本的に戦闘に使えそうなスキルが全体的に多かった。

 竜崎がまず試してみたのだが、イメージをして使いたいと望めばスキルは使えるようだった。

 俺のスキルは、土を操るとかそういうものだろうと思ってイメージしてみるが難しい。竜崎のスキルみたいにわかりやすい奴だったらイメージしやすいのだが、土を動かすのをイメージしてみる。手のひらサイズの泥団子みたいなものは動かせたが、それだけでもMPが4減っていた。うーん、俺のスキルは色々使い勝手が悪いみたいだ。まぁ、レベルが1だからというのもあるだろうけれども。

 竜崎の《光の剣》なんてレベル1のくせに威力はそれなりだった。何とも不平等だと思った。

 それぞれスキルについて自己申告をして(本当の事をいっていないものも居そうだが)、班に分かれた。

 それにしても三森先生はこの中で唯一大人だというのに、竜崎の方がこのクラスを上手くまとめていて頼り甲斐があるというのは何とも言えない気分である。

 竜崎たち攻撃性の強いスキルを所持した組は探索に出掛けた(もちろん、戦えそうな者を何人か残して)。戦闘には使えない《料理美味》などという直球すぎる作ったものが美味しくなるスキルとかもちとか、俺みたいにしょぼいスキルもちはお留守番だ。

 まぁ、このクラスは基本的に苛めとかなかったし、使えなさそうなスキルもちでも冷遇されたりとかはないのは幸いだった。

 というか、これさ、いじめっ子でもいるクラスだったら色々と悲惨なことになったと思う。

 《土操手》---これそもそもなんて読むんだ? と思うが、とりあえずどそうてとでも呼んでおこう。このスキル地味だけど、レベル上げたら使えるようにはなりそうだとは思う。

 こつこつと何かをすることは好きだから、これ使えば色々できそうだし。

 ってわけで、居残りの間、ひたすらスキルを行使してみることにした。それにしてもユニークスキルなんて名前がついているとなると、普通のスキルもこの世界はあるのだろうか? だとすればそれを身に着けたら色々生きていくのに楽そうだ。



 


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