15.魔法3
魔法を覚えるためにさっそくギルド内部に設置されている訓練所にやってきた。訓練所の中にはほかのギルド所属の人間も多く居る。俺がちらちら見られているのは、俺が渡り人であるということが知られているからであろう。
この街自体は嫌いではない。親切な街だと思っているし、居心地は良い。だけれどちょっと居心地が悪いのはこういう所だ。渡り人であることをこの街の住民は知っている。
正直渡り人であるからといってちらちら見られるのは気分が悪い。
魔法の練習をしようにも視線が少し気になる。でも、ここで注目されているのが居心地が悪いなんて理由で魔法の練習をしないというのも時間がもったいない。
やるかと、魔法書に目を通す。
そこには『土魔法』の詠唱とその効果が書かれている。
とりあえず、すぐに成功するかはわからないが、呪文を唱えてみようと思う。
「土の壁を生成せよ! 『アースウォール』」
こういう呪文を口にするのって現代育ちの俺からしてみるとちょっと恥ずかしいが、そこはあれだ、無詠唱が出来るようにあれば一番良いだろう。そこまで極めるのには時間がかかるだろうが。
とりあえず唱えてみたそれは、発動しなかった。
何も考えずに唱えるだけ唱えただけだろうか。ユニークスキルの《土操手》を使った時は勝手にMPが減っていっていたが、やはり魔法を使うとなると魔力の存在を意識するとかあるのだろうか。あと想像をもっとしたら上手くいくとか。
土の壁を意識してみよう。
それにしてもこの場には土はないが、魔力で土の壁を出現させるってことだろう。その場に土がある時はその場にある土を使って魔法を作り出すとかもできるのだろうか。
正直よくわからない。その辺はおいおい考えていくとしようか。
「土の壁を生成せよ! 『アースウォール』」
次はなんか生成されそうにはなった。同時に俺の身体から何かが抜けていくのがわかった。だけど上手く生成はされなかった。
魔法というものがない世界からきた弊害もあるのだろう。魔法と聞いて想像がしにくい。
何回か試してみてようやく土の壁らしきものが生成されるようになった。しかし、なんかこれで何かを防ぐとか出来るのか? ってレベルである。もっと練習しなければどうにもできないだろう。
あとは穴を掘るみたいな魔法とか。《土魔法》って割と地味なのが多いみたいだ。俺としたら別にかまわないけれど。落とし穴を作る魔法に関してはここでは出来ない。というか、訓練所で穴を作ったら弁償ものだろう。
あとは土の弾を出す攻撃魔法とかはあった。
これも何度か試したらどうにかできるようになった。ただいくつか出現させるとコントロールが難しい。魔法を使う事は出来たけれど実践で使うとなるには全然足りない。
簡単には使えないし、やはり現実的に考えて色々と試行錯誤をしなければならない。
「……あ、レベル上がった」
魔法を使うという事でも経験値がたまっていっていたようで久しぶりにステータスを見てみたらレベルが上がっていた。
日向彪牙
レベル6
種族 人間
年齢 十七歳
HP 25
MP 26
STR(筋力値) 28
VIT(防御値) 19
INT(知力値) 33
DEX(器用値) 45
AGI(俊敏値) 20
LUC(運値) 16
CHARM(魅力値) 12
スキル
《投石レベル2》、《足技レベル1》、《解体レベル3》、《剣レベル4》《土魔法レベル1》
ユニークスキル
《土操手レベル3》
数字の上がり方はそのレベルに上がるまでに何をしたかで変動値が変わるらしい。ギルドでの依頼ばかりこなしていた結果、STRが結構上がっているのだろう。どちらかというと魔物退治でも怪我をしないように倒せるレベルの魔物を倒して、攻撃はなるべくよけているのもあってVITが上がっていないみたいだ。
どちらかというと相手から攻撃を食らった方がこの値は上がるらしい。DEXに関してはレベル4の時から比べても2しか上がっていない。これはギルドの依頼ばかりこなしていたからだろうな。
というか、LUCとCHARMは全然上がらない。これ考えると竜崎のレベル1でLUC55、CHARM63って明らかにおかしすぎる。
ユニークスキルもなんだかんだで今まで確認とかもできていないからどうにかしなければ。
魔法は一応覚えたけれどもう少し練習をして、そして旅の準備をしてから次の街に向かうことにしよう。
でも俺は弱いから正直次の街へ向かうのには不安が大きい。
盗賊や魔物といった脅威が存在するわけで一つでも選択を間違ったら死んでしまうだろうし。そう思いながら街を歩いていたら、クラスメイトに遭遇した。
「あ、日向君」
声をかけてきたのは、生産ギルドに入ったうちの一人の緑山文佳である。背が低く、中学生ぐらいにしか見えないがれっきとした高校生である。ユニークスキルは《植物知識》で、それを生かして薬師の修業をしているらしい。
俺も物作りにも興味があるから冒険者としてそれなりに生活できるようになったら生産ギルドにも登録するつもりだ。
「どうしたんだ?」
「……あ、あのね、真崎君が死んだんだって」
顔色が悪いから問いかけたらそういわれた。クラスメイトの一人の名前である。
「……そうなのか」
「うん……私も今朝聞いたんだけどなんか盗賊に殺されてたって……。騎士の人たちがその盗賊を討伐したらしいんだけどそういう話を聞いたんだって」
「そうか……」
正直ショックはあるけれど、なんといっていいかわからなかった。死んだといわれても中々実感がわかない。
それからしばらく緑山と話して別れた。
……クラスメイトの死を聞いてまた色々考えさせられた。
クラスメイト一覧(今出ている分だけ)
《騎士》
三森(教師)
・竜崎グループ
竜崎光《光の剣》
紅沙月《炎の鞭》
西園寺南
神崎朱莉《水の衣》
野田千明
沢木代野《氷槍》
・元スポーツ部
村野琢哉
八重金太
大洲上一鶴
内川優
《料理人》
中谷智《料理美味》
《冒険者ギルド》
秋田奈子《火炎弾》
塚本孝輔《硬質化》
神宮信《癒しの祈り》
松崎賢斗《我流鑑定》
伊上光之助《炎の弓》
榎本千奈《闇の裁き》
《詳細不明》
大鳥学《拳強化》
《生産ギルド》
緑山文佳《植物知識》
《死亡》
真崎麻紀
今の所名前判明しているクラスメイト21名(主人公含めて)
男14名
女7名
これから女子生徒側ももっと出していくつもりです。