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幕間2.真崎麻紀

死亡したクラスメイトについての幕間

 どうして、こんなことになっているのだろう。

 俺は震えながらそんなことを考えた。

 振り下ろされる剣―――……ああ、俺は死ぬんだと理解する。


 走馬灯のように、この世界に、異世界に落ちてからの事を思い出す。




 クラスメイトと担任と、計41名なんていう大所帯でこの世界に俺はやってきた。正直クラスごと転移かとがっかりした。というのも、俺は昔からそういう物語が好きで読んできていて、どちらかというと大人数での転移より、一人で転移して無双する物語の方が好きだったからだ。

 竜崎が「皆で協力して頑張ろうぜ」とか言っているのを聞きながら、俺はこれからどうやって一人で成り上がっていくかを考えていた。

 だって、クラス全員転移とか、一人外れて成り上がるってよくある話だろう?

 幸いというか、俺のクラスはそういうのはなかった。いい事だけれども、苛められっこがどん底から這い上がる話も好きだからそういう風でもよかったなと思う。

 ふふふ、俺にはそれでも生き抜く自信があるのだ。

 クラスメイトには違うユニークスキルを告げたのだが、実は俺のユニークスキルは中々良いものだった。

 《スキルコピー》である。

 そう、よくあるスキルを奪う系ではないものの、コピーして使うことが出来るのである。どのくらいコピーできるかとか、コピーの条件とかはわかっていないが、これさえあればスキルを簡単に覚えることが出来るのだ。

 正直それを知った時、俺の時代キター!! と思った。

 そんなわけで俺はある程度落ち着いたら俺はクラスメイトから離れて一人成り上がる事を決意する。だってクラスメイト達の中では竜崎たちのグループが明らかに主人公級で、俺は主人公みたいになれないと思ったのだ。

 そして夢のハーレムを築き、この世界で最強になってやる! と決意したのである。

 で、まぁ、原住民と出会い街に連れて行ってもらって、どうするか決める際に俺は飛び出す事を決意したのである。このスキルをコピーするスキルさえあれば俺はなんだって出来るのだ! とそう思ったわけだ。

 さっさとクラスメイトから離れようと思った。俺が主人公になるためにはほかの渡り人がいるのでは都合が悪い。冒険者ギルドにも登録しようかと思ったが、同じように登録しているクラスメイトもいた。

 何より……

 「麻紀君、一人で飛び出すなんて無茶だよ。一緒に騎士になろうよ。皆もいるから……」

 って、そんなことを言ってくる幼馴染―――谷陽子たにようこがうざかった。

 陽子は三つ編みの真面目そうな女である、実際真面目で、俺に地球に居た頃から口うるさく言ってきた。

 幼馴染だからって一緒に居るとからかわれたりもするし、陽子と離れたいと思った。

 でもその前に陽子のスキルである《写生記憶》という、スキルをコピーした。陽子は俺が聞けばぺらぺらスキルについて話してくれたのだ。本当に能天気な奴だ。

 《写生記憶》―――それは目で見たものなど記憶したいものを頭の中に写し取るもので、これがあればそのスキルを使ったものを忘れる事はないのだ。光景も、文字も、とそんな風に陽子は言っていたが、俺が使った時はそんなに都合の良いものではなかった。《スキルコピー》は劣化スキルをコピーするものなのかもしれない。それには少しぐぬぬとなったわけだが、別に問題はないだろう。

 あとはスキルをコピーする際はそのものに触れていなければいけないとかあったが、ぺらぺらスキルを喋っている竜崎のをコピーすることが出来たから、これで問題はないだろう。

 そう思って俺はさっさとクラスメイトとは違う所に行くぞっと外に出る事にした。むふふ、これで襲われている美少女を助けたりなんかして―――と、そんな風に俺は夢を見ていた。

 未来の事を考えて笑い、止める陽子の事を無視した。

 ……でも待っていたのは、そんな優しい現実なんかじゃなかった。

 街道の途中で商人に拾ってもらった。そこまでは良い。お金はほとんどなかったけれど、俺はスキルをコピーできるしこれから稼げるだろうと思った。

 ちょっと予想外だったのは、商人のスキルをコピーできなかった事。スキルの詳細をもっと詳しく知らなければダメなのかもしれないが、持っているスキルについて詳しく商人たちが話すこともなく、逆に聞きすぎて疑わしそうに見られたのであきらめた。

 お金はなかったけれど、途中で魔物を狩ったりして、それで喜んでもらえた。

 だけど、奴らが現れた。

 それは盗賊だった。

 俺は《光の剣》のスキルをコピーできたし、付属して《剣スキル》も手に入った。だけど、手練れの盗賊相手に通じるかといわれるとそうではなかった。というか、人を斬ることが、俺には出来なかったのが一番の問題だった。躊躇している間に周りは倒され、俺は面白いスキルを持っているからととらえられた。

 《光の剣》の事だ。

 盗賊のアジトに連れていかれ、拷問され渡り人についてとか洗いざらいはかされた。俺は盗賊側につけと言われた。流石に首を振った。怖かったけれど、盗賊なんてしたくなかった。そもそも人を斬りつけるなんて真似は俺は怖くて出来ない。

 大丈夫だ。異世界にわたるなんて稀有な経験をしている俺がそう簡単に死ぬはずがない。《スキルコピー》なんてレアなユニークスキルを持っている俺なんだからと考えていた。

 だけど、そんな甘くなかった。

 暴行を加えられた。助けは来ない。

 誰か来るはずだろうと思ってた。

 でも来ない。

 身体は徐々に動かなくなって、口もきけなくなって、そして「もうお前はいらねぇな」と剣を振り下ろされた。

 命乞いさえもできないままに、俺は―――最後にニヤリと笑う盗賊と振り下ろされる剣だけを見ていた。







 

 

 

そして盗賊のアジトで死体は発見される。

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