17.ユニークスキル2
引き続き、《土操手》と《土魔法》を色々試してみた。両方ともレベルが上がり、《土操手》は4に、《土魔法》は2に上がった。
両方とももう少しどうにかしてから次の街に行きたいと思いながら、今日も色々と試してみる。
《土操手》で土の硬さまで変えられる事もわかり、どうにかそれを上手く使いたいと思ったわけだが、《土魔法》もレベルを上げたいという事でそちらばかり今は使っている。
『アースブレット』という土の塊を対象にぶつける魔法は、MPを多く使えばその数を増やしたり出来る事はわかったが、MPの少ない俺はそこまで使えない。MPを増やすためにもMPをどんどん使った方がいいだろう。行動によって、レベルが上がった時どの値が上がるかが異なるからMPをどんどん使っていけばMPの上がる量も多くなるだろうし。
とはいってもMPが少ない現状じゃ、最終的にとどめをさすのは剣でになるが。
二つのレベルを上げたいが、どうするべきだろうかと俺はしばらく悩んでいた。片方だけ上げるのもと、そんな風に考えながら街を歩いていたらクラスメイトに遭遇した。
「やぁやぁ、日向君やっほー、お久しぶり」
声をかけてきたのは、渡辺園美。
ユニークスキル名は、確か《犬耳》。効果はスキルを使うと犬耳が生え、聴覚が鋭くなるらしい。地球に居た頃から犬が好きだったためこのユニークスキルが出てしまったという話である。
親しげに話しかけてきているが、地球に居た頃から仲良かったというわけではなく、只単に渡辺が誰にでもこんな調子で話しかけてくるだけである。
「ああ」
「真崎君の事聞いた? 残念だったよね」
「聞いた。クラスメイトが死ぬとやっぱ嫌だな」
「だよねー。もうこの世界怖いから私も調子に乗って街の外とか出ないようにしなきゃ」
渡辺は地球に居た頃は髪を染めていたが、この世界に来て暮らすうちに色がすっかり落ちて黒髪に戻っている。街についたころはまだ色が落ちてなかったため、こうして久しぶりに会うとすっかり黒髪で少し驚いた。
「日向君は冒険者生活どう? 順調な感じー?」
「今の所」
「でもなんか考え込んでる顔してたよね? なんか悩み事?」
「あー……ちょっとな」
「何か悩んでいるなら話してみたらー?」
《土操手》についてはクラスメイトは知っているわけで、少しどうするべきか考えて詰まっていた俺は渡辺に似たようなスキルを上げたいという話をした。そうすれば、渡辺はいった。
「ならさ、両方同時に使っちゃうとかはどうなのー?」
「両方同時に……?」
「うんうん。多分出来ると思うんだよね。私《犬耳》使ったまま他のレベル上がったしさ」
「……そうなのか」
「うん。だからやってみたら?」
にこにこと笑う渡辺の言葉に、俺はそれもそうかと考える。確かに両方同時に使ってはいけないといった事はないはずだ。《土魔法》と《土操手》と別々に分かれているからこそ、両方同時に使おうなどと考えていなかった。
でも両方同時に使えるというのならば、色々とやりようがある。
そう考えて俺は素直に渡辺にお礼を言った。
「助かった。やってみる」
「うんうん。頑張ってー。あ、あと騎獣とか欲しくなったらうちきてねー」
渡辺は生き物が好きなのもあって、この街のモンスターショップで働いている。この世界では契約というスキルがあり、人はモンスターと契約を交わして手を取り合う事も出来るのである。モンスターショップの獣は、お店で人との契約用に育てられているのもあってお金さえ払えばすぐ契約できるという。
少し欲しいが、お金もないのにそんなものを買うのは無理である。
「それは、金がないから無理」
「そっかー。じゃあ、お金たまったら! あ、そろそろ私行かなきゃ。じゃあねー、日向君」
そういって渡辺は去っていった。
それから、一度宿に戻って一休みをしてからギルドの訓練所にやってきた。
「土の壁を生成せよ! 『アースウォール』」
まずは試しに『アースウォール』を形成させてみる。そして次に、それに向かって《土操手》を使う。イメージはそう、土の壁から手が生えるみたいな感じで……とやってみたら出来た。
次に硬くするイメージで使ってみても、『アースウォール』を硬くする事も出来た。それを試したところでMPが無くなった。
これは土の壁を《土操手》で作って操るのと、『アースウォール』を作ってから操るのとどちらがMPを使うかも試してみなければならない。MPをなるべく節約しながらやっていかなければ俺はMPが多いわけではないからやっていけないのは明白である。
鍛冶の街ドワンに向かうまでの間にまずすべきことは俺自身のレベル上げ。《土操手》と《土魔法》を同時に使う事の練習、旅の準備、やることは沢山ある。他のスキルを覚えたり上げたりもしたいが、とりあえずはMPを上げる事を重視してやっていこうと俺は考えるのであった。




